野心のすすめ (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062882019

感想・レビュー・書評

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  • 前半は筆者の野心家としての半生を描いており、後半は女性ならではの視点で野心について語っている。

    野心を持つことはもちろん悪いことではないと思う。
    しかし、それを実現できるのは、運、環境、タイミング、健康などの、自分ではどうにもならない要素が上手く噛み合った人にしか訪れないと思う。
    特に、筆者も指摘しているように、現代ではこれらの要素が噛み合ったとしても、努力が報われない人の方が多い時代である。
    うつ病患者が増加し続けているのは、自分が思い描いていた理想と、それが叶わなくなってしまった現実とのギャップが原因の一つのような気がする。
    だからこそ、自由で柔軟な発想を持ち、自分なりに満足できる生き方を私は選びたい。

    また、筆者は貪欲過ぎるし、競争社会に勝ち続けてきた立場だから色々と言及できるのだと思う。
    例えば、超美人が市役所の人と結婚して普通の暮らしをしていることがそんなに悪いのか。
    人それぞれの価値観を否定して、自分の野心家の生き方が正しいとでも言いたいのだろうか。
    欲望の大食漢ならば、さらにそれを肥大化させるのではなく、ダイエットをすることで身も心も欲望もスリムにするという考え方はできないものだろうか。

  • 自分がどういう人間として生きたいかを真剣に考える、最後のひと押しをしてくれた一冊。
    前輪の野心と後輪の努力がうまく回りはじめ、神様が「合格!」と認めてくれたとき、今度は人智を越えたところで、運という大車輪が回転し始める。
    野心を持って生きることについて、理解しやすい指南書です。

    本書のテーマとは別のところで、
    p151「エッセイは、何かあるとすぐにパッと反応して、花火を上げて、花を開かせる反射神経が必要です。しかし、作家の場合は、開花時期を見計らいながらずっと土壌に入れたまま、人には見せずに隠しておく、ねっとりした暗さがつきまとう。」
    という、エッセイと小説を書くうえでの心理状況の対比の記述が興味深かった。

    というのは、「この人は、エッセイストとしては、こういうカッコいいことを言わずにはいられないんだなぁ」と思ったから(笑)
    クールに澄ましたポーズを取っている林真理子が目に浮かんでおもしろかったから。
    カッコいいじゃないですか。
    いかにも、野心を飼って生きてきた女です。

    第三章までは、筆者の人生にもとづいた強力な説得力がある野心を持つすすめ。
    しかし、第四章五章は、上記のエッセイストとしてのカッコつけが全面に押し出されてきて、正直言うとウザイです(笑)
    私は、林真理子さんの全盛期時代を知る世代ではないので、彼女へのバッシングがどれほどのものであったかは知りませんが、叩かれたとしたらこういうところだったんだろうなぁ、と思いました(笑)

    でも、私は、この人、この女性、好きです。
    本人はバリバリクールなつもりなのかもしれませんが、一生クールになりきれないであろう泥臭さが、エネルギーを感じさせる。(前者含めて、この人の売り、戦略なんだろうなぁと思います笑)

    優しくない、自分のことばかりに必死で、若手を成長させる器量のないオジサンオバサンばかりになってしまったこの日本で、若者に、女に、「青年よ、女よ、大志を抱け」と真っ直ぐに言ってくれるとてもカッコいいオバサンだと思いました。

    p101の自画自賛に、林真理子さんが成功者である理由が詰まっている気がします。
    「私は、人一倍の野心と人の二倍以上の意地悪さは持っていますが、いまも昔も狡猾さとだけは縁遠い人間です。」

    私が「カッコいい」と直球で感じる成功者たちは、いつもみんな、心の美しさを最後まで失くせなかったんだろうな、と思わせる方たちです。
    「人間」を感じさせる。「人生への愛」を感じさせる。その人に関する何かしらに触れると、こちらの心も踊る。

    この人も、ぜったい、いい人なんだろうなぁ。

  • 一流と付き合うと楽しい
    新規巻き返し
    隙間時間の活用
    クヨクヨを翌日に引きずらない
    強運の人の側にいる

  • 作家・林真理子はいかにして無理と言われた願望を叶えてきたのか。中学時代はいじめられっ子、その後もずっと怠け者。就職試験に全敗し、電気コタツで震えたどん底時代を経て、鮮烈なデビューとその後のバッシングを振り返り、「低め安定」の世の中にあえて“野心”の必要性と夢を実現させるヒントを説く。

    “野心”と言うと腹黒くてあつかましく、身の程知らずといったマイナスのイメージがあるが、本書では「もっと価値ある人間になりたい」と願う、とても健全で真っ当な心を示している。とはいっても、本書を読む限り著者のデビュー直後のブレイクに対しては賛否両論あったことが伺える。著者のことを“野心”のマイナスイメージと同じようにとらえる人間も多かったと思う。しかし著者自身は作家としてとても真摯に作品と向き合っており、どの作品も自分に挑戦を課し、勉強して知識を充分に自分のものにしてから作品に取り組んでいるそうだ。デビュー前のどん底の時代から這い上がってきたパワーは並大抵のものではなく、“野心”以外の何物でもないだろう。

    著者の成功の理由は野心が人より何倍も強く、また運に恵まれていたためかもしれないが、著者はそれだけではないと説く。
    「『今のままじゃだめだ。もっと成功したい』と願う野心は、自分が成長していくための原動力となりますが、一方で、その野心に見合った努力が必要になります。野心が車の『前輪』だとすると、努力は『後輪』です。前輪と後輪のどちらかだけでは車は進んで行けません。野心と努力、両方のバランスがうまく取れて進んでいるときこそ、健全な野心といえるのです。」
    ただただ野心を持てと煽るのではなく、自身の経験から、成功したければ自ら行動して努力することも必要だという点も著者は強調しており、道理であると共感した。著者は信じられないような経歴の持ち主だが、本書の内容としては真っ当なことを述べていると思う。私自身、もっと野心を燃やして努力を積み重ねて、目標に向かっていこうと決意させてくれる1冊だった。

  • ふらりと入った書店でランキング1位だったので、購入。
    林さんの本は私がお姉さんだった頃は結構読んだけど、
    エッセイに漂うバブル臭が時代にそぐわない気がして、
    しばらく遠ざかっていた。
    草食男子が増殖中の今の時代、
    そうか足りないのは野心なのかと、いまさら納得。
    高みを目指し、ガツガツしていた20代。
    結婚して自然体、ナチュラルなんて言葉にうっとりした30代。
    そして、また野望を持った40代の今。
    林さんの言葉に妙に納得して、大いに刺激されたのでした。

  • 金スマだったかな?林真理子さん本人が登場し、この本に書かれている内容を再現したドラマにご本人がコメントするという番組を見てから読了。

    常々この方のエッセイ「私にはなじまない」と思いつつ小説は
    「抜群に上手だ、すごい」と感じるので、嫌がりながらどんどん読むみたいなおかしなお付き合いをしていましたが、この本を読んで、どうして自分が
    この人が好きだと思えないのに小説に魅了されているのかよくわかりました。
    はっきりしている、というか徹底している。若い頃はその価値観が全く
    理解できませんでしたが、年齢を経た今なら彼女の言ってることが
    とっても良くわかります。スカッとしました。

    若い人に読んでほしいのでしょうね。でも中年のおばちゃんでも
    十分に勇気付けられる一冊でした。
    本当に素晴らしい野心をお持ち。心から尊敬しました。

    • vilureefさん
      こんにちは。

      話題の本ですよね~。
      私も読みたいのですが現在図書館予約中です。

      金スマ、絶対見ようとおもいつつ見逃しました(^...
      こんにちは。

      話題の本ですよね~。
      私も読みたいのですが現在図書館予約中です。

      金スマ、絶対見ようとおもいつつ見逃しました(^_^;)
      見たかったな~。

      林さんのすごさは俗っぽさ丸出しの所かなと思います。
      「ビッグダディ」大好きとか言っちゃったり(笑)
      決して好きなタイプの人ではないのに、なぜか気になってしまう存在です。
      2013/07/16
    • ruko-uさん
      vilureefさん、こんにちは。コメントありがとうございます!

