わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767101

感想・レビュー・書評

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  • 読んだらそうなるのは必然だったなぁというタイトル

    ついに読みました。

    川上さんは乳と卵、あとはアンアンのエッセイくらいしか拝見してこなかったのですが(日経新聞夕刊のコラムも担当してらしたかな、それは読んでた←調べたら5年前に担当してましたね)

    ご主人の阿部さんは好きでして。グランド・フィナーレはともかく、シンセミアが好きで、アメリカの夜からあれこれ読みました。

    そんな二人が結ばれ、子供もできたなんてなんて喜ばしいことでしょう。その子供の血が、言語感覚が妊娠発覚の頃から気になってしようがありません。

    そんな川上さん、昔から気になっておりました、このタイトル。
    しかしながら、読んだらそうなるのは必然だったなぁというタイトルです。

    処女小説なだけに独特な語感はより鋭く、そのリズムに乗るまでに時間がかかりました。
    そのあたり、さすが乳と卵では読みやすくなっていたなぁと思いましたが、エッセイやインタビューを読んでいても伝わる、言葉への執着、この世界にいる事への疑義が強く、強く伝わってくる内容に。

    子供のころから、ここに書かれているようなことを本当に考えて、気にして生きてきたんだろうなぁと感じました。

    ああそういえば。私はもう長く性交をしてないなあ。生むからははるか遠くにおります。かといって処女なわけでもない、かといって生理が退いたわけでもない、かといって、かといって、とかいって、ひと月に四日間、血を出す今日のこのことが、何に対してか大きな無駄、大きな空振りに感じることもあるのやから、この数年の私の体は何であろうな。
    P122

    このかといって、かといって、からのとかいって、。
    峠を上る時のスイッチバックのような効果をわたしにもたらし、また違った方に言葉がうねっていく。
    この人の詩作も読みたいな、という気分になり「先端で、さすわ さされるわ そらええわ」読むかーという気持ちになっちゃいました。

    これもまたこういうタイトルが適切、なんでしょうね。

  • 着眼点をそのまま文章に仕立てる。一般人にしてみればこれが本当に難しい。しかも、処女作にして言葉の選択が巧み。文体が同じミュージシャンから作家へ転身した町田康とどことなく似ているが同等以上の才能の持ち主だと思わざるを得ない。この作品の内容を標準語で書くと重くて読めたものではないだろう、関西弁だから良かった。関西弁のリズムの良さを再認識した。

  • 川上未映子は天才か。ただただスゴいの一言に尽きる、圧倒的読書体験。


    文章を読む時脳内に音声が流れるか、という記事が話題にのぼった。自分の場合は意識すればそれをコントロールできるのだけど、こればかりは是非とも、普段音声なんて流れない、という人も、脳内で声に出して読んでみて。文章に起こした関西弁は慣れるまで時間がかかるけれども、慣れさえすれば心地よく、自分の場合は幸せなことに、脳内再生の助けになってくれさえした。

    独特なリズムに乗っかって、聞こえてくる言葉が刺さること刺さること。「わたし」は「私」から逃げられないし、だからこそ彼女は、わたしを失う。すげぇなぁ。

  • 先日、川上未映子さんの「わたくし率 イン 歯ー、または世界」を読みました。

    「りぼんにお願い」を読んだ流れで、読んでみました。

    川上未映子さんの小説としては、デビュー作に当たるんですかね(2作話が収録されているんですが、タイトル作は、芥川賞候補になったみたいです)。

    で、川上未映子さんの小説は、以前に、「すべて真夜中の恋人たち」を読んではいるんですが、今作は、「すべて真夜中の恋人たち」とは文体や世界観が全然違い、関西弁で畳みかける感じの独特の文体で(ある種、ラップ的でもあるのかなあと)、独特の世界観の小説でした。

    そして、2作目の「感じる専門採用試験」も、似たような文体の独特の世界観の小説なんですが、こちらのほうが、より哲学的な内容な気がしました。

  • 文章の書き方が独特。でもちょっと読みにくいかな。内容はどうかな?好きかと聞かれたら、NOかな。

  • 歯に異常な執着を持つ女性の独白体文章。どろっとしたまとまりのない意識の流れと突き刺すような言葉の選び方。

    そんなに長くはないけど、自分とは全く違う感性の思考を強制的に追体験させられるので読んでて消耗してしまった。

  • 現代ハードコア小説

  • 初未映子。大阪弁?のリズミカルな文章は独特な世界を作っていて、最初は戸惑いましたが後半、二編目は楽しく読めました!表題作『わたくし率〜』は歯科女子で青木のことを想い、これから生まれてくるであろう子へ向けた日記を綴っていた「わたし」とは、一体何だったのでしょう・・ちゃんと存在していたのでしょうか?途中かスーッと存在感が希薄になっていってるような気がしてならなかった。最後に唐突に登場した幼女こそ、未来ではなく過去の、嘗て「わたし」であったものだ。

  •  表題作が特に好き。「主語のない世界」に光を見て、そんな「主語のない世界」をくれた彼を慕う気持ちの儘ならなさ、不器用さが切なくて辛くて胸が苦しくなる。自己の拠り所を奥歯に求めた理由、経緯、<わたし>の思考などが勢いのある文章を通して流れ込んでくる、あのエネルギーがすごい。
     もう一つ収録されていた「感じる専門家 採用試験」も、上手く言い表せない女性ならではの不思議、不安、恐怖が文章化されていて、とても腑に落ちた。やっぱり川上さん、好き。

  • 中毒性のある文章を書く人やなぁというのが感想。関西圏外の人が読むと違和感あるのかどうかも気になるところ。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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