- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062880008
感想・レビュー・書評
-
大学の講義を受けている感じ。以前も挑戦した記憶があるのですが、挫折しました。今回は、この頃の生物学の基礎を学んだことで、楽しく読了できました。パワーズ・オブ・テンがYouTubeで見たことにも感激。後半は、研究成果の捏造問題が丁寧に伝えてくれる。stap細胞の問題と、構造は同じなのか?
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『中学生からの大学講義5 生き抜く力を身につける』(ちくまプリマー新書)のアンカー・西谷修さんの読書案内からの芋づる式読書。
おそまきながら去年読んだ『生物と無生物のあいだ』もおもしろかったけれど、これもわくわくする読み物。もっとはやく読めばよかった。
なにより福岡ハカセの敬愛する(そしてわたしも大好きな)須賀敦子の足跡をたどることでお話の幕が開くし(一冊を通じたキーワードにもなっているし)、その先も、ミクロな世界のランゲルハンス島から夜空に輝く北斗七星まで、あるいは絵画や映像作品の話題から臓器移植までとりとめもなくひろがっているようでいて、実はゆるやかにつながっていた各章の内容が、最後はパズルのピースのようにぴたっとはまっていって、あざやかに一枚の佳作になっている。後半のスペクター事件の顛末は専門的な話で根気が要ったけど、一冊を通して人の性(さが)をあぶりだしていて、5年も前にこのような文章をまとめていれば、例のSTAP細胞問題のときの福岡ハカセのコメントがわかりやすく納得のいくものだったのも道理だなと腑に落ちた。 -
前半ミクロの話を読んでいて、全然関係ないんですが、人の活動も全然別の見方をすれば原子の集合体が移動しているのに過ぎないのかも・・という想像をしました。後半は、実験の詐称事件について書かれてあったので、小保方さんのことを思い出しました。画期的な発見だから追試されるのが必定なのに、なぜあんなことをしたのかよく理解できなかったけれども、誰にでもありえると言えないにしても、少しわかるような気もする・・・(実際に過去の事例の紹介があります)という気持ちになりました。
福岡伸一氏の本は読みやすくて面白いです。 -
「マーケティングII」クラスで紹介された本。ピラミッドストラクチャーのように問題を分解するけれど、「部分は全体の総和にあらず」ということを示している、ということから購入した本。MBAの学びもそうで、経営というのを教えやすいように科目に分けているが、その部分部分だけでは経営はできない。新しい気づきが得られた1冊。
・顕微鏡の倍率を10倍だけ上げると何が起こるか?それは視野が暗転するということである。そして更に重要な事実は、もともと見えていた視野のうち99%がその光と共に失われてしまったということである。拡大された絵は元の世界のごく一部であり、一部の光しか届いていない。ほの暗い。その暗さの中に名もなき構造物がたゆたっている。そして、今見ている視野の一歩外の世界は、視野内部の世界と均等に連続している保証はどこにもないのである。
→詳細を見るということは、その他を捨てるということ。
・如何にvitroでリスクはないよ、といってもvivoという全体の再現は叶わず、結局のところ、腐らないというベネフィット(サンドイッチなどの保存料、ソルビン酸)とリスクではないだろうという極めて小さいと思われるリスクの天秤で使用されている。
個々で言いたいのは、コンビニサンドイッチがNGということではなく、私たちの身の回りには、リスクが極めて小さな声でしかささやかれていない。わざと見えないようにしていることもあるということ。「ソルビン酸」とあっても「なんじゃそりゃ?」です。
→部分的にOKが、全体ではNGということはよくあるでしょ?私一人ならOKだけど、彼女とならNGなこと、営業チームだけならOKだけど、マーケチームとならNGとか。
・鼻はどこまでが鼻か(頭足人)
Q.あなたは外科医です。今から、鼻の手術をします。あなたは鼻をどこまで深くえぐり出せば、鼻を取り出すことができるでしょうか?
