- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062749053
感想・レビュー・書評
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まるで月の住人だった主人公が、どうしようもなく人間らしくなっていくのがすき。
ひとりでいたくない。誰かとどこかにとどまっていたい。つながっていたい。
なんだ、実はこんなに単純なことを書いていたんだ。 -
そういやダンスダンスダンス下巻読了してた!忘れてた!やっぱり羊をめぐる冒険のほうが派手だったなー。美しい流れではあったのだけどやや地味でした。五反田くんと主人公がすごくホモ…いえ青春の友情で結末にちょっとじわっとした。
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不思議な事が沢山起こるけど、細かい事はあまり気にせず、さらっと読んだ。
ハワイに行ってピナコラーダが飲みたい。きりっと冷えたやつ。
ユキと僕が一緒にいる時の雰囲気が好き。 -
物語は大きく展開し、そして驚くほどあっという間に収縮していきます。
ばらばらの世界に属していた、僕の交友関係に、間接的な関連付けがなされていきます。
圧倒的な文章力に引き込まれますが、事件の核心へと迫るきっかけが霊感というのは、非日常すぎてちょっとついて行けない感じ。
村上作品には必ずこの非日常的力が作用してくるため、堅固な物語構築がなされているのに、どうも安易な、ついていけない展開になってしまいます。
この日常と非日常のすり替えを、対社会と対自身とに置き換えている点が、著者の一番表現したいところかもしれませんが。
少女ユキの口から語られる、探し求めていたキキの消息。
鼠を喪った後、たった一人の友人として交流を深めていた五反田君との友情の突然の終わり。
前作で癒えぬ喪失感を味わった僕は、更なる喪失を体験することとなります。
底なしの、救いのない虚無感。
彼に残されたのは、自分が育てるべきユキと愛すべきユミヨシさん。
しかし、彼は羊男の部屋で、ユミヨシさんの手を放してしまいます。
この作品をハッピーエンドとする人もいますが、私はそうは思いません。
ユミヨシさんとうまくいかないことは、手を放したシーンではっきり書かれているように感じます。
オルフェウスの伝説にもあるように、一度離してしまったものは、もはや元のものではないのではないでしょうか。
この流れでハッピーエンドというのは、村上作品にしてはあまりに単純すぎる気がします。
六体目の白骨は誰か?
作中でははっきりと語られませんが、姿を消した羊男かもしれないし、手を離す前までの実体を伴ったユミヨシさんかもしれません。
いずれにせよ、ユミヨシさんの存在が現実に自分を繋ぎとめてくれたとしても、キキや五反田君を喪ったという絶望感からは逃れることはできないでしょう。
いくつもの謎を残して、物語は終わります。
残された白骨のほか、メイを殺したのは誰か?ジューンはどこへ行ったのか?ホノルルで見かけたキキは何?羊男はどうなったのか?など。
そもそも、いるかホテルの謎が解けていません。支配人の思惑とは?どこまでが主人公のために存在する世界なのか?など。
ラストシーンが、どうも尻つぼみで唐突に感じるのは、ダンスのステップが踏めていないように思えるためかもしれません。
著者は、自分の心理描写はこと細かく書きながらも、他者の行動についてはバッサリと描写を省いた書き方をします。
情緒的な側面を否定した、他者の死の記述。
詳細さと省略のアンバランスが、村上作品の特徴です。
僕の失われた心は回復できたのでしょうか?
彼のために、どこかで泣いている誰かとは、キキ?羊男?
共に姿を消したのち、それは解決したのでしょうか?
最後に、壁を抜けるという行為が象徴的に語られます。
『ねじまき鳥』でも出てきた行為です。
遺伝子の壁を越えられない五反田君、越えた僕、と、区別がなされています。それは絶望からの再生や自己回復を意味しているのでしょうか。
ユミヨシさんは、現実に僕と関わっている人物ですが、死んでいった人々の方がずっと印象に残ります。
続編があるとすれば、少女ユキとの再会が描かれるのでしょう。
それまで「僕」は、例え自己回復がなされたとしても、いっそうの喪失感を抱え、涙も流れぬ乾いた心で、虚無の中を生き続けるのかもしれません。
「かっこう」 -
踊り続けるしかない。
どんなときでも。
私的ハッピーエンド -
喪失感とか、切なさが目立つ作品だからこそ、
夏の日差しとか、「人生悔いが残らないように」とか、
ちょっとした希望や、素敵な言葉が、
きらきら輝いてみえる。
春樹作品の中での評価はあまり高くないけど、所々散りばめられている名言や、素敵な世界観は健在。
また新しい感情を覚えた気分になった。 -
ストーリーの変容の仕方が好きです。羊男もいいキャラですね。