- Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062767101
感想・レビュー・書評
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f.2023/2/19
p.2010/7/20詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
これぞ川上未映子ワールドって感じ。関西弁が苦手な人は読んでいてしんどいかもしれません。
表題作の主人公が怖い。青木の彼女?が凄まじい。川上未映子の書く女性って、ぼんやりしてるか強い(強烈に)という感じ。 -
未映子は歌手出身ということで感覚的に小説を書くタイプだろうと思っていた。しかしながら重彦ちゃんや春樹ちゃんとの対談を読むと、小説の構造や背景となる思想を勉強し、それを踏まえて作品を書いていることがわかる。素地があるので今後もいい作品を残し続けてくれそうだ。
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・ずっと一人称の主観的な世界に、終盤他者が入ってくることで初めて主人公に対する客観的な視点が入り、それまでとそこからでイメージががらっと変わるところが秀逸
・言い回し、比喩、言葉遣いがユニークでおもしろい。一文が長めで、流れるような文体、リズムが良い
P15 医師の頭の先っぽがわたしの奥歯にあたって、ある達成がどんときらめいたような気がしたんですが、…
16 なんでやの、なんでここにペンなんかもちこむの、一回性の運動を、なんで記録なんかそんな阿呆なことしようとするんのよ、…
22 …あんたがあたしらの知らんところでどんなに謙虚でどんなにポップな人やとしてもこれはけっこうな問題よ。だつわて歯の痛みを知らん人といったい何を渡しあって話したらいいっていうの!
32 今、青木が、仕事場か部屋か、まあこの世界のどこかにいて、どこかから何かを見てたり、聴いていたりするんでしょう、でも、この世界のなかにその場所というのはそこならただひとつしかなくて、お母さんはそのひとつしかない場所のことを思うのです。…お母さんがぜったいに、知ることのできない、立つことのできない、そのものがある場所のことを思うのですよ。
39 お母さんのところには、梱包された荷物みたいにどしんと夜が来ることがあります。
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『乳と卵』のほうがすっきりはしていたが、計算高さではこちらもなかなかである。古本で買ったら書き込みが色々あって、内田百閒の名前まで出ていたので、どっかの文学部生が授業で使ったんだろうなと思った。
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川上未映子初体験。殆ど句読点なく綴られる関西弁の、そのクセに慣れるまではちょっと読みづらく感じたけど、ある程度リズム感がつかめるようになると、以降は逆に心地よく感じられるようになる。この一人称たる語り手は、実はかなり病んでるってことが、化粧女の罵詈雑言を通して明らかになるくだり、最高です。失礼ながら、かなり笑かしてもらいました。
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表題作と「感じる専門家 採用試験」の二編を掲載。
なんとも形容しがたい読後感。
というのも、僕にとって表題作は五つ星。
「感じる~」は一つ星、と両極端な感想を持ったから。
表題作に関して、他の方のレビューを読むと、「理解出来ない」「単なる言葉遊び」「独りよがりな作品」といった批判的な内容が割と目につく(もちろん、好意的なレビューもある)。
僕の受けた感想は「理解出来ないなんてことはない! 僕なりに理解し、感じとった」「言葉や文章が独特でそこが面白い」「決して独りよがりな作品ではない……なんで判らないのかなぁ」といったものだった。
確かに判りづらい内容にはなっているし、その独特な文章は読む人を選ぶのかも知れない。
それでも、イジメという問題も含め、全体に切ない雰囲気が漂っていて、それが僕にシンパシーを抱かせる作品であったりする。
軽いどんでん返し的な展開も心地よかったし、読み始めたら最後まで淀むことなく一気に読み通せた。
ところが、「感じる~」に関してはまるで面白みを感じることができなかった。
それこそ「理解出来ない」「単なる言葉遊び」「独りよがりな作品」という、前出した他の方の批判的なレビュー内容をそっくりそのまま感じてしまった。
表題作があまりにも面白かったので五つ星にはしたのだけれど、やはりなんとも形容しがたい読後感、というのが正直なところ。
少なくとも万人向けの作品ではないと思う。
彼女の作品を読むのは二作目で、初めて読んだ「乳と卵」は面白かったので(四つ星をつけている……しかも「シンパシーを感じた」といった似たような感想を書いていた)当たり外れは大きそうだが、僕にとって相性の良い作家なのかも知れない。 -
<慣れたら成れたら鳴れたら最高>
まるで詩のように,歌うように,せやかと思うと頭に思い浮かんだことパパパて瞬間のべつまくなし言うようなんわ舞城みたいやわ思うやけど私、やっぱりこれは,これが川上さんのスタイルなんやろなとおもうようになってん.
なんやかとっても誰かの頭ン中覗いてみているような気分に,なったんやけど、頭やなくって歯やったは,私は歯の中みて言の葉のしなやかさと妙な強さと不思議ささえこの本か,ら感じたんや. -
「私は奥歯である」という設定の面白さと144頁という薄さに惹かれて購入したら、凡人にはまったくついていけない内容で目が点に。大阪市城東区出身の著者がベタベタの正しい大阪弁で、(私にとっては)意味不明のことをまくしたてます。5頁まるまる段落変わらないこともままあり、144頁を500頁の本よりも分厚く感じたほど。わからないなりにもなんとか読み進めると、自分を奥歯であると思い込む主人公女性が歯科に勤めていること、昔いじめられっ子で、ただひとり彼女に声をかけてくれた青木くんに片想いしていることなどがわかりますが、それ以上は何もわからず。芥川賞の候補作だったそうで、これを読んでますます私に芥川賞受賞作を読むのは無理だと確信。大衆向けの直木賞受賞作がいい。ただ、わからなくても読後に不快感があるわけではなく、この点ではジャンルは違えども私にとって伊藤計劃の『虐殺器官』と同じ。こういうものを書ける賢い人の頭の中ってどうなっているんだろうとただただ不思議です。わからなすぎて★1としたいところですが、歌野晶午の『女王様と私』のような不快感はないので★2に。
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なんっじゃこりゃ。
世の中にはこんな小説(?)があるんですか。
ただただ圧倒されるばかり。好きか嫌いかと言われれば嫌い寄り。
でも読み進むにつれページをめくる手がどんどん早くなりました。
足がぞわぞわっとする恐怖感、誰かの精神世界に入り込んでぐるんぐるんなるような、はじめての感覚。
たった130ページかそこらの本ですが、とても体力を使いました。
ふたつとない読書体験ができると思います。。