桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

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著者 : 朝井リョウ
  • 集英社 (2012年4月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087468175

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桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 上。
    制服の着こなし。体育のサッカー。くしゃくしゃの茶髪。ぴかぴかの爪。ピンク色をした唇。
    かっこよくて目立つ男の子。ピンクが似合う女の子。

    それは、上だから与えられる特権なのかな?
    うーん、やっぱ特権を授かって生きている子が上になるんだろうね。
    努力しても追いつけない。これって一種の才能だよね。

    上。
    確立された格差社会で三年間、上を貫き通す。
    不安定な足もとに広がるのは、きみたちが嘲笑する下の世界。
    ほんの数ミリ目測を誤れば、滑り落ちる静寂な底なし沼。
    自分を守るために築く脆弱な関係は、繊細で危ういガラス細工のようだね。

    でもまだ、きみたちは気づいていない。

    下。
    目立たないように。失敗しないように。迷惑かけないように。
    バカにした笑い声。存在を無視された扱い。

    そんなもの気づかない振りをする。
    それが、きみ自身が選んで決めた学校という逃げ場のない世界での生き方。

    下。
    ねぇ。自ら下の立場を決めたきみたちには、描きたい世界があるんだよね。
    なかなか真似できないよ。
    それは誰にもジャマ出来ない、きみたちの特権。
    開けば風が生まれる扉を持っているきみたちは、ひかりなんだ。
    ひかりの前では、上のかっこよさもくすんで見える。

    気づくのは、まだまだ先のことかもしれないけどね。

  • スクールカースト。
    17歳の傲慢さと未熟さ。
    人間関係の脆さと自意識過剰。

    実果のエピソードって映画でもあったかな?
    記憶にない。

    目立つ容姿、スポーツの成績、属するグループ、恋人のルックス、経験の有無。華やかなグループは勝ち組で傲慢、地味グループはオタクとか…学校を離れてもそういう見えない階級は存在する。

    あの空気感、日常の切り取り方はさすが若い感性だなぁ。

  • まずタイトルが秀逸。さらに話題の桐島本人がでてこないのがおもしろい。取り上げられるのは桐島と親しかったり接点がなