独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
3.92
  • (277)
  • (287)
  • (179)
  • (57)
  • (17)
本棚登録 : 2733
感想 : 345
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062881555

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 本当は星5をつけたいくらいの創造性に富んだ坂口氏のセンセーショナルな本。
    すべての人がひとしく彼の理想を共有せず、書き口が平易ということから上辺だけの批判が予想される(特に年配の方々から)。
    賛否はおいておいて、閉塞感を持つ若者たちは読むとすっきりすることうけあいである。

    私は生死を間近に感じる環境になく、彼の言うような追いつめられて考え始める、というステップを経ずに思考をしている人間であるから、追いつめられていない人間は考えていないのだ、と勝手に否定されている気分になったが、表に出すか出さないかの違いがここにあると思った。

    作者の10年後が楽しみな1作。

  • 「意識生活者』という言葉が気になった。この無意識のシステムの中で目覚めることが創造なのだと。

  • 建てない建築家坂口恭平の『独立国家のつくりかた』

    この著書における坂口恭平の主張を僕なりに言い換えると「既存の社会のシステムをそのまま利用しつつ、自分が輝ける(自由に生きられる)レイヤーを見つける」ということになるだろう。
    この本で書かれていることや根本にある思想には、非常に「建築学徒」っぽさがにじみ出ており、旧建築学徒の僕にとっては理解しやすく、また共感できる部分も多かった。
    この著作において坂口恭平は「肩書がない」(もしくはたくさんある)と何度か書いているが、言葉のチョイスや思考方法は明らかに建築学徒であり、僕はこの人にベストな肩書は「建てない建築家」だと思った。(「建てない建築家」という言葉自体は自身が使っている)

    さて、この本の主たる内容は先ほど書いたが、もっと平たく言うと
    「この生きにくい日本社会の常識に別に従わなくてもいいんじゃね?っていうか自分で考えて決めていった方が幸せじゃね?」
    ってことである。
    ものの見方を常識に頼るのではなく、自分自身のものの見方を定義していこうよということ。
    このあたりが非常に建築学徒らしい。

    大学の設計課題で住宅を設計する。
    そのとき「理想のマイホーム」を設計したとすると、10/100点くらい。
    まず設計を始める前に、そもそも「住宅とは何か?」について自分なりに答えを見つけなくてはならない。
    そのためには「住むとはどういうことか」考える必要があるかもしれないし、もっと言えば「この課題で本当に住宅を建てる必要があるのか?」ということを考えなくてはいけないかもしれない。
    住宅を設計しろという課題なのに、である。
    こんな感じで、世の中にある「3LDK」だとか、そういった「住宅の常識」から思考を開放しないと設計課題はこなせない。
    当時、優等生だった僕は目から鱗だった。
    建築をやめた今でもこの思考方法に気づかせてくれた建築学科には感謝している。

    こんな課題を日々しているので、建築学科にはいろんな人がいた。
    優等生だった僕は、高校時代から「浪人せずに大学に入り、留年なんてせずに大手企業に就職する」のが「良い道」であると疑わなかった。
    でも周りには、「〇〇の事務所(海外有名建築家)で働いてみたいから、1年休学して半年バイトしてお金貯めて、半年向こう行って働くわ!」とかいって留年するヤツが普通にいる。
    その他にも設計課題を「納得のいく設計ができなかったので提出しません」といういうヤツもいる。
    これはテストで「100点取れないから白紙で出す」みたいなもんで優等生の僕には信じられなかった。
    「出さなきゃ0点で成績下がっちゃうじゃん!」
    とかこっちは思っても、成績なんてどうでもいいんだもんね。大切なのは「自分が納得行く設計ができるかどうか」
    こんな経験から、本来の「学び」ってそういうもんだよな、ということに僕も気づけた。
    「学び」いい成績を取るためにするのではない。
    自分のためにするものであって、極端に言えば別に教授に見てもらわなくたっていいわけである。
    そして、そういう人は「納得のいく設計」が出来たときはすごい。「課題をこなす」(単位を取ると言い換えてもいいかもしれない)人では全く太刀打ち出来ないものを作る。

    こういった「既存のレイヤー」(平たく言うとものの見方)ではなくて自分自身に価値基準のある「自分のレイヤー」で生きている人のほうが豊かである。
    そしてこれは著書で坂口恭平が言っているように「この社会システムの中で可能」なのである。
    既存の社会システムを改革する必要はない。「既存のレイヤーに乗っかってないとヤバイ」と勝手に思い込んでいるだけで。