鼻の目的は、嗅覚という機能を担う人体のパーツ。その機能は鼻の空洞内の表皮についているにおいを感知するレセプター(受容体)にある。受診したら神経線維を通じて、電気的な情報を脳の嗅球へと送り出す。更には、嗅覚は何のためにあるのか?を考えると、危険な匂いの時には警戒するという行動を取るために体を動かす。体を動かすには、筋肉、骨…。
つまりは、鼻を取り出すには、身体全体を取り出すしかない、ということに気づかされることになる。言いたいことは、部分とは、部分という名の幻想であるということに他ならないということである。鼻はどこかの工場で製造されたプラモデルのパーツではない。レゴブロックの様に、後から「カチッ」とはめるものでもない。鼻は元をたどれば、一個の受精卵から出発した細胞の連続的なバリエーションに他ならないのだから。
→鼻を鼻たらしめるのは、この身体すべてがあってこそ。
・秩序は壊されるのを待っている。全体は部分の総和以上の何物かである。
DNAの塩基配列も、1塩基では機能しないが、塩基→アミノ酸→タンパク質となることで機能を果たす。
→一人ひとりではできないことでも、二人になった途端にできるようになることもある。
・見たと思ったものは全て空目
私たちは連続して変化するグラデーションを見ると、その中に不連続な、存在しないはずの境界をみてしまう。逆に不連続な点と線があると、私たちはそれをつないで連続した像を創ってしまう。つまり、私たちは、本当は無関係なことがらに、因果関係を付与しがちなのだ。なぜか?不規則は不安定を生むため、余計なことに煩わされぬよう、世界を図式化・単純化することが、わかることだと考えたから。そのため、私たちは見ようと思うものしか見ることができない。そして見たと思っていることも、ある意味ですべてが空目なのである。
→見たいものしか見えないというのは、ちょっと話は変わって心のあり方に関わる。
・世界は分けないことには分からない。ルネ・デカルトも言う、困難は分割せよ、と。
しかし、分けても本当に分かったことにはならない。顕微鏡で解像度を如何にあげても、見えていないものがあるという事実がある。部分で見ることが悪いのではなく、その事実を知り、自省すること。クリシン的に言えば、抽象と具体を行ったり来たりすること。それが「世界に対する」ということ。
→上述で言ってきた、部分と全体の話と同意。
・ノー・イクスキューズ
研究室で怖いのは定期的に行われる進捗確認。ボスはいう、
「今日までにどれだけの時間がありましたか?たったこれだけしか達成できていないのはなぜですか?」機械がうまく作動しませんでした…、試薬が届かなくて…思った通り反応が進まずに…参考文献のプロトコルの通りやったんですが…共同研究者からの連絡が遅くて…全て自責である。マニュアル通り、試験管を入れて反応を行う。「あれ?うまく反応しません。」こんなこと、小学生でも言える。なぜあなたは大学院に進学したのか?それはマニュアル通りに反応を待って、はい、うまく反応しませんでした、と報告することではない。うまく反応しない、その理由を考え、原因を突き止め、その問題を解決するため、もっと上位概念に移れば、それが世の中/人類の発展に繋がるために、君はここにいるのだ。
→単純作業をするためにいるのが、プロフェッショナルではない。
・多くの研究者は「偽装」を行っている。都合のよい「成功」といってもいいかもしれない。それは成果をあげなければつめられるから、卒業できないから、脚光を浴びたいから。でも、真実は裏切ることなく、できない人間には制裁が待っていると思う。
→功利主義的な考えではいけない。夢は誰かのために成し遂げたいという時に、多くの人がついてきてくれるものだと思う。自分だけが、だけではどうもいかなくなったときに気付ける境地かも。 -
生物と無生物のあいだが超絶面白かったから読んだけどドチャクソ面白かった。こんなふうに科学を物語れる人ってそうそういないんじゃないか。「ほんとに畳めるの?」って思うぐらい風呂敷広げたけど最終的にはきっちり綺麗に畳んだね。最後の急展開には時間を忘れて夜更かしした。
私たちは見ようと思うものしか見ることができない。人間は生得的に因果関係を認識することができ、それだけを頼りに遠く離れた星と星をつないで星座を見出すように世界を理解しようとするけど、その「認識」こそが「治すすべのない病」なのかもしれないよネ…みたいな話だった気がします。 -
『生物と非生物のあいだ』(講談社現代新書)と同じく、雑誌『本』に連載された科学エッセイをまとめた本です。前作と同様、著者が専門外の領域について幅広い知見を駆使して、素人の読者にも分かりやすい説明を工夫していることが、よく伺えます。
前作に比べると、扱っている内容がやや拡散している印象を受けますが、スペクター事件の顛末を記した後半は、日本での「STAP細胞」事件のことなどが思い合わされたりして、やはりおもしろく読みました。 -
読んだ後、なんだか少し賢くなりました。
なったような気がしました!!
