ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.82
  • (1158)
  • (1132)
  • (1663)
  • (75)
  • (20)
本棚登録 : 11596
感想 : 678
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062749053

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 夜中の三時(夜明け前のいちばん暗い時間)に、
    ふっと目が開いてしまい、真っ暗闇の中を手探りで
    トイレに向かって歩いていくとき…

    「ああ、自分は今、旧いるかホテルにいるんだ」

    と突然、深く実感しました。

    この小説を読んで二日後の真夜中のことでした。


    それは、ふだんは明るくせわしなく
    暮らしているつもりの自分の、
    もうひとつの世界〜心の闇のトンネルでもあり、
    人生を暗い面からとらえたときのイメージ
    そのものでもありました。

    その暗くじめじめしたトンネルをたどっていった
    先にあるものは、
    「迷える子羊」という衣をまとった、
    一見弱そうな、でも小さな叡智と光を持った
    「もうひとりの自分」が待つ部屋
    であるかもしれません。

    また「(自分を含めて)死者たちの待つ、乾いて
    ほこりの積もった、冷たい部屋」
    でもあるかもしれません。

    そうやって、ひとつひとつを読み解いて
    いくと、この小説の怖さとあたたかさに、
    目が離せなかったわけが、翻弄されたわけが
    実感としてわかってきました。

    これは、人間の生(性)と死と、
    生きることの可能性を示唆してくれる、
    素晴らしい小説なのです。

  • 高度資本主義に絡めとられないために自分のダンスを踊るという方法が村上春樹ならでは。必読。個人的にはユキの物語が読みたい。というかユキは青豆に繋がっているように思えるのだが。この点は別の機会に書いてみたい。

  • まるで月の住人だった主人公が、どうしようもなく人間らしくなっていくのがすき。

    ひとりでいたくない。誰かとどこかにとどまっていたい。つながっていたい。

    なんだ、実はこんなに単純なことを書いていたんだ。

  • そういやダンスダンスダンス下巻読了してた!忘れてた!やっぱり羊をめぐる冒険のほうが派手だったなー。美しい流れではあったのだけどやや地味でした。五反田くんと主人公がすごくホモ…いえ青春の友情で結末にちょっとじわっとした。

  • 不思議な事が沢山起こるけど、細かい事はあまり気にせず、さらっと読んだ。
    ハワイに行ってピナコラーダが飲みたい。きりっと冷えたやつ。

    ユキと僕が一緒にいる時の雰囲気が好き。

  • 物語は大きく展開し、そして驚くほどあっという間に収縮していきます。
    ばらばらの世界に属していた、僕の交友関係に、間接的な関連付けがなされていきます。
    圧倒的な文章力に引き込まれますが、事件の核心へと迫るきっかけが霊感というのは、非日常すぎてちょっとついて行けない感じ。

    村上作品には必ずこの非日常的力が作用してくるため、堅固な物語構築がなされているのに、どうも安易な、ついていけない展開になってしまいます。
    この日常と非日常のすり替えを、対社会と対自身とに置き換えている点が、著者の一番表現したいところかもしれませんが。

    少女ユキの口から語られる、探し求めていたキキの消息。
    鼠を喪った後、たった一人の友人として交流を深めていた五反田君との友情の突然の終わり。
    前作で癒えぬ喪失感を味わった僕は、更なる喪失を体験することとなります。
    底なしの、救いのない虚無感。

    彼に残されたのは、自分が育てるべきユキと愛すべきユミヨシさん。
    しかし、彼は羊男の部屋で、ユミヨシさんの手を放してしまいます。
    この作品をハッピーエンドとする人もいますが、私はそうは思いません。
    ユミヨシさんとうまくいかないことは、手を放したシーンではっきり書かれているように感じます。
    オルフェウスの伝説にもあるように、一度離してしまったものは、もはや元のものではないのではないでしょうか。
    この流れでハッピーエンドというのは、村上作品にしてはあまりに単純すぎる気がします。

    六体目の白骨は誰か?
    作中でははっきりと語られませんが、姿を消した羊男かもしれないし、手を離す前までの実体を伴ったユミヨシさんかもしれません。
    いずれにせよ、ユミヨシさんの存在が現実に自分を繋ぎとめてくれたとしても、キキや五反田君を喪ったという絶望感からは逃れることはできないでしょう。

    いくつもの謎を残して、物語は終わります。
    残された白骨のほか、メイを殺したのは誰か?ジューンはどこへ行ったのか?ホノルルで見かけたキキは何?羊男はどうなったのか?など。
    そもそも、いるかホテルの謎が解けていません。支配人の思惑とは?どこまでが主人公のために存在する世界なのか?など。

