『アリス・ミラー城』殺人事件 (講談社文庫)

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  • 講談社
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感想 : 140
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062761468

感想・レビュー・書評

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  • まず、またシリーズ物を途中の作品から手をつけてしまうというミスが悔しい。文庫版解説にあるように、最初の作品から読んでいればまた印象が違うのかも。
    そして何より、叙述トリックにまんまと騙されたことが悔しくてたまらない。違和感を感じる描写を深く考えなかったから…というのは言い訳で、完敗だった。ここまで真実に気づかなかったのは久々な気がする。
    ただ、不可解な点、納得いかない点が多々あるので、悔し紛れに言及したい。以下ネタバレ











    1)探偵たちを集めたルディの真意
    城にあるアリス・ミラーの捜索、という名目であるはずなのに、これから連続殺人が起こることを示唆するようなあからさまな言動をしているのが意味不明。なぜ「生き残った者」?不自然。
    2)物理トリック講釈の無意味さ
    各探偵がもし自分が殺されたときに物理トリックが使われるなら…といくつか条件を出してたんだが、作中でこれを満たしているかの言及もないし、条件付けした意味がないんじゃないかと思った。
    3)犯人の行動の無意味さ
    そもそも、犯人の動機から考えれば、広大な城の敷地内で探偵をおびき出すためというだけの理由であそこまでの労力を使い密室を作り出す必要があったのか。まあ密室はまだいいとして、犯人が誰かをミスリードするための嘘のトリックのためだけに、死体をバラバラにし(犯人の究極の目的のためにはバラバラにするのは必要な行為だったが、全ての犯行後に行えば目的は十分達成されるのであるから、全員を殺していない段階でバラバラにするのは合理的でないと思う)、人形に隠し、糸を結びつけたり、夜中に人目を忍んで扉を増やす(これが一番無駄すぎる)という行為はあまりにも無駄が多すぎる。作品の雰囲気作りのためだけに、作者が大仰な仕掛けを犯人にさせただけにしか思えない。というか、扉を付けたり外したりって1人で一晩に何枚もできるのかがそもそも疑問。そんな暇があるのなら皆が寝ている各部屋にこっそり訪問して…ってやっていくほうが効率的なはず。
    さらに、最初の殺人では鏡の国のアリスの見立てをやっておきながら途中からほぼ皆無。見立ても探偵をおびき出す材料、としてもお粗末では?密室というだけでその目的は達成できるのだから、中途半端なことをする意味がない。
    4)探偵たちの無能さ
    連続殺人の最中、海上が犯人を目撃したと言い出すのだが、探偵たちは全く考慮に入れないところが納得いかない。まあ海上が錯乱状態だったってのもあるし、作者が叙述トリックをやりたいがために意図的にしなかったのだろうが、通常のミステリー作品の流れならばあそこで犯行が起こった時間、どこで何をしていたのかを全員、少なくとも名前を挙げられた者に質問すべきだ。何の検証も行わないのはおかしすぎる(まあ海上の暴走中にそんなことできないとかなるんだろうけど)。というか、みんなアリバイを調べたりしなさすぎる。深夜に行われたからといってそういう質問タイムがないのは不自然すぎる。そもそも、今回作中でアリバイは殆ど問題視されないのが不自然。密室作り、死体の運搬、解体作業、扉の増設など時間のかかることをたくさんやっているのだから、いくら城が広いからといって何も検討しないのは(ミステリー小説における)探偵としてどうなのだろうか。
    5)叙述トリックのアンフェアさ
    ミスリードがひどい。確かにいろいろヒント(チェスの駒、ルディや海上、窓端の発言など)あったみたいだけど、途中で気づくのは至難の技だよ。まあこれは気付かなかったから負け惜しみなんだけど。ただ、登場人物たちが殆ど触れないというのはおかしすぎる。作者が登場人物たちの思考の描写を恣意的に操作しすぎな気が、というか叙述トリックを完成させる恣意が(よくよく考えれば)描写の端々に、前面的に出過ぎていると思う。第三者視点で物語を進行するより、場面場面で登場人物たちの主観で話を進めていくほうが良かったのではないか(そのほうが描写の偏りについても、あくまで主観だからというところで納得がしやすい気がするから)。


    読み込んではいないので浅はかな指摘が多々あるかもだが、ここまでいろいろ考えさせてもらったということで面白かった。ちゃんとシリーズの最初から読んでみようかな。

    • gregglesteinerさん
      ちなみにクロック城な
      ちなみにクロック城な
      2013/01/24
    • t-maruyamaさん
      あんな解説読む気がしないわ
      クロック城出だしちょっと読んだけど読む気しねえ
      あんな解説読む気がしないわ
      クロック城出だしちょっと読んだけど読む気しねえ
      2013/01/24
    • gregglesteinerさん
      そうかーまあ確かにクロック城は苦痛かも
      無理強いはしない
      そうかーまあ確かにクロック城は苦痛かも
      無理強いはしない
      2013/01/25
  • 途中の雰囲気は☆5、オチは☆1。
    孤島作品を上手くまとめ上げることの難しさを再認識する一冊でした。

    序盤の説明口調、かつ明らかに違和感を感じさせる記述(伏線ですが)は本を読みすすめる気力を削がれましたし、オチを知ってから読みなおしても「フェアじゃないなぁ…」としか思えなくてイマイチ。
    個人的には、推理小説には読者を騙し驚かせるだけで他にさしたる存在理由の無い叙述トリックは意味が無いと思います。
    作品中で『必然性のない物理トリックは意味が無い』などと言っていますが、叙述トリックも同じではないでしょうか。

