まず、またシリーズ物を途中の作品から手をつけてしまうというミスが悔しい。文庫版解説にあるように、最初の作品から読んでいればまた印象が違うのかも。
そして何より、叙述トリックにまんまと騙されたことが悔しくてたまらない。違和感を感じる描写を深く考えなかったから…というのは言い訳で、完敗だった。ここまで真実に気づかなかったのは久々な気がする。
ただ、不可解な点、納得いかない点が多々あるので、悔し紛れに言及したい。以下ネタバレ
1)探偵たちを集めたルディの真意
城にあるアリス・ミラーの捜索、という名目であるはずなのに、これから連続殺人が起こることを示唆するようなあからさまな言動をしているのが意味不明。なぜ「生き残った者」?不自然。
2)物理トリック講釈の無意味さ
各探偵がもし自分が殺されたときに物理トリックが使われるなら…といくつか条件を出してたんだが、作中でこれを満たしているかの言及もないし、条件付けした意味がないんじゃないかと思った。
3)犯人の行動の無意味さ
そもそも、犯人の動機から考えれば、広大な城の敷地内で探偵をおびき出すためというだけの理由であそこまでの労力を使い密室を作り出す必要があったのか。まあ密室はまだいいとして、犯人が誰かをミスリードするための嘘のトリックのためだけに、死体をバラバラにし(犯人の究極の目的のためにはバラバラにするのは必要な行為だったが、全ての犯行後に行えば目的は十分達成されるのであるから、全員を殺していない段階でバラバラにするのは合理的でないと思う)、人形に隠し、糸を結びつけたり、夜中に人目を忍んで扉を増やす(これが一番無駄すぎる)という行為はあまりにも無駄が多すぎる。作品の雰囲気作りのためだけに、作者が大仰な仕掛けを犯人にさせただけにしか思えない。というか、扉を付けたり外したりって1人で一晩に何枚もできるのかがそもそも疑問。そんな暇があるのなら皆が寝ている各部屋にこっそり訪問して…ってやっていくほうが効率的なはず。
さらに、最初の殺人では鏡の国のアリスの見立てをやっておきながら途中からほぼ皆無。見立ても探偵をおびき出す材料、としてもお粗末では?密室というだけでその目的は達成できるのだから、中途半端なことをする意味がない。
4)探偵たちの無能さ
連続殺人の最中、海上が犯人を目撃したと言い出すのだが、探偵たちは全く考慮に入れないところが納得いかない。まあ海上が錯乱状態だったってのもあるし、作者が叙述トリックをやりたいがために意図的にしなかったのだろうが、通常のミステリー作品の流れならばあそこで犯行が起こった時間、どこで何をしていたのかを全員、少なくとも名前を挙げられた者に質問すべきだ。何の検証も行わないのはおかしすぎる(まあ海上の暴走中にそんなことできないとかなるんだろうけど)。というか、みんなアリバイを調べたりしなさすぎる。深夜に行われたからといってそういう質問タイムがないのは不自然すぎる。そもそも、今回作中でアリバイは殆ど問題視されないのが不自然。密室作り、死体の運搬、解体作業、扉の増設など時間のかかることをたくさんやっているのだから、いくら城が広いからといって何も検討しないのは(ミステリー小説における)探偵としてどうなのだろうか。
5)叙述トリックのアンフェアさ
ミスリードがひどい。確かにいろいろヒント(チェスの駒、ルディや海上、窓端の発言など)あったみたいだけど、途中で気づくのは至難の技だよ。まあこれは気付かなかったから負け惜しみなんだけど。ただ、登場人物たちが殆ど触れないというのはおかしすぎる。作者が登場人物たちの思考の描写を恣意的に操作しすぎな気が、というか叙述トリックを完成させる恣意が(よくよく考えれば)描写の端々に、前面的に出過ぎていると思う。第三者視点で物語を進行するより、場面場面で登場人物たちの主観で話を進めていくほうが良かったのではないか(そのほうが描写の偏りについても、あくまで主観だからというところで納得がしやすい気がするから)。
読み込んではいないので浅はかな指摘が多々あるかもだが、ここまでいろいろ考えさせてもらったということで面白かった。ちゃんとシリーズの最初から読んでみようかな。
クロック城出だしちょっと読んだけど読む気しねえ
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無理強いはしない
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