世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062880008

感想・レビュー・書評

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  • うーん、なんかイマイチ乗り切れなかった。なんでだろうか? 科学に文学のフレーヴァーがかかっていて好きな感じなんだけど、寺田寅彦を読んだときのような感慨があまりなかったな。

  • 導入部は、情緒的、感傷的なエッセー。それから大学の講義のヒトコマとなり、中盤は、分子生物学とある写真家の作品群を対比させながら「部分」とそれを分ける「境界」について考察してゆく。そして後半は、1980年代のコーネル大学の研究室で上げられためざましい研究成果とその偽装工作の顛末がスリリングに語られている。
    とりとめがないようでいて、内容は盛りだくさん、また、研究に倦んでいると思われる著者の思いも強く伝わってきて、面白い本でした。

  • 面白かった。なるほど、エッセイだったのか。結論は特にないが、科学読み物って感じ。しかし学者が書いているだけあり、随筆形式でも知らないことが多くて学びは多い。門外漢が読むにはこのくらいが読みやすくて良いのかも。物足りなかったが。

  • タイトルは『世界は分けてもわからない』だが、本書の最後には次のような一文がある。
    「世界は分けないことにはわからない。」

    "分ける"とは、物質・現象の要素化、モデルの構築、概念の確立などに対応すると思われる。 たとえば物質を分子や原子や素粒子に分けていったり、生き物を細胞や分子に分けていったり。
    本書はこういった"分ける"ことに疑問を呈しているが(そしてそれは著者以外にも見られる考え方だが)、決して"分ける"ことそのものがだめだと言っているわけではない。
    大切なのは、その過程で捨象されていることに自覚的なこと。現象の一部分を切り取って調べただけで分かった気にならないことだ。
    「世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからないのである。」


    だけど、それまで誰も思いつかなかった上手い"分け方"が見出された時に、科学とか研究というのは発展していくのではないかなあ、とも思うわけだが。

  • 新年1冊目に読み終わった本は「生物と無生物のあいだ」で有名な福岡伸一先生の本書となった。

    入手経路は漫画を売りに行ったブックオフで新書コーナーをぶらついていたら、たまたま目が入ったので100円というとてもリーズナブルな価格も後押し購入をした。

    福岡先生は科学の話を物語のように、小説のように、前知識のない人が読んでもとてもわかりやすく書くのが得意な著者である。今回もその力が遺憾なく発揮されている。
    本書の話の本題は後半のラッカーとスペクターによる1980年代に起きた科学界の大事件に繋がっている。生物における華々しい大発見がたどった衝撃的な運命のストーリーである。

    本書を含め先生の世界観のキーワードは動的平衡である。人間は世界を切って理解するのに長けた(というかせずにはいられない)生き物であるが、実際の世の中はバランスの結果であり、単純に2分はできない。この考え方を改めて知れただけでも本書を読む価値は十二分にあったと思う。

    kp
    ・ランドラフ環(p34)
    ・秩序の構築には膨大なエネルギーが必要であるが、壊すためならわずかな揺らぎがあればありさえすればよい。秩序は壊されることを待っているからである。(p133)
    ・グッドラボラトリープラクティス。実験室における良き習慣。ヒトは常に間違える。忘れる。混乱する。だから、それをしないように注意するのではなく、それが起こらないための方法論を考えよ。あるいはミスが起こった時、その被害が最小限にとどまるような仕組みを考えよ(p186)

  • 飛ばし読みした。生物学の細かい箇所は分からなかったが。

    エピローグから。

    「世界は分けないことにはわからない。しかし、世界は分けてもわからないのである」

    「分けてもわからないと知りつつ、今日もなお私は世界を分けようとしている。それは世界を認識することの契機がその往還にしかないからである」

  • 確かに、世界は 分けてもわからない。
    しかし、分けて 細部を 理解しなくては、わからない。
    問題は 細部に分ける 理解しようとすることを
    自己目的化して しまうことだ。
    専門家 とは 細部を極めることで、成り立つ。

    分ける は 分かるにつながる。

    アルファベットで 一番よく使われるのは E
    アミノ酸の中で 一番多いのは グルタミン酸。
    一番少ないのは トリプトファン。
    おもしろいな そういう語りが。

    分けるって どういうことか 考察する。
    連続性 と 非連続性。
    目の視力をはかる ランドルト環。
    それは 円が かけているのを 目が認識する。

    そして カスケード論 という がんの正体を
    さぐる マークスペクターの 鮮やかな実証方法。
    それを、物語として 組み立てる能力。
    世界が わからないと 書けないですね。

    がん細胞は 糖が 大好きである。
    それは ATP から エネルギーをとるのだが、
    それが 不効率らしい。
    そして、リン酸化する酵素が 怪しい。
    この がんのメカニズムの仮説は 実に興味深い。
     
    仮説 そして 検証。
    仮説を パーフェクトに 実現する手法もある。
    リン と ヨウ素の 微妙な駆け引き。
    ある意味で、インチキをねつ造するにも 才能がいる。

  • 化学の授業は真面目にきいていてもさっぱりわからないけれど、挑戦してみよう…。ということで、分子生物学の教授様が書かれた本を読んでみました。

    しょっぱなから、化学の教科書の最後のほうにあった五角形や六角形の図形がでてきて、ややのけぞりました。が、そんな意味不明な図形もソルビン酸の説明を読んでいるあたりで少し理解できた、気になった!

    私の化学と生物学の知識が中学で止まっているため、天才スペクターさんの実験の描写はさっぱりわからなかったけれども、全編を通して楽しく読めました。

    細胞とアミノ酸ばかりでなく、カルパッチョの絵、コンビニサンドイッチ、CGの錯覚、など文章はあちこちに飛び、すべては「世界は分けてもわからない」に戻ってくる。この構成が出来のよい連作短編ミステリーのようにすばらしかったです。読後、すごいものを読んでしまった感が残る。

    余談
    著者の方が須賀敦子さんの文章を「幾何学的な美」があると評しているのに衝撃を受けて、本棚から「ミラノ 霧の風景」を取り出した。幾何学…幾何学ってなんだ。著者の方の読書人レベルすごいなあ、私はまだそういうのを感じる境地まで達していないです。精進する。

  • 各章のはじめに章ごとに適した文が書かれている。科学者なのに選ぶ文章のセンスがいい。
    スペクターのやったことには戦慄した。
    理系の研究室にいたことがあるので、彼のやったことがどんなことなのかよくわかる。

    世界は分けないと理解できないが、分けても理解できないことがある。

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著者プロフィール

福岡伸一 (ふくおか・しんいち)
生物学者。1959年東京生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部博士研究員、京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授。2013年4月よりロックフェラー大学客員教授としてNYに赴任。サントリー学芸賞を受賞し、ベストセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)、『動的平衡』(木楽舎)ほか、「生命とは何か」をわかりやすく解説した著書多数。ほかに『できそこないの男たち』(光文社新書)、『生命と食』(岩波ブックレット)、『フェルメール 光の王国』(木楽舎)、『せいめいのはなし』(新潮社)、『ルリボシカミキリの青 福岡ハカセができるまで』(文藝春秋)、『福岡ハカセの本棚』(メディアファクトリー)、『生命の逆襲』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『フェルメール 隠された次元』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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