出口のない海 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754620

感想・レビュー・書評

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  • 神風特攻隊はよく知られているが、『回天』はどれくらい知られているんだろう。 海の特攻隊、人間魚雷『回天』。 靖国神社の遊就館で実物を初めて見た時、強い衝撃を受けたことを思い出します。 その回天に乗り、国の為、家族の為に散華された若者たちの生と死の間で揺れ動く心の葛藤、「出口のない海」の狭い密室の中で発射の命令を待つ胸中を思うと、涙なしでは読めませんでした。 こう言った英霊たちのおかげで、今の日本があるという事に感謝しなくてはいけませんね。

  • 感想は読書メモに。

  •  肘の故障により大学野球で活躍ができなかった並木浩二が、成り行きで特攻兵に志願してしまい人間魚雷「回天」の搭乗員となる。お国のためでも、愛する人を守るためでもなく、彼は自分で死を選択することにどう折り合いをつけたのか。
     何年かに1回のスパンでこの時期読みたくなる。野球をもっと続けたかったろう、魔球を試してみたかったろう、美奈子との将来も楽しみたかったろうに。己の死を常に眼前に突きつけられ、彼らは何を思うのかが克明に描かれている。無念を抱えて死んでいった若者たちの想いが報われるような世の中になっているだろうか。

  • 第二次世界大戦の特攻兵器「回天」を主題とした作品。甲子園優勝投手であり、大学野球部に所属している主人公・並木を中心に描かれている。

    2022年3月現在、世界はウクライナ情勢で大きく揺れている。ニュースから伝わる戦地での状況と本書を重ねて読んで平和が多くの犠牲を必要とした第二次世界大戦の上に成り立っていることを強く認識した。

    戦争が終わる直前の玉砕を良しとする日本と現在の状況が同じだと思うことは危険だと思う。しかし、戦争が現地の精神状態を大きく変えてしまうことは大いにあると考える。(何が何でも生き残ってやるという意識から、早く死にたいと願うようになってしまうなど)

    今のような時勢だからこそ、二次大戦の反省をもう一度行い各自が明確な意思を持つことが重要だと感じさせてくれた一冊。

  • 「魔球を打つ」という夢を持った並木が、なぜ特攻隊に志願したのか。
    志願したあとの心の移り変わりがとても面白かった。
    死にたくないと強く思う時期、受け入れる時期、最後は悟りを開いたような心情。

    死ぬ事が分かっていても魔球を諦めない並木に切なくなった。
    作中、並木は自分の事を弱いと言っていたが、私は沖田同様強い人間だな、と思った。

    最後は回天で敵艦に突っ込むことなく亡くなった彼だったが、回天を世の人間に知ってもらうという夢は叶ったのかなと思った。

    まだ若い子達が家族のため、祖国のためと命を投げ打って戦争に立ち向かったあの時代。
    胸が苦しくなるが、温かい気持ちにもなるような素敵な作品だった。

  • 記録

  • 2021/07/23

  • 高校生や大学生最も楽しいはずのときに彼らは国を守るため家族を守るためと疑わず死を捧げていた。
    今のわたしたちの世の中をみて彼らはどう感じるのか。豊かになりすぎて、大切な家族といれること好きな人に好きと言えること、友人たちと好きなことをできる事。私たちはそれが、どれだけ大切かもう忘れかけている。それが戦争のあった時代彼らには何よりも欲しいもので、何よりも大切だった。

    並木の感情こそ人間誰もがもつものだと思う。

    でもその時代で死こそ当たり前、死があってこそ、という洗脳のようなものがあって、人間魚雷さえ生まれてしまった。想像もできない。自ら志願するものがほとんどだった。

    彼らがいて今の私たちがいる。
    戦争は何があっても起きてはいけない。それを彼らが伝えてくれている。

  • 記録

  • 読んだあとに考えさせられる内容です。

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著者プロフィール

1957年東京生まれ。新聞記者、フリーライターを経て、1998年「陰の季節」で松本清張賞を受賞し、デビュー。2000年、第2作「動機」で、日本推理作家協会賞を受賞。2002年、『半落ち』が各ベストテンの1位を獲得、ベストセラーとなる。その後、『顔』、『クライマーズ・ハイ』、『看守眼』『臨場』『深追い』など、立て続けに話題作を刊行。7年の空白を経て、2012年『64』を刊行し、「このミステリーがすごい!」「週刊文春」などミステリーベストテンの1位に。そして、英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞(翻訳部門)の最終候補5作に選出される。また、ドイツ・ミステリー大賞海外部門第1位にも選ばれ、国際的な評価も高い。他の著書に、『真相』『影踏み』『震度ゼロ』『ルパンの消息』『ノースライト』など多数。

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