- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062879590
感想・レビュー・書評
-
世界のあらゆる言語の中から著者が勝手に90を選んで、それらの言語について著者の考えるところを見開き1ページで述べたエッセイ。
「著者の考えるところ」というのは本当に雑多で個人的なもので、言語名からもつイメージ、その言語を著者が学習したエピソード、話されている地域に旅行した話、などが中心で、それぞれの言語の概説といったものでは全くない。そういう意味で「世界の言語入門」というタイトルはいささか内容とはあっていないので、もっとエッセイ風の軽いタイトルをつけた方が良いと思う。よく似た町田健の『言語世界地図』とも趣が異なる。様々な言語についての知識を得ようとする本ではない。
個々の言語についてのエッセイそのものは他愛のない内容だが、著者の人柄や言語学習への想いが率直に伝わってきて、とても面白かった。また、タミル語については大野晋批判(おれも日本語起源説に胡散臭さを感じて全然大野晋の著作を読んでいない)、ビルマ語は俳優・矢崎滋のお父さんの話(矢崎滋の従兄がおれの大学の時のゼミの先生だった)、ラオス語は外大の比較言語学の授業の話(おれが卒業した直後の比較言語学の担当が黒田先生でなんか悔しい)なんかが、おれ個人的な思いもあって面白かった。「言語学コラム」も、特に「言語連合」「語族」が面白い。この本を読んでこの著者のほかの本も読みたくなったし、また四人称のあるアイヌ語とか色々な言語を勉強してみたくもなった。(09/01/21)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
言語学が好きなおじさんの書いたサクサク読めるエッセイのような内容。
世界の90言語について、1言語につき2ページで言葉を添えています。
言語入門とはありますが、その言語の使われている地域について
旅行に行ったらこうだったとか、この言語の文字は可愛いとか、
著者自身が思い出を掘り返して楽しんで書いたのが伝わってきて面白かったです。
お気に入りはコサ語についての文章。
私もさっぱり知らなかったけれど、南アフリカなどで使われている言語とのこと。
『
言語学で大切なことは、広い視野から言語を眺めること。
日本語と英語が中心で、後はせいぜい欧米やアジアの言語が二つか三つ、
それだけで世界を推し量るのは、はじめから間違っている。
そういうときにコサ語を聞くとよい。言語に対して謙虚になれる。
』
田中芳樹さんだったかな・・・が昔、著書で言っていたことを思い出します。
世界で一番最初にできたレストランは日本だと本にあったのを見て、
「もっと何百年も昔に中国には立派なレストランができている、
日本とアメリカとヨーロッパだけが”世界”だと考える人が多くて困る」
というようなことを言っていたのです。
言語だけでなくいろいろな面で謙虚にありたいものです。
昨年の春頃からベトナムやカンボジアの歴史に興味を持って
植民地でない独自の歴史がとても面白くて驚きましたが、驚くなんて失礼。
知らないだけで世の中にはたくさんの情報が溢れているだけなんですよね。
そろそろ若さを言い訳にできない年齢。知識を身につけたいものです。 -
世界の数ある言語の中から著者が厳選した90の言語について、各2ページずつのエッセイ集。見たことも聞いたこともないような言語もたくさん出てきて、英語・仏語・独語・露語などなど、いわゆる「主要言語」の視点で世界を語ることの危うさを実感。
-
マケドニアとトルクメニスタン行きたい。
-
言語学者のただのエッセイじゃないかと切り捨ててしまうのは簡単だが、専門外の言語にも苦し紛れのコメントを試みているところが読み物として楽しいし、時々言及される言語学者としての「姿勢」についても興味深く読めた。何か外国語を始めたくなるという意味では「入門」かな(笑)
-
「英語が話せない,発音がニガテ」なんていう人は(自分を含めて)たくさんいると思うけど,
この本を読むとちょっとそういう意識は変わるかも.
いや別に,英語が話せるようにはさっぱりならないけどさ -
これもだいぶ前に買ってその日のうちに読んだ本です。
全部で90の言語に2ページのエッセイがついています。
ある局所的なところから被験者を引っ張ってきて、ヒト全体に
一般化しようとするある種傲慢とも言えることをやっている側としては
世界の言語の多様性を前にするとただただ恐縮するしかないのでした。
英独仏かじったくらいで偉そうになんかとてもできません。ぶるぶる。
言語なんかますます通じないよ・・通じなくて当たり前だよ・・
だからこそ理解したという確信が如何に稀有で異常で脆いものか
思い知らされますね。
言語によって発音器官も概念もチューンされるという、
ややサピア=ウォーフ的な考え方はもしかしたら身体性の思想の元に
考え直されるべきなのかもなぁと思ったり。
身体性と学習との区分けをどうするかとか、そういう問題がまず
ありますけどね。
-
もとが講談社のメルマガの連載だったため、世界の言語のアウトラインを知るような記述ではありません。あくまで黒田氏が知っている(あるいは知らないから調べた)、その言語に関するエッセイです。なので、そういった学術的なものを求めている人には合わない本でしょう。むしろ、この本から学ぶべきは黒田氏のように、どんな言語にも偏見や先入観を持たず素直に興味を持ち、その音の響きに耳を傾け、文字の構造に感歎する気持ちなのではないでしょうか?
-
本書は個別言語、あるいは少数の言語を愛する黒田さんが、大学をやめると決意したあとの90日間に、一日一言語ずつ書いたエッセイ集であり、ここには本来の黒田さんのよさがふつふつと出ている。もっとも、ここであげたすべての言語に黒田さんが挑戦したわけではなく、書き出してあわてて調べたという言語もある。英米独仏露中韓のような主要言語だけで言語を語るなという声が聞こえてくるようだ。