わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062767101

感想・レビュー・書評

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  • よくわからん、奥歯はつよい。

  • うん…え?…ん?……あ。
    っていう間に話が終わってしまった…

    哲学ですね。これは。

  • 一言でいうと圧倒された。ただただ圧倒された。こんな経験は初めて。濁流となって押し寄せてくる言葉に翻弄され圧倒され続ける。容赦ない大自然の猛威の前に存在を曝け出される。そんな感じ。

    私とは何か。その哲学的な問いをこんな風に投げかけることができるのかと単純に驚いた。いったいこの滅茶苦茶な文章は何なのか。会話、脳内思考、回想、妄想、いない赤ちゃん宛の日記、手渡しの手紙、突然の発狂……。無秩序すぎる。狂人の雑記帳みたいだけど、一点に向かってまとまっているような気もする。言葉の選択が一言一言刺激にあふれている。凄く衝撃的だった。これ以上うまく言葉にできそうにない。とにかく、いままで読んだ中で最大瞬間風速が一番なのは間違いない。

  • 私が私の私はどれか。アナタの私はアナタの奥歯であるように信じて止まなかった彼女は私のアナタの私を抜くのです。

    川上さんは思考を形のないまま動いたまま生きたまま言葉にできる。すっごいすっごい。だから活字文学より、音声文学。声に出して読んでより響く言葉。
    読み辛いとゆう人が多いが、詠む、ならあの間隔でしょう確実に。あの思考にはあの長さが必要なんでしょう。

    私のジャンルベスト。こうやってジャンルごとの一番が見つかるのはこれからの読書人生において収穫です。

  • 読みはじめの快速の心地良さから中盤一転して、読後感がっかり。わたくし、つまりこの本の中で書かれる「わたし」でない「私」とはどのようなものであるのか、そしてそのような疑問を持つわたしが他者である青木と関わろうとするときに、青木の「私」と如何にして交流するのか、が気になっていたのだけれど、結局『雪国』の冒頭を出して、主語がない世界への期待が描かれ、人並みはずれて丈夫で今まで痛みを感じたことのない歯に、人に踏みにじられない場所に「私」を閉じ込めうるのではないか、という保守的かつ凡庸な発想。まだ存在しないものに向かっては平気で「お母さん」と名乗って憚らず、しかも手紙も何もかも空想で、青木の「私」なんて以前に青木さえ曖昧で、最終的に「あんた誰?」と言われてしまう展開は、もう本当にがっかりすぎるほどがっかり。 著者は『わたくし率 イン 歯ー、または世界』の「わたくし率」の存在さえ全くもってあやふやで、これでは懐かしの三田誠広の『僕って何?』以前の地点にいるでのではないか? 前半部の文章の面白さは十分に認めるけれど、奥歯を「ああん」と見せ合って気まずさを解消する方法なども、何故それで気まずさが解消するのかなどは分からないままである。(もしも「私」なるものを見せ合う行為と解釈しても果たして「私」とは見せられるものなのか、見せれば済むものなのか?そして主人公にとって「歯」は冒されないものだとしても青木にとってもそうだというわけではないだろう、などの理由で、頑強に「歯」に自我を置く理屈を述べる主人公の行為としては理由が脆弱だ。) このようなタイトルが冠されていながら、「わたくし率」の「わたくし」さえ曖昧なまま放り出されるとは思わなかった。この著者は瞬間的な文章の才能はあっても、小説家としてはあまりにも未熟なのではないかと思わざるを得ない。ここまで饒舌で、手の内を明かしてしまっているようだから尚更そう判断してしまう。

  • デビュー作らしい、勢いを感じる。

    言葉と存在をめぐる哲学的テーマが、妄想女の関西弁によって、小説全体をひとつの隠喩としながら語られる。

    わたくし率0%へ向けてラストの疾駆。
    烈しさが、言葉そのものの過激さが、ビリビリしていてなんとも切ない。

    言葉では、今に置いてけぼりにされてしまう。
    その存在論的な本質的感覚。

  • <内容>
    人はいったい体のどこで考えているのか。それは脳、ではなく歯―人並みはずれて健康な奥歯、であると決めた<わたし>は、歯科助手に転職し、恋人の青木を想い、まだ見ぬわが子にむけ日記を綴る。(背表紙より引用)

    <感想>
    「わたし」はどこにあるのか。そんな実存的な問いに悩み、奥歯こそが「わたし」であると暫定的に見出したちょっと変わった女の話。まだ見ぬ子どもにあてて日記を書くなど、明らかに空想を飛び越えて病的な「妄想」にとり付かれている姿が痛々しく、ドン・キホーテ的なユーモアにすら感じる。「わたし」を自らの内部において考えることができた主人公が、メタ的な視点から客観的な「わたし」を見ることができていないことの面白さというか怖さ、みたいなものがあるように思う。

    「乳と卵」でもそうだったが、物語の後半における捲くし立てるような盛り上がりが非常に魅力的だと思う。本書でいえば、中学の同級生である青木君と再会した主人公が、彼を部屋まで追いかけるシーンのリアリティ。実存への問いに拘泥された内向的な女の悲痛な叫びと、それをぶった切る現実を生きる女の正直な発言、さらには状況が飲み込めずおろおろするばかりの青木君。川上未映子の口語体の文章はこの舌戦とてもマッチしていて、ものすごく臨場感あふれる場面だったように思う。

    そしてその後、打のめされた主人公が麻酔なしで奥歯を抜くシーンで、それまで奥歯に収めてきたたくさんの痛みが溢れ出すという怒涛の描写もすごく良かった。「わたし」は奥歯にあるという考えは、辛い人生を生きてきた彼女が自分を守るための手段からきていたことが明らかになる。こういう言葉はあまり良くないかもしれないが、頭のおかしい女の人生というのは、往々にしてもの悲しい。

  • 予想以上に重くて悲しかった。
    読みながら何度も悲しい方向に裏切られていく感覚。
    文体は先に読んだ「乳と卵」同様引きこまれたし、好み。
    「わたし」がまだお腹の中にさえ居もしない将来のわが子に綴る日記に「おまえのような状態になりたいという気持ちを持った人は少なからずいますよ。それはね、死にたいとかそういうことではなくて、生まれてこなかったことにしたいなあ、できたら……だから、生まれてしまって今ここに在ってしまった自分……それなりに考えていたりしなければばらばらになってしまいそうになって……それもしんどいものなのですよ」と記した文章は何度も読んだ。

    悲しすぎて封じ込めている自分、を持っている人は少なからずいるのではないか。

  • 意味は正直、わからんけれども、水の流れにゆらゆら揺られて、右に落ちます左に曲がれば、くるくる渦巻き飲まれます、みたいな感じで文章の流れに身をゆだねる心地良さや、感覚的な気持ち良さを味わえます何言ってるか正直わかんないけど。

  • 読ませるごちゃごちゃ

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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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