    ラストシーンが、どうも尻つぼみで唐突に感じるのは、ダンスのステップが踏めていないように思えるためかもしれません。

    著者は、自分の心理描写はこと細かく書きながらも、他者の行動についてはバッサリと描写を省いた書き方をします。
    情緒的な側面を否定した、他者の死の記述。
    詳細さと省略のアンバランスが、村上作品の特徴です。

    僕の失われた心は回復できたのでしょうか?
    彼のために、どこかで泣いている誰かとは、キキ?羊男?
    共に姿を消したのち、それは解決したのでしょうか?

    最後に、壁を抜けるという行為が象徴的に語られます。
    『ねじまき鳥』でも出てきた行為です。
    遺伝子の壁を越えられない五反田君、越えた僕、と、区別がなされています。それは絶望からの再生や自己回復を意味しているのでしょうか。

    ユミヨシさんは、現実に僕と関わっている人物ですが、死んでいった人々の方がずっと印象に残ります。
    続編があるとすれば、少女ユキとの再会が描かれるのでしょう。
    それまで「僕」は、例え自己回復がなされたとしても、いっそうの喪失感を抱え、涙も流れぬ乾いた心で、虚無の中を生き続けるのかもしれません。

    「かっこう」

  • 踊り続けるしかない。
    どんなときでも。

    私的ハッピーエンド

  • 喪失感とか、切なさが目立つ作品だからこそ、
    夏の日差しとか、「人生悔いが残らないように」とか、
    ちょっとした希望や、素敵な言葉が、
    きらきら輝いてみえる。


    春樹作品の中での評価はあまり高くないけど、所々散りばめられている名言や、素敵な世界観は健在。

    また新しい感情を覚えた気分になった。

  • ストーリーの変容の仕方が好きです。羊男もいいキャラですね。

  • 今は村上春樹「ダンスダンスダンス」を読んでます。
    多分もう7~8回は読んだかなw
    もうすぐ下巻終わりそうです。
    村上さんの文章は簡潔で分かりやすくて好きです。
    簡単なだけじゃなくて、なんだか不思議な世界観が
    感じられるところがすきです。
    以前どこかで言ってたような気がするのですが(小説内かな?)

    すぐれた文章というものは縁側でひなたぼっこしながら
    おばあちゃんに読んで聞かせて理解してもらえるようなもの

    という記述がありました。読書をしていると、とても難解な文章に
    出会うことがあります。いかにも自分の語彙の多さを誇示している
    ような、だけど、読んでも全然頭に入ってこない。やたらと外来語が多い。
    結局何が言いたいのかさっぱりわからない。
    そんな文章は読者の立場で書かれたものだとは思いません。

    本の中でこういう場面がありました。
    友達に、ちょっと深刻な打ち明け話をされます。
    お互いに大人です。自分の人生に責任を持って行動してます。
    聞かされたところで、何を言ってあげればいいのか分かりません。
    言う方もただ聞いてもらいたかっただけなんだと思う。
    結婚がうまくいかなかったとか、仕事が思うように出来ないとか
    大人になれば色んな障壁がふいにやってくることがある。
    主人公は、おそらくそういう話を誰にもせずに解決してしまう人です。
    あたしもそうだから、よくわかる。

    ネットしていても、友人内でそういう話を聞く事もある。
    でも、自分で選択して来た道です。そうなんだ、、と相鎚は打つけど
    だからってあたしが何かをしてあげれるわけじゃない。
    そんなときは、そういうものごと全てに無力感や喪失感を感じてしまう。
    人によって感じ方は違うかもしれない。だけど、あたしはダメです。
    やっぱり相手の立場に立って考えてしまうから、自分まできつくなる。
    それが嫌だから、あまり深くならないようにしているのかもしれない。
    そんなことまで話してくれて、あたしのこと信用してくれてるのね、なんて
    安易に考えられないのです。

    本の中の主人公も「彼はそういう話をするべきじゃないんだ」と
    言ってます。そういう心の趣き具合がとても共感できました。
    一見冷たいように思われそうですが・・・

    心の弱い部分をさらけ出すのは誰を相手にでもできることじゃない。
    吐き出せば楽になるんだ。
    そういうことを十分理解してもなお、そう、それでもなお・・
    大人だから、口に出してはいけないこともある。


    あたしもそう思いました。

全678件中 111 - 120件を表示

著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

村上春樹の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×