文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (1226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754996

感想・レビュー・書評

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  • つらみ
    最初から犯人が解っている状態で読む話なのかそう見せかけて最後に予想もしなかった犯人が出てくるどんでん返しの話なのかどちらかわかりかねて困惑しながら読んでたのだけど里村さんの名前が出たのでなるほどなってなった
    それにしては長いわってなったけど、もしかしたらシリーズが完結したあと読み返すとめちゃくちゃ意味があるのかもしれないなーと思った

    位牌システムとか何でなんだろうと思ってたことを全部書いてあって私にとってタイムリーで読むべくして読んだ感

  • このシリーズの中では割と読みやすいのではと思う今作品。前作(塗仏)に比べて止まらずに読めた。

    10数年振りくらいに読んだので覚えてないか?と思っていたけれど、覚えていたのか察しが着いたのか序盤から結末はなんとなくわかって読んでいた。
    結末が毎度の事ながらなんとも哀しくて、辛くて。
    誰にも悪意がないだけに、今までのどの事件よりも読み終わってしんみりしてしまった。
    京極堂はどんな気持ちで『解いて』いるのか。。

    話は変わって、前作で気になっていた関口が復活していて一安心。
    序盤の某先生との出会いは作者からの「前作ではやりすぎてごめんね」的な労いか?と思って笑ってしまった
    よかったね、関くん

    榎木津は洋館が似合いますね
    前作では京極堂、木場との絡みがよかったけれど
    今作では関くんとのタッグ
    序盤の『関口視点』はあまりに酷すぎて笑ってしまいました
    コントのよう(笑)ずっと読んでられますね
    目が見えない、微熱~は今後伏線として生かされるのか??
    そこも気になります

    次巻はいよいよ現時点シリーズ最新刊再読。
    例のごとく「榎木津礼二郎の元カノ」というパワーワードしか覚えていないので読むのが楽しみ。


    ところで最後の『私達』は伊庭刑事と……奥さんのことだろうか??ん??

  • 傷。痍。瘡。疵。瑕。
    キズにはいろいろあるのだね。

    白樺湖ほとりの元伯爵由良邸、通称「鳥の城」。
    過去に4度、当主由良昂允の花嫁が婚姻翌日に殺害されるという、未解決の事件が起こっている。
    近々当主が5度目の結婚をするにあたり、榎木津は事件が繰り返される可能性を懸念した由良家から探偵を依頼されるが、現場に向かう途中に発熱で一時的に失明する。
    手助けとして榎木津のもとに行った(行かされた)関口は、結局一緒に「鳥の城」を訪れることになる。

    『魍魎の匣』から『塗仏の宴』に至るまでの、脳味噌が処理しきれないほど立て続けに起こる事件と飽和状態の登場人物数が当たり前になってしまっていると、本作品は物足りなく感じるかもしれない。
    なんせ、今回起こる事件はたったひとつである。
    しかし、このシンプルな事件を、京極夏彦は言葉と紙幅を尽くしに尽くして、これでもかというくらい懇切丁寧に説明してくれるから、本は滅茶苦茶分厚い。
    何故この内容でこれほど厚くなるのかというくらいに厚い。
    なので、非常に、非常に、分かりやすい。
    途中で真相が察知できてしまうくらい分かりやすい。
    (ていうか途中にずばり書いてあるし…)

    だから、クライマックスは「真相は一体?」ではなく、「この俗世間から離れたピュアな伯爵にどうやってこっち側の常識を分からせるんだ中禅寺(というか京極夏彦)」という、お手並み拝見的心境で読んだ。
    そしてその手腕は実に見事だった。

    構造がシンプルなばかりでなく、登場人物も少なくて、レギュラー陣は中禅寺、関口、榎木津、木場しか出てこない。
    第一作『姑獲鳥の夏』の面々である。
    そう、本作品はどこか『姑獲鳥の夏』に近い。事件が入り組んでいないのも、榎木津のせいで関口が依頼内容を聞かされるのも、榎木津そっちのけで関口が奮闘するのも『姑獲鳥の夏』に似ている。
    そもそも関口が花嫁薫子の向こうに涼子の姿を何度も何度も連想して読者に『姑獲鳥の夏』を思い出させる。

