新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 71
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062884617

作品紹介・あらすじ

かつて日本には、「一億総中流」といわれた時代がありました。高度成長の恩恵で、日本は国民のほとんどが豊かな暮らしを送る格差の小さい社会だとみなされていました。しかし、それも今や昔。最新の社会調査によれば1980年前後、新自由主義の台頭とともに始まった格差拡大は、いまやどのような「神話」によっても糊塗できない厳然たる事実となり、ついにはその「負の遺産」は世代を超えて固定化し、日本社会は「階級社会」へ変貌を遂げたのです。
 900万人を超える、非正規労働者から成る階級以下の階層(アンダークラス)が誕生。男性は人口の3割が貧困から家庭を持つことができず、またひとり親世帯(約9割が母子世帯)に限った貧困率は50・8%にも達しています。日本にはすでに、膨大な貧困層が形成されているのです。
 人々はこうした格差の存在をはっきりと感じ、豊かな人々は豊かさを、貧しい人々は貧しさをそれぞれに自覚しながら日々を送っています。現在は「そこそこ上」の生活を享受できている中間層も、現在の地位を維持するのさえも難しく、その子供は「階層転落」の脅威に常にさらされている。この40年間の政府の無策により、現代日本は、金持ち以外には非常に生きるのが困難な、恐るべき社会になったのです。
 官庁等の統計の他、さまざまな社会調査データ、なかでもSSM(「社会階層と社会移動全国調査」)調査データと、2016年首都圏調査データを中心にしたデータを基に、衝撃の現実が暴き出されてゆきます。

感想・レビュー・書評

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  • 2018.2.6 amazon

  • 自分の階級を確認・・・と。

  • 階級ごとの説明が詳しくて、わかりやすい。
    自分はここの階級だろうかと想像して読み進めたが、異なる階級の人とは普段暮らしていて接点がないものだと改めて自覚できた。
    階級ごとの性別役割・軍備・中国韓国・外国人などへの考え方の違いも、こんなに大きいのかと驚いた。自民党のコア支持層のある種の安定感は、驚くものがある。

    以外、備忘録的にまとめ。具体的でわかりやすい指摘ばかりだった。

    ・かつての仮説ともいえた、「労働者階級は格差是正を求め、平和を愛し、軍備を否定し、海外侵略の責任を認め、かつての侵略先の人々と友好的な関係を築いていく」という説は、いまは現実から離れている。

    ・労働者階級は、新中間階級、正規労働者、アンダークラスに分裂している。

    ・これらの層は格差を認識しているが、自己責任論を認めており、新中間階級と正規労働者は所得再分配政策を支持せず、アンダークラスに対して敵対的になっている。

    ・アンダークラスは、古典的な労働者階級と異なり、格差への不満と格差縮小の要求を持っているものの、平和への要求ではなく排外主義と結びつきやすくなっており、「誤爆」状態である。

    ★★アンダークラス、パート主婦、専業主婦、旧中間階級、そして新中間階級と正規労働者のなかのリベラル派を、格差社会の克服という一点で結集する政治勢力が求められている。

    ・自民党の支持は強いが、排外主義と軍備重視に凝り固まった人に偏っているという弱点はある。

  • ◆7/17オンライン企画「食のミライ」で紹介されています。
    https://www.youtube.com/watch?v=jCW1km6G9LY
    本の詳細
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000210947

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001126038

  • 配置場所:2F新書書架
    請求記号:361.8||H 38
    資料ID:C0038559

  • 開発目標10:人や国の不平等をなくそう
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50093269

  • データやファクトを重視したい方にはおすすめ。やや冗長かつ重箱の隅をつつくような分析が多いため、論旨がぼやけてしまっているが、数字に基づいた議論がなされており、ともすれば感覚的、政治的な意見に傾斜しがちなテーマをうまく扱っている。

  • 現代日本を
    ・資本家階級
    ・親中間階級
    ・労働者階級
    ・旧中間階級(自営業者・家族従事者)
    と国民の階層を分けて推移や特徴を分析し、
    更に、上記階級にたどり着かない「アンダークラス」があると説く。
    「アンダークラス」は労働者階級の中でも、主に非正規雇用の人が中心。
    そこには、労働者階級の中でも対立がある。(労働者階級の中でも、正規雇用の給与は歴史的にはあがっているらしい)

    階級の分析においても、男性は割とダイレクトに所属する階級が世代間移動するらししのだけれど、
    女性は配偶者の階級と自身の階級のハイブリッドによって左右される、というのも印象的だった。

    階級=格差に対しても、対立の構図が生まれている。
    資本家階級=再配分に否定的=自己責任論者(=そして自民党支持者)という傾向はわかりやすいが、
    中間階級の層や、労働者階級の正規雇用の層がアンダークラスへ敵対的というのも示唆に富んでいると思う。

    自分自身は、所得再配分は是とするし格差は縮小すべきと考えている。
    ただ実際に所得再配分が強化されたときに、TAKE側ではなくGIVE側になった時、
    どう思うのかは自信が無い。
    個人的には日本人の多くが”自分は中間”とか”裕福ではない”と思っているところもあるんじゃないだろうか。

    ーーーーーーーーーーーー
    階級構造は複雑化している。単一のものと想定されていた被雇用者=労働者階級はかなり以前から新中間階級と労働者階級へと分裂していたし、いまや労働者階級は正規労働者とアンダークラスへと分裂している。(略)これらの三つの階級は、現代ん本では格差が拡大しており、また貧困層が増大しているという事実をよく知っており、事実認識ではほぼ一致している。しかし、だからといってこれら三つの階級が、格差の是正に積極的というわけではない。P245

    資本主義経済のメインストリームに位置する三つの階級(※旧中間階級を除くもの)は、新中間階級は強固に、資本家階級と正規労働者はやや控えめにという違いはあっても、所得再配分に否定的な傾向が強い。これに対してその他の階級・グループ-パート主婦、専業主婦、旧中間階級、無職の人々は、アンダークラスの人々と同じ、あるいは大差ないほどに、所得再配分を支持する傾向がある。また格差拡大の現実を認識することの効果は大きい、したがって格差拡大の客観的事実とその弊害に対する理解を広めていけば、所得再配分への支持を広げていくことができるはずである。また自己責任論は、所得再配分への合意形成の妨げになっている。したがってこれに対して適切な反論を加えていくことも必要である。P256-257

  • 各階層の分断が進んでいる現状を各階層の認識調査を用いて説明しているので、わかりやすい。分断が進んで貧困層が見えずらくなっているのがよく分かる。
    ただ、格差解消に向けた提案がなされている(ベーシックインカム、資産税など導入、固定資産税増税など)が、政策に興味を示すのは貧困層の人々ではないので、支持を得にくく、実現困難と考える。
    個人的にも支持しない。

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著者プロフィール

橋本 健二(はしもと・けんじ):1959年生まれ。早稲田大学人間科学学術院教授。専門、社会学。

「2023年 『階級とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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