- Amazon.co.jp ・本 (1226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062754996
感想・レビュー・書評
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せつない一冊。
今作は前作が派手派手超長編だっただけに、地味目というかスタートから盛り上がりには欠けた。
でも湖畔に佇む洋館「鳥の城」を舞台に婚礼の晩、死す花嫁の謎を解く展開は雰囲気から好み。
関口さんと大御所作家とのシーンは書楼弔堂っぽくて好き。
榎木津さんは叫んでばかりながらもやっぱり癒し。
5人目の花嫁の死は阻止できるのか…犯人は薄々わかってしまうけれど、京極堂の憑物落としが一気にしんみり、せつなさを運ぶ。
取り巻く世界、普通か否かのその違いの要因に胸打たれ、ミステリとしてはシンプルながらも忘れられない巻。 -
途中で展開が読めてきたものの、畳み掛ける最後が切なすぎる。関口は相変わらず弱すぎる。
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何て救いのない、悲しい事件なんだろう。
読み終わってすぐだからか未だにやるせない気持ちが凄い。
この話に悪人なんて誰もいない。
そりゃ多少はそういう部分がある人もいるのだろうけれど、でも根っからの悪人とか凶悪な殺人者なんてものはどこにもいない。
それなのに繰り返し起きる事件。
「誰も嘘を言ってない」ことがこんな悲しい結末を引き起こすなんて読み始めた時は想像がつかなかった。
いや、確かにあったんです、話しが進んでいくにつれ「ん?何か変じゃないこれ???」と思う箇所はちらほらあったんです。
でもまさか真相が明かされた時にこんな気持ちになってしまうなんて……。
自分の中の常識とか先入観とか、そういうものが揺らぐ感覚が凄かった。
これここまで大きくなくても生きていればみんな何かしら経験があることだと思うから余計にこう、くるものがある。
京極堂の語りを読みながら「もうやめてあげようよ」と思ったのはこれが初めてだったなぁ。
もういいじゃん、呪いとか祟りとかでいいじゃんって。
京極堂は絶対にそれを許してはくれないんだけど、でも願わずにはいられなかった。
せめて、せめてあの人が帰ってきた時に本当の家族というものを、世界というものを知れるようにしてあげて欲しいな、時間がかかってもあの人達には待っていてあげて欲しいなと思う。
それにしても最後の最後、エピローグのような場面で木場修がいうあのセリフはたまたまなのか狙っているのか……。
彼も忘れられないのかなぁ、やっぱ忘れられないんだろうなぁ。 -
長い!流石に長い。同じことを何回も繰り返すし、自己否定を繰り返す関口の内心に流石に途中でキツくなる。内面世界を丁寧に構築することが今回の真相にとって必要不可欠というのは分かるがそれでもしんどかった。
それでもというかだからこそ京極堂の明晰な論理と語りが際立つ。ここまで人間の思考の方向性を綺麗に書き分けられるのはすごい。 -
今回の特徴は「じらす」こと。作中で経過する時間もとても短い。
前作は凄い色々なことが起こっているが核がつかめなくて全貌が見えない、という話だったが、今回は対照的にとてもすっきりしたストーリーラインがある。
前作が取り敢えずの総まとめだとすれば、今作は新章スタート、姑獲鳥の夏Part2的でもあるし、作中でも姑獲鳥についての論考が改めて開示されている。謎も「そのことに気づけば」的なものでその辺でも姑獲鳥を意識させられたり。
本筋とは関係ないが、怪異と鳥の関係に関する部分を読みながら、2023年の宮崎駿作品が何故「遣い」に鷺を選んだのかなど考えたりもした。 -
由良伯爵の、死の認識が一般とは違うがゆえの悲劇。
京極堂が話した、林羅山の功績(儒教と仏教の融合?)はなかなか興味深かった。
関口くんも榎木津も京極堂も、いつもどおりで嬉しい。 -
これは犯人(犯人かなあ)とかトリック(トリックでもないか…)とかを割と序盤に「こういうことだよね?」って薄々はっきりわかりながら、憑き物落としをどきどきしながら見守る読み方でいいんですよね?
あまりにもそのまんまやんけ!な流れだったから逆に不安になってしまったけど、ものすごく楽しく読めた。
「そうはならんやろ」とも思ったけど、「なっとるやろがい!」ってものすごい説得力で押し切られたのも気持ち良かったのでよし。
出版当時に読んだらもっと新鮮な気持ちで「そうなの!?」ってびっくりできたのかな。
何しろ読みやすくて楽しくて情景が目に浮かぶし、出てくる人もみんな魅力的で読んでいて心が弾みました。目よりも本を持つ腕が疲れた。読書には体力が必要だ。
あ!木田元さんの解説がとっても良かったです。
あと、最初の方に出てくる超有名作家さんが素敵すぎて好きになっちゃうもうなった。 -
百鬼夜行シリーズで一番好きな作品。この作品特有の静かな恐怖を感じたくて読み返してしまう。