    衒学趣味という言葉は解説に教えてもらったけど、今回は儒学、林羅山、ハイデガーに関する蘊蓄に溢れ、それが知識の披露で終わることなくストーリーの重要な布石となって、重厚な物語の構造体と化している。毎度ながら京極夏彦はこういう力量が本当に凄い(←語彙力)。
    レギュラー陣の事件への関わらせ方も淀みなかったし、作品世界に誘(いざな)う引力も健在で、おかげで中禅寺達の「存在する」世界に存分に浸ることができた。

    ☆5つ付けようかすごく迷ったんだけど、☆4つにしたのは、シンプルだっただけに読了後にそれほど引きずらずに現実に戻れてしまったことと、最初から登場して私を喜ばせた榎木津が終盤に全く存在感を失ってしまったように思えたから。


    以下、諸処雑感。

    関口、由良伯爵、そして伊庭元刑事という、3人の一人称が入れ替わりで語ってゆくスタイルがすごく良かった。
    特に、関口一人称が好きなので、関口のうじうじうだうだぐるぐる巡る思考を見せつけられると、ああ京極堂シリーズだなぁ…と実感する。
    ていうか、関口の自認する「世界」に妻が居ないの、マジで勘弁して欲しい。雪絵さんあんなに尽くしてるのに…ホント関口なんかと結婚したのとんだ過りだったと思うよ…。

    榎木津の、発熱で一時的に失明したって設定が、神がかっている。
    目が見えなくても視えるって、どういうこと??? 幻視に視覚は関係ないってこと?? 他人の記憶が視覚以外の感覚器経由で網膜に映るの? いや、網膜じゃなく、夢見てるみたいに脳裡に映るのかな?
    それにしても、関口、榎木津との付き合い長いんだから、いい加減榎木津が何を言っているのか察して欲しい。根気よく聞いてくれたら、これほど遠回りせずに解決できたんじゃないか。

    伊庭が出てきた時は、先に『今昔続百鬼ー雲』読んでおいて本当に良かったと思った(笑)。
    別に未読でも何の問題もないけど。
    でも、紙幅を尽くしているだけのことはあっていきなり本作品を読んでも充分に分かる内容になっているんだけど、レギュラー達は過去作分の過去を背負って存在していて、関口の「拷問でもするのですか」とか、木場の「悪党御用だ、ってのがね、好いんです」とか、細部までより楽しむにはやっぱりシリーズを全部読んでから手を付けた方がいいかもしれない。
    それにしても、キバとイバを間違えたなんて、このエピソードいつから仕込んでたんだ京極夏彦。まさか『今昔続百鬼ー雲』に伊庭を登場させた時に既に…?
    薫子を伯爵に「生かして」帰すのも里村が居てこそできた演出だったろうし、本作品では登場人物が作者の意識の外で自由に動き始める域に達した気がした。

    横溝正史が出てきたのはびっくりした。
    いや、横溝正史に思い入れは全くないんだけど、このシリーズに実在した人物が登場したのは多分初めてだったから、ちょっと面食らってしまった。

    伯爵の人となりや由良邸の世界観については特に言いたいこともないけど、ひとつだけ、由良胤篤が間違って死んだはずの早紀江(の剥製)を目撃してしまった際、幽霊を信じない胤篤が何とか辻褄を合わせて至ったのが「時間を間違えた」というよほど起こり得ない逆説的結論だったの、なんて美しい感性だろうと思った。


    最後に。
    中禅寺が「探偵は放っておいても構わないんですが」って言いつつ長野行きを決めたのは、境界上でフラフラしっぱなしの関口は放っておけないってことなんだろうか、やっぱり。
    関口は中禅寺に何度も救われている(精神的に)。
    けど、中禅寺は「人は人を救えない」と断言する。
    傷は、手当ては他人にできても、治るか治らないかは当人次第だと。
    そこは他人が手出しできないところだと。
    そして、それは君(関口)が一番良く知っていることだろう、と。
    てことは、中禅寺は関口のことを、(中禅寺の手当てを受けつつも)最後は自分で現実を見据えて立ち直れる人だと認めているんだろうか。
    『姑獲鳥の夏』では涼子が亡くなってから関口が家に帰らず京極堂に居座ってグダグダしてるのを、咎めるでもなくしたいようにさせてたし、『魍魎の匣』では関口の小説家としての才能を評価していたし、中禅寺も中禅寺なりに関口が好きなんだな。
    中禅寺って、やっぱり優しいな…。(妄想でしょうか?)