    しかし殺人が始まってからの流れと独特の雰囲気に関してはかなり面白かったので、その点は評価できます。

  • ジャケ買いならぬタイトル買い。
    なんとなく興味引かれるあらすじ&経歴によりメフィスト賞受賞者、ということで最低ラインは保障されてるかなと。


    隔絶された孤島に奇妙な屋敷、怪しい言い伝えと謎の主人、そして密室、探偵、殺人…これでもかとミステリの要素てんこ盛り。

    下敷きは『そして誰もいなくなった』。
    ひとり、またひとりと死体になっていく。
    各殺人に関するトリックと、『犯人は誰?』という謎が絶妙に折り重なってます。

    が、が、が。。。
    後半のスピード感に対して前半は説明が多くてとてもくどい。
    加えて地の文の書き方がくどい。



    結末は、謎解きをしない主義の私にはともかく、犯人あてをミステリを読む目的の一つにしている人にとっては壁に本を投げつけたくなるようなものだったでしょう…。
    いや、だから最初から最後まで『鏡の国』なんです。
    …そういうごり押しを解説者がしていました(笑)


    なかなかに、面白かった。
    残念ながら他の著作を買いに走る気には、なれません。。


    イヤミのつもりはないけれども、綾辻行人がデビュー作として『十角館の殺人』を上梓した、その才能のすさまじさを改めて知らしめてくれたことが、この本の一番の功績かもしれない…。

  • 図書館にて。
    本屋で見かけてタイトルに惹かれたので。

    「アリス・ミラー」を探すために孤島に集められた探偵たちが、チェスに準えて次々に殺されていく(チェス盤には白の駒10個と黒のクイーンが置いてあり、各章の頭で次々に黒のクイーンに白の駒が取られていく図が挿入されている)。
    クリスティの「そして誰もいなくなった」を話に出したりと、孤島には10人しかいないと見せかけておいて、実は11人いましたよ、その黒のクイーンが犯人ですよ、という話。ルイス・キャロルの物語上のアリスの話をしているように思わせて、実は実際にその場にいる「アリス」という人間の話をしていたと。読み終わってみれば、「アリス」が出てきている場面はいくつもあってミスリードがうまいなとは思ったけれど、どうも探偵たちがみんな「アリス」の存在を意識していなさすぎて(描写の問題か)ちょっと違和感。あと、犯行の動機があまりにもぶっとんでて個人的にはイマイチ。異常に酸性化した島を中和させるためにアルカリ性である人間を殺す、環境破壊を行っているのは人間だからその人間を殺す、という二つの目的があったというけれど、さすがに前者の理由はちょっと・・・。こういう環境テロリストってすごく思い込みが激しいというかある意味いくところまでいっちゃってるイメージ。
    アリスをモチーフにしてると期待してただけに納得行かない箇所がいくつかあって残念。

  • 冬、海に浮かぶ密室「アリス・ミラー城」に招待された探偵たちの目的は館に伝わるアリスミラーの捜索。 最後まで生き残った者が手に入れられるという条件の下で探偵たちを嘲笑うような奇々怪々な惨劇の幕が上がった・・・。

     結末は言わずもがな
    「アリス」なる人物を不思議の国のアリスと混同させるトリックはもはや芸術の域。 御伽噺のアリスとの誤認に加え、ルディとの容姿・出生の混合、「友達」ではなく「フレンド」という表現は実在の人物ではなく架空の人物を想起させるような言葉選びですっかり騙されてしまった。
     

     一方で作者が意図的にアリスの描写を省きすぎているのでアンフェアの側面も強い。 終盤の入瀬、古加持のセリフから作中内で既にアリスは死んだものとされている。 アリス犯人説を否定するにはアリスの死体でも上がらない限り探偵たちは納得しないと思われるのだがそこらへんは丸々描写されていない。 この点は賛否分かれるところであろう。

     久々に奇天烈な作品に出遭えたのでそれなりに満足、個人にとっての傑作っていうのはこういう尖った作品から現出するのだと思う。

  •  中盤から終盤にかけてのホラーサスペンス的な展開。そして、さまざまな視点に移り変わりながら展開するミステリー。そして、最後の読者を騙すトリック。読んでいて楽しめるミステリー小説でありました。ただ、叙述トリックの部分がいささか地味で、わかりづらいところがややマイナスでした。

  • 動機、物理トリックは疑義を挟む余地あり。
    城の構造がイメージしにくいし、結果叙述トリックだった所が、悲しかった…
    ミステリーとしてはイマイチかな

  • ツッコミどころはあるけれど、面白い書き方!

  • 城シリーズ3作目。他のシリーズと一線を画すとはこういうことかと読んで思いました。
    私は全作好きですが、今回は特にミステリー感の強い古典チックな仕上がりかなと。
    かなり人が殺される割にはそこまで分厚い本じゃないのでどんどんバタバタ駆け足な展開な印象なのでちょっと物足りない感というか、もっと書き込んで欲しいなーという気持ちもありましたが結末を見たらそうもいかないのかと納得。

    終盤の犯人を探すところでは気になりすぎて夜更かししてしまいました
    ミステリー小説をたくさん読んできましたが、そんな手もあるのか!!!とまんまと騙されて一つまた視野が広くなった気がします。

  • 自己紹介のシーン、確かに違和感はあった。あったけどスルーしてしまった〜。最後まで読んでも何が起こったのか分からず、読み戻ってやっと叙述トリックと気づきました。

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著者プロフィール

2002年、『『クロック城』殺人事件』(講談社ノベルス)で第24回メフィスト賞を受賞しデビュー。代表作として、デビュー作に端を発する一連の〈城〉シリーズなどがある。

「2022年 『月灯館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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