    住宅を設計する前に「住宅とは何か?」を考えなければならなかったように、日々生きる前に自分にとっての「生きるとは何か?」をもっと真剣に考えないといけないと著者は主張する。

    この本に書かれている坂口恭平の具体的な行動(就職なんてしない。いざとなったら0円で河川敷に住めば良い。などなど)に共感できるかどうかは問題ではない。
    それはあくまでも坂口恭平が「問い」に対して考えた「答え」の部分であり、著書で本人が主張しているように大切なのは「問い」の部分である。

    「既存のレイヤー」に対して常にゼロベースで思考し「自分のレイヤー」を作る作業をする。

    それがこの本に書かれているエッセンスであり、「モバイルハウス」や「独立国家」や「態度経済」などは枝葉の問題であると思う。

    そして何よりも面白いのが、先に述べているように、坂口恭平自身は「建築学徒的思考方法」でレイヤーを作っているということ。
    つまり、「一切合切の常識から離れフラットに考える」と言ってもその考えるベースは自分の頭しかないわけで、自分がこれまで学んできたことからしか考えられないということ。思考は自分の脳に制限される。
    これはどんな発想の天才や偉大な哲学者でも同じで人は「自分がこれまで学んできたことからしか考えられない」のである。
    このことを切実に受け止められると学ぶことがどれだけ重要か理解できると思う。

    それはさておき、否が応でもまずは既存のレイヤーに乗っかってしまう今の社会で別のレイヤーで生きていくことが出来るということに気づくだけでも一読の価値はある。
    特に高校生や大学生は読んで損はないと思う。

  • 著者のシリーズは何冊かありますが、この書籍もそれに倣った一冊です。持家を当たり前と思う昨今の風潮に疑問を投げかける所は、それを当たり前と思っている流れを考えさせられます。

  • 態度経済の話はとても納得のできるものでした。

  • [27][131126]<m市 匿名的な無意識の社会ではなく、意識化したレイヤーを選び取っていくという話はおもしろい。本人も自分の活動をおおまかに言えば芸術としてカテゴライズしてるみたいだし、一つの家族がそういう枠組みで暮らしていけるという実験になっていると思う。ただ、基本的に、日本という国を構成している大多数は彼と同じような生き方を(少なくとも同じ行動をとることを)選ばない、ということを前提として成り立っている話だ(彼がそういうレイヤーを選んで動いている、と言ってもいい)。その立ち位置から、主体も客体もそれこそ無数の匿名である政治や福祉の分野にまで話を広げていくのはちょっと矛盾があると思う。

  • タイトルに惹かれた。自分の視点形成、思考の重要性を考えさえてくれる書籍。日々のちょっとした変化を求める人にも「日常」を捉える新たな視点を与えてくれる。

  • 生きるためには良本だけど、生きる糧にはなりそうにない。

  • 坂口恭平さんは本当に面白い方だと思った。彼の「常識を疑い、常識にとらわれない生き方」にはかなり共感した。

  • 坂口総理の本1ヶ月かかってやっと読了。
    読みやすく一気に読めるけど、所々意味が理解できず止まってしまった。
    感覚的には賛成。
    自分の携帯番号を公開し命の電話を私設したり、福島の子供たちを私財でサマーキャンプに招待したり、その他も行動力は凄い。
    Twitter読んでもYouTube見てもカリスマ性もある。
    常識とされている事を自分の頭で考える事なんかは激しく同意。

    でも0円特区は共産主義と違って本当に上手くいくのか?
    坂口総理を見ていたら、なんだただの天才かって思うところもあり
    すんなり受け入れる事ができない所も多々あり。

    子供の頃新宮町に住んでいた事に親近感もあり否定はしたくない。

    しばらくは要観察。

著者プロフィール

1978年、熊本県生まれ。料理家、作家、建築家、音楽家、画家。2001年、
早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年、路上生活者の住居を収めた写真
集『0円ハウス』を刊行。2008年、それを元にした『TOKYO 0円ハウス 0円生
活』で文筆家デビュー。2014年『徘徊タクシー』で三島由紀夫賞候補、『幻
年時代』で第35回熊日出版文化賞、2016年『家族の哲学』で第57回熊日文学
賞を受賞。著書に『cook』『自分の薬をつくる』『お金の学校』『ゼロから
始める都市型狩猟採集生活』『現実宿り』『よみぐすり』など。

「2022年 『中学生のためのテストの段取り講座』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂口恭平の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村上 春樹
國分 功一郎
サン=テグジュペ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×