世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880008

感想・レビュー・書評

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  • 230615〜230622

  • 写真を撮影するときに赤眼現象が発生することから分かるように、人間の眼は、ヒトが意識していないかすかな光を発している。ヒトが眼線を敏感に感じるのは、その光を察知している可能性も否定できない。
    つまり、ヒトは自身が意識している範囲の情報から因果関係を見出すことで、世界を理解した気になっているが、それがすべてではないということ。ミクロの世界で起きている確率的な現象も、マクロの世界で起きている複雑系もすべてのものごとの相関関係の末に起きている表層であり、分けようが、俯瞰しようが本当の因果関係は分からないということだと思った。
    しかし、因果関係を特定しようと試みること、多くの視点を取り入れて世界を理解しようとすることには意味がある。なぜなら、人間もその世界の一部であり、そうすることによってのみ認識は進むからである。ということだろう。

  • 随分前に「生物と無生物のあいだ」を読んで以来の福岡本。
    生物学者のエッセイ風読みものだが、とにかく文章が極上の作家並みに上手い。内容も相変わらず面白い。ロードムービーさながら場所と場面を変え、自然科学的切り口から日常の常識を覆し、読者の知らなかった真実を教えてくれる。作中にひとりの写真家が著者のところに来て自分の作品の言語化を依頼するという下りがあるが、確かに福岡氏の文章にはそういった圧倒的な力量とオリジナリティがある。
    後半100ページほどはアメリカコーネル大学の名門研究室でのデータ捏造事件のドキュメンタリーが続く。この本の出版数年後に理化学研究所でSTAP事件が起こったのはなんとも予言的だ。
    極上の小説を読んだような読後感。オススメです。

    「不足と欠乏に対して適応してきた私たちの生理は過剰さに対して十分な準備がない。インシュリンは過剰に対して足るを知るための数少ない仕組みだった。それが損なわれたとき代わりの因子は用意されていなかった」
    「生命現象において部分と呼ぶべきものはない。...全体は部分の総和以上の何ものかである」
    「消化のほんとうの意義は...前の持ち主の情報を解体するため消化は行われる」
    「細胞が行っているのは懸命な自転車操業なのだ。エントロピー増大の法則に先行して細胞内からエントロピーをくみ出しているのだ。あえて分解することによってエントロピー=無秩序が秩序の内部に蓄積されるのを防いでいるのである」

  • 読み進めていくうちに震えた。すごくいい。

  • ★図書館だよりNo.73 「読書への羅針盤」
     松本 健作 先生(土木工学科)
     ➣記事を読む https://www.sist.ac.jp/about/facility/lib/letter.html#073

    【所在・貸出状況を見る】https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/93865

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=0001043736

  • 「生物と無生物のあいだ」がとても好きだったのと、タイトルに惹かれたので!

    構成や言葉えらびが本当に素敵で、科学について書かれた文章と思えない、美しい〜〜SDS-PAGEとか、学生の時にやったけどこんなに美しく文章にできるのか…となった。

    スペクターのストーリーは、最近読んだ「科学とオカルト」の議論が思い出された。理論と技術、再現できないことに価値があったこと、とか

    人がものごとを分けてしまうこと、勝手に境界をみつけてしまうこと、なインクラビリ

    (ちょっと表現が違うかもしれないけど)「全体から部分を取り出したときに失われるものは、その流れである」みたいな記述は、なるほど〜と思った!組み合わせや相互作用、生物以外でもこの考え方ってつかえそう

    「分けてもわからないと知りつつ、今日もなお私は世界を分けようとしている。それは世界を認識することの契機がその往還にしかないからである。」
    細谷さんの具体と抽象にも通ずるかな、具体だけ、抽象だけじゃなくてその粒度をコントロールしていくこと

  • 動的平衡のまた違った説明パターン、いろいろなエピソードを交えたバリエーション

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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