  • 巷では、京極堂シリーズの第2幕開幕作と言われているとか。前作が色々と総出だったのに引き換え、登場人物も事件そのものも割とシンプルにまとめられていて(ページ数はお察し)、どことなく原点回帰を思わせる。彼が語り手なところもそう、あのぐずぐず具合が懐かしい。

    事件自体は、例のトラブルがなければきっと1発解決の代物だったけど、伯爵が関口氏にわりと好意的だったり(そんな人初出だと思う)、伊庭銀の眼力にしびれたり(また出てきてくれないかなあ)、次作に繋がる人物を混ぜ込んだりと随所の盛り込みが絶妙で、結局一気に読破してしまった。ただ厚くて重いだけではないこの1200ページを、ぜひとも楽しんで頂きたいと思う。

  • 4+

  •  環境が人に与える影響大きいよね。善良なだけになんとも切ないです

  • みなさんがおっしゃられてますが、
    慣れた読者なら序章のところで犯人とこのお話の核の部分はわかってしまっただろうな。それだけのお話なのにこの分量まで引っ張れるのがすごい。京極ファンの私でもさすがに長すぎだろと思いましたよ。笑


    それでも関口がちょっと元気になっていて、
    目の見えない探偵が相変わらず暴れ回っていて、
    京極堂の謎解きと伯爵への敬意ある態度に感動し、
    木場さんの出番もあって、
    そこが読めただけでも大満足です。
    たのしかった。

  • 哀しい話。
    家族に成るとはどういうことなのか?
    伊庭さんが良かったな。
    多々良センセイのところで出てきたのは君か!と思わぬ再会。
    あと、大鷹くんはここで出てきてたのね‥。そうだったそうだった。
    関口くんが、韮山の時よりも回復していて、それは安心です。
    しかし伯爵から見た関口くんは、やはりウロンなのだなあ。

  • 剥製の描写の差で、何が起きていて何が起きるのかも分かるので、どう解かれるのかを楽しみに読み進め、楽しかった。姑獲鳥の仕掛けが好きで魍魎の匣にも手を伸ばした人間なので、今回も興味のあるテーマが読めて嬉しい。順番に読むつもりで、うっかり百器徒然袋を雨・風両方読んでいたので、がっつりシリアスな京極堂の憑物落としが体感でけっこう久し振りだったのも嬉しかった。嘘吐きであることに自覚的でその嘘の影響力を重く見ている京極堂がやっぱり好きだ

  •  何もない田舎に聳える洋館。その中には無数の鳥の剥製があって、その館に嫁いだ花嫁は必ず死ぬ。
     そんな感じで始まる今作は、京極作品では珍しく普通の探偵小説みたいな舞台設定だった。話の筋も読みやすくて、その点でも異色な感じがした。たまにはシンプルなのも面白い。
     文章の書き方も意図的に変えてきているのかなという印象。視覚的な単語の並べ方が目に映った。あまり分からないテクニックを入れている。
     榎木津は相変わらずで、関口は基本的に落ち込んでいた。この組み合わせは面白い。太極図みたい。
     林羅山とハイデッガーを繋げるという技巧も楽しい。なんでも読んで勉強しているし、それをやりすぎない範囲で小説に盛り込むのが非常に上手い。
     京極堂が語る宗教の話は、自分も昔考えたことがあったので共感できた。私は子供の頃に死者を敬うということを考えていた。それには仏教も、キリスト教も適さない。というより何かを挟んで祖父や祖母と向き合うのが不埒だと考えていた。結局思ったのは、記憶の中に止めておけば人は死なない。ある意味生きているのではないだろうか。死んだ人のことを時折思い出すこと、そして自分が生きることが一番の供養だと思った。否定はしないし効果も理解しているが儀礼式典は全部嘘だ。
     伯爵が犯人だろうというのは早めに分かった。丁寧に説明しているし、死についての齟齬も、剥製に囲まれていることで明瞭だった。わざと分かりやすくしていると思う。答えに近づいていく不安を味合わせるために。外れるわけないのに外れてくれと思う。読者はいつの間にか関口と同じ気持ちで京極堂の憑き物落としを聞いていたわけだ。
     伯爵は、人が死ぬということを勘違いしていたわけだが、最初の妻を殺して、そのまま一緒にいたら喋らないし腐っていくしで、気づいたことだろうと思うが、その最初が無かった。誰もそういうことは教えないという特殊な環境もあった。人が死んで無になる。亡くなる。それは本当に無くなってしまう。人というのは精神であって体ではないのかもしれない。伯爵にとっては家族は動かない体だった。伯爵は聡明だったので、自分の間違いを理解して、亡き妻たちへの贖罪をするのだろう。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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