      金スマ録画で見ました。vilureefさんのコメント読みまして「ホントそ...
      vilureefさん、こんにちは。コメントありがとうございます!

      金スマ録画で見ました。vilureefさんのコメント読みまして「ホントその通り!」と膝を打つ思い。
      金スマでも「私の本、美奈子に売り上げ負けてるんですよ」などとおっしゃっておりました(笑)
      微妙に名前もかぶっていて意識されている模様。呼び捨てがまた丸出し感ありありで(笑)

      人は嫌だなぁ~と思いつつも俗なものが気になってしまい、目が行ってしまうものですよね。

      vilureefさんの読後感想も知りたいものです。早く予約順が回ってくるといいですね。
      2013/07/17
  • 30代のころ、正直、林真理子さんは好きではなく苦手な女性だった。
    林真理子さんを深く知ることなく、生意気という印象がが先行していたからだろう。

    そして、その頃の私は、専業主婦で、育児まっただ中!!
    妻と母としての存在価値はあるものの。
    自分というものがなかったような気がする。

    ところが、ちょっとしたきっかけから、
    パートに出るようになって、
    人生の巻き返しが始まるのである。

    まだまだ、林真理子さんに比べれば赤ちゃんほどの
    野心と努力だけれど。。今までになかった前向きさが
    50歳代になった今、働く女性として存在している。

    若いころより、ずっとずっと、多忙で、仕事と家庭の両立が
    できないなんて思いこんでいたころの自分が笑えてくる!!

    息子よ!娘よ!
    できないなんて、やる前からあきらめないで!!
    自分の力をみくびらないで、野心を持ちなさい!!
    でも、努力も忘れないで!!

    今回は、帰省した社会人3年目の娘が
    40代後半の女性幹部の上司から読みなさいと
    借りた本なのとバックから取り出したのが
    「野心のすすめ」
    母も読みたかったのと、借りて読みました。
    きっと素敵な上司に育てていただいているんだと
    嬉しくなりました。

  • 高望みの野心を持ちたい。野心を持って、歯を食いしばってでも全力で頑張ってみたいことに、気づかせてくれる1冊。

  • 林真理子の学生時代からの野心の源を、生い立ちや時代背景を踏まえながら振り返っていくエッセイ。よくやってきたなぁと感心します。

    時代のせいとは言いたくないけど、世の中も豊かになりすぎて逆に断捨離的なマインドがもてはやされ物欲もなくなり、結婚しなくてもOKな価値観も認められ、「野心」を追い求めるというより「ありのまま」でいたい。
    すっかり野心がなくなってしまった私。40代、50代にもなってユニクロを愛用しているのは惨めだと言う真理子。うっ...だめかなぁ、ユニクロ。安達祐実もおしゃれに着こなしてたよ...?

    野心を持つか持たないかは価値観なので、持たなくても全然大丈夫だと思いますが、少なくても真理子の生き方や価値観に私は憧れを抱いている部分もあるし、この本を読んでちょっぴし元気をもらえました。

    それにしても、巻末の真理子、綺麗になってますね。本書には若かりしころの真理子の写真が見られますが、「ずどん!」って感じで迫力と気の強さが滲み出て、とはいえこちらの時代の姿に見慣れていたのでびっくり。あるいみ年齢の重ね方に成功したんだなーと思いました。ちなみに山田邦子の若い頃の写真もあって今と全然違いました、、、。

  • 最後の筆者からの力強いメッセージに感動しました。
    これを読んですごい共感できるところが多いあたり、そろそろ自分も野心やら向上心やら自己顕示欲やらが強い部類の人間であると認めて、気持ちよく生きていくためにはそんな自分と上手く付き合っていく方法を模索しなくてはいけないなと、気がつくことができました。

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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