文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
3.64
  • (303)
  • (399)
  • (658)
  • (61)
  • (14)
本棚登録 : 3983
感想 : 297
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (1226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754996

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 鵺の碑を読む前に、2つ前のお話を再読
    読んだのがかなり前だったので、
    忘れていた内容も多くじっくり楽しく読めました。

    このシリーズは毎回、関口を心配しながら読んでしまいます。
    前巻でついに行くところまで行ってしまったので
    ハラハラしていたのですが、不安定なところはあるものの
    少しずつ回復してるかな?最後は雪絵さんとお買い物に出かけていたし
    鵺の碑でもまた心配しながら読み進めそうです。
    そして益田の人選が酷すぎる・・・・・。
    榎木津と関口って不安しかない人選でよく行かせたなぁ(笑

    子供が生まれ「死」について言葉で教えるのって本当に難しいことを実感しました。
    自分の子なので飼っていたクワガタが死んだとき直接的に教えましたが、
    私の言葉だけでは理解できなかったと思います。
    やっぱり外的刺激は大事です。
    伯爵は立場上、周りにいる大人が全員尊敬語でお話しします。
    山形さんとか使用人に尋ねたとしても、
    ぼかした言い回しになってしまうのかなと思いました。
    唯一しっかり教えなきゃいけない父親は、研究に没頭しているし。
    知識欲を満たしてくれるのが「文字」だけってかなしいです。
    ただ、もう少し死や家族について
    きちんと理解できる本はあったんじゃないかなぁと思いますが
    儒学に精通した頭の良い高等遊民は、あれこれと難しく考えてしまい
    答え合わせが出来ない環境だからしょうがないのかな。


    横溝正史の登場に関口がテンション上がっていましたが
    読んでいて私も上がりました。
    とても人当たりが良く、優しい穏やかな方だったらしいので
    病んでいる関口に、のんびりと話をする様子がイメージできました。

    後巷説百物語「五位の光」は狂骨の夢と陰摩羅鬼の瑕につながっています。
    又市さんが蒔いた種を京極堂が摘みとって行くのは胸熱です。

    次は邪魅の雫読みます!

  • せつない一冊。

    今作は前作が派手派手超長編だっただけに、地味目というかスタートから盛り上がりには欠けた。

    でも湖畔に佇む洋館「鳥の城」を舞台に婚礼の晩、死す花嫁の謎を解く展開は雰囲気から好み。

    関口さんと大御所作家とのシーンは書楼弔堂っぽくて好き。
    榎木津さんは叫んでばかりながらもやっぱり癒し。

    5人目の花嫁の死は阻止できるのか…犯人は薄々わかってしまうけれど、京極堂の憑物落としが一気にしんみり、せつなさを運ぶ。

    取り巻く世界、普通か否かのその違いの要因に胸打たれ、ミステリとしてはシンプルながらも忘れられない巻。

  • 途中で展開が読めてきたものの、畳み掛ける最後が切なすぎる。関口は相変わらず弱すぎる。

  • 何て救いのない、悲しい事件なんだろう。
    読み終わってすぐだからか未だにやるせない気持ちが凄い。

    この話に悪人なんて誰もいない。
    そりゃ多少はそういう部分がある人もいるのだろうけれど、でも根っからの悪人とか凶悪な殺人者なんてものはどこにもいない。
    それなのに繰り返し起きる事件。
    「誰も嘘を言ってない」ことがこんな悲しい結末を引き起こすなんて読み始めた時は想像がつかなかった。

    いや、確かにあったんです、話しが進んでいくにつれ「ん?何か変じゃないこれ???」と思う箇所はちらほらあったんです。
    でもまさか真相が明かされた時にこんな気持ちになってしまうなんて……。
    自分の中の常識とか先入観とか、そういうものが揺らぐ感覚が凄かった。
    これここまで大きくなくても生きていればみんな何かしら経験があることだと思うから余計にこう、くるものがある。

    京極堂の語りを読みながら「もうやめてあげようよ」と思ったのはこれが初めてだったなぁ。
    もういいじゃん、呪いとか祟りとかでいいじゃんって。
    京極堂は絶対にそれを許してはくれないんだけど、でも願わずにはいられなかった。
    せめて、せめてあの人が帰ってきた時に本当の家族というものを、世界というものを知れるようにしてあげて欲しいな、時間がかかってもあの人達には待っていてあげて欲しいなと思う。

    それにしても最後の最後、エピローグのような場面で木場修がいうあのセリフはたまたまなのか狙っているのか……。
    彼も忘れられないのかなぁ、やっぱ忘れられないんだろうなぁ。

  • 長い!流石に長い。同じことを何回も繰り返すし、自己否定を繰り返す関口の内心に流石に途中でキツくなる。内面世界を丁寧に構築することが今回の真相にとって必要不可欠というのは分かるがそれでもしんどかった。
    それでもというかだからこそ京極堂の明晰な論理と語りが際立つ。ここまで人間の思考の方向性を綺麗に書き分けられるのはすごい。

  • 今回の特徴は「じらす」こと。作中で経過する時間もとても短い。
    前作は凄い色々なことが起こっているが核がつかめなくて全貌が見えない、という話だったが、今回は対照的にとてもすっきりしたストーリーラインがある。
    前作が取り敢えずの総まとめだとすれば、今作は新章スタート、姑獲鳥の夏Part2的でもあるし、作中でも姑獲鳥についての論考が改めて開示されている。謎も「そのことに気づけば」的なものでその辺でも姑獲鳥を意識させられたり。

    本筋とは関係ないが、怪異と鳥の関係に関する部分を読みながら、2023年の宮崎駿作品が何故「遣い」に鷺を選んだのかなど考えたりもした。

  • 由良伯爵の、死の認識が一般とは違うがゆえの悲劇。
    京極堂が話した、林羅山の功績(儒教と仏教の融合?)はなかなか興味深かった。
    関口くんも榎木津も京極堂も、いつもどおりで嬉しい。

  • これは犯人(犯人かなあ)とかトリック(トリックでもないか…)とかを割と序盤に「こういうことだよね?」って薄々はっきりわかりながら、憑き物落としをどきどきしながら見守る読み方でいいんですよね?
    あまりにもそのまんまやんけ!な流れだったから逆に不安になってしまったけど、ものすごく楽しく読めた。
    「そうはならんやろ」とも思ったけど、「なっとるやろがい!」ってものすごい説得力で押し切られたのも気持ち良かったのでよし。
    出版当時に読んだらもっと新鮮な気持ちで「そうなの!?」ってびっくりできたのかな。
    何しろ読みやすくて楽しくて情景が目に浮かぶし、出てくる人もみんな魅力的で読んでいて心が弾みました。目よりも本を持つ腕が疲れた。読書には体力が必要だ。

    あ!木田元さんの解説がとっても良かったです。
    あと、最初の方に出てくる超有名作家さんが素敵すぎて好きになっちゃうもうなった。

  • 百鬼夜行シリーズで一番好きな作品。この作品特有の静かな恐怖を感じたくて読み返してしまう。

  • あの夏こと姑獲鳥の夏をパワーアップしたようなお話でした。悲しい悲しい事件です。薫子、生きていてほしかったです。。。あらすじだけ知ってしまうとバカミスですがさすが京極夏彦、深く納得してしまいます。
    とはいえ儒教の講釈のところはしんどかったです。

全297件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

京極夏彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×