世界の果てのこどもたち (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062939027

感想・レビュー・書評

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  • 戦争のことを、3人の違う立場の人生で描かれていて入り込めました。特に在日朝鮮人の方の立場がとても勉強になりました。
    満洲へ行った開拓団の日本人の人生、原爆を投下され両親を亡くした孤児の人生、日本によって翻弄された朝鮮人の人生。
    私が小学生の時、戦争のことを学びましたが、こういう視点で勉強したかったです。
    2度と同じ過ちを繰り返さない為に、学校ではこのような本を読んだ方がいいと思いました。

  • 幼い頃、ひとつのおにぎりを3人で分け合った、やさしい記憶。
    その記憶が再会へと導く。

    少女たちがいとおしく、本を抱きしめた。

  • ◆一つのおむすびを三人で分け合った思い出◆
    戦時下の満洲で出会い仲よくなった三人の少女。戦中~戦後の三人の歩みを辿りながら話は進みます。中国残留孤児、戦災孤児、在日朝鮮人について知っているようで何も知らなかったのだと愕然とするほど、その人生はあまりにも過酷なものでした。つらい過去を背負ってしまっても、幼い頃にわずかしかない食べ物を自分に分け与えてくれた親や友達がいた、愛されていたという記憶があれば、胸を張って生きていけるのだと希望を感じます。

  • 多くの方に読んで頂きたい。
    オススメの本はと聞かれたら、この本をオススメしたいです。

  • 夜中に読み出して止まらず朝になってしまった。中国東北部の地図を見ながら読んだ。山崎豊子の「大地の子」を思い出した。読後は長編映画を見終わったような疲労感はあるものの、主人公3人の逞しさと切なさと愛しさが胸に残る。

  • この作者、初読み。裏表紙に2016年本屋大賞第3位とあったけれど、それ以外はどういう本かも知らずに読み始める。

    開拓団として満州に渡り、敗戦で日本へ逃げ帰る途中、攫われて中国人夫婦に買われた珠子。
    横浜での何不自由ない生活から空襲で父母を亡くし養護施設に預けられる茉莉。
    朝鮮半島で生まれて満州から日本へと流れ、終戦後もそのまま日本で暮らし続ける美子。
    生まれも育ちも異なる3人が、一瞬だけ満州で交わり、その時の記憶を胸にその後の苛烈な人生を生き抜く。

    大きな歴史の流れを辿りながら3人の生きた様を語る話は少し駆け足の感はあるが、それでも当時の過酷な状況が余さず描かれ、こうした人々の人生の上に今日があることが良く知れた。
    中国残留孤児となった珠子や在日朝鮮人と呼ばれる美子を見れば、“○○人”とは、ということについて改めて考えさせられた。

  • 珠子、茉莉、美子、それぞれが戦中〜戦後で、現代では考えられないような苦難を味わう。そんな中で3人を助けたのは、苦難の中で優しくしてくれた人たちの思い出だった。優しくしてもらえた記憶は、人が辛いときにも歩みつづける支えになるし、また他の人にも優しくなることができる。そんなテーマがこの物語には一貫して描かれている気がした。

    実際にはそんなのは綺麗事で、辛い思い出の方がトラウマや恨みとして残ることの方が多いのかもしれない。今でも関連国間の問題は燻り続けているから、実際にそうなのだろう。

    でも他人から受けた優しさの方を、また違う他人、次の世代にしていくことを意識的にしていきたいと思う。親からもらった愛情は自分の子供に与えていきたい。その子がまた他の誰かに優しくできるように願いを込めて。。
    この先辛い思い出を抱えることになっても、優しさを連鎖させていくことができるようになりたいな。

  • これは良かった。
    初めて行きの電車で読み耽って降りそびれたくらい。(暑い中走って疲れたけど…)
    珠ちゃんとお母さんの感動の再会シーンだったから仕方ないよね。
    言葉も名前も顔も忘れてしまっても、やっぱり分かるものなんだね、そりゃそうだよね。

    日本で差別されていたよっちゃんと、中国で差別されたたまちゃんと、お嬢様だったのに家族を失い、施設暮らしだった茉莉ちゃんと。
    もしかして戦争がなかったら出会っていなかった3人。でも、戦争のせいで大変すぎる目にあった3人。
    八重ちゃんや武や、周りのいい人もいっぱい。でも名もない心無い人たちもやっぱりいっぱい。

    たまちゃん、日本に帰って来ないほうが良かったのかもとも思ったけれど、みんなに会えて、それが一番だよね、きっと。

  • 真ん中過ぎまで、とても読むのが辛い本であった。
    3人の少女が主人公だけど、太平洋戦争下に満州へ行く子と、朝鮮人の子と、横浜育ちのお嬢様って、もう不穏な要素しかない設定。
    特に、横浜で空襲に遭う時とその後、そして満州開拓団からの引き上げのくだりは本当に読むのが辛かった。

    中盤を過ぎて少女たちが成長するに連れて彼女たちの人生が少しずつ上向いていき、ようやく安心して読み進められるようになった。

    それでも満州からの引き上げ中に誘拐され、中国人の夫婦に買われてその子供として育てられた珠子の人生は、彼女が中国残留日本人孤児として故郷に帰ってからも辛いものだった。
    こういう人がきっとたくさんいたのだろう。
    とにかく言葉が分からないというのはものすごいハンデになると感じた。
    帰らない方が幸せだったのではとも思うし、そういう選択をした人も多かったろう。
    それでも、帰ってきたから、生涯の友を得た。

    とにもかくにも、最期はハッピーエンドで良かった。

  • 満州孤児、戦後、3人の女性の生き方が書かれている。
    満州からの引き上げの厳しさ、生存率の低さは教科書で見たことがあったが、ここまで生々しくせまってくる小説は初めてだった。

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著者プロフィール

徳島県に生まれ高知県で育つ。高校在学中に坊っちゃん文学賞を受賞。筑波大学で民俗学を学ぶ。創作、昔話を再話し語る。昔話集に『女の子の昔話 日本につたわるとっておきのおはなし』『ちゃあちゃんのむかしばなし』(産経児童出版文化賞JR賞)、絵本に「女の子の昔話えほん」シリーズ、『つるかめつるかめ』など。小説に『きみはいい子』(坪田譲治文学賞)『わたしをみつけて』『世界の果てのこどもたち』『神の島のこどもたち』などがある。

「2023年 『世界の女の子の昔話』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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