アルファベットで一番使われているのはE。逆に一番使わないのがX。
タンパク質を構成しているアミノ酸で一番使われているのもE。逆に使われていないのはトリプトファン(略称X)。著者はこのトリプトファンの研究をしている方。
●視線の話
●パワーズ・オブ・テン
●最もゴージャスな美術館「ゲティ・センター」
●ヴィトーレ・カルパッチョ作「ラグーンのハンティング」の話
●マップラバーとマップヘイター
などなど面白い!
後半は研究のお話で、少し僕にはしんどかった。
“これは全くの比喩ではない。高い秩序を持つもの、その内部に高いエネルギーを含んでいるものは、坂の上に持ち上げられた石である。石は転がり落ちることを待っている。そして実際に、それは起こる。苦労して整理整頓した机の上は、二、三日もすれば散らかった書類の山と化す。温めたコーヒーはまもなく冷える。熱い恋愛もほどなく醒める。秩序はすぐに無秩序さを増す。熱いものが冷える。局所に集められた高エネルギー状態が、拡散していく。これらの現象はひとことで言い表すことができる。乱雑さ=エントロピー増大の法則である。” -
「分かる」の語源は「分ける」から来ているとよく聞くが、分けても分けてもわからないものがある。このタイトルがそのまま著者が本書で言いたいことを表しているのだろう。20世紀物理学は次々と最小の粒子を追い求めてきた。それがわかれば、世界が分かると考えていた。生物学も同じ手法を使って、生物を次々に最小の要素に分解してきた。それが解明すれば、生命の意味が分かると考えていた。しかし、それだけではわからないものがある、ということがわかっただけだった。木ばかりを見て、森が見えなくなっていた。全てのものは単独で存在するわけではなく、相互作用の中にある。部分と全体、その両方を見ていく姿勢が必要である。本書でも過去の著作同様、著者独特の手法で、読者を生物の世界に誘う。最初は何の話が始まるのか、全く想像がつかないのだけれど、何か大きな力で引かれてでもいるかのように、グルグル振り回されながら中心へと近づいていく。そして後半ではデータ捏造。サスペンスを読むような勢いであっという間に時間が過ぎていく。ところで、目から出る光線はどこまで事実なのでしょう。話としてはおもしろいし、ありえそうなのだけれど・・・
-
色んな話題を取り上げながら、最後にはすべてが繋がる構成で、面白く読むことができました。本当綺麗に収まったなー!スペクター事件は発行当初はそうでもないですが、今となってはタイムリーな話題でページを繰る手が止まりませんでした。
-
読書録「世界は分けてもわからない」3
著者 福岡伸一
出版 講談社
p274より引用
“この世界のあらゆる要素は、互いに連関し、
すべてが一対多の関係でつながりあっている。
つまり世界に部分はない。部分と呼び、部分
として切り出せるものもない。そこには輪郭
線もボーダーも存在しない。”
目次から抜粋引用
“ランゲルハンス島、一八六九年二月
相模原、二○○八年六月
ES細胞とガン細胞
細胞のなかの墓場
治すすべのない病”
生物学者である著者による、細胞の作用に
ついて書かれたエッセイ集。
自らの研究発表についてから他の研究者の
成果についてまで、世の中の生物とは違った
ことなども例えに使って書かれています。
上記の引用は、エピローグでの一節。
境界線を作ったりそこで分断したりするのは、
人間ならではの行いのようですね。
少し強引でも分断して境界を一応決めておか
ないと、デタラメに世の中が動いてしまうか
らかも知れません。ただ、デタラメに動くこ
とで上手く行く人達もいるから、結局いつま
でも落ち着くことは無いのかもしれないなと
思いました。
今年日本でとても話題になった、研究結果
の捏造について、過去の例が記されています。
日本で話題になったあの人のことではなく、
海外のまた別の研究者の話です。
科学において、目覚ましい結果を得ようとあ
せってしまうと、そういう事を起こしてしま
うことは多くなってしまうのでしょう。
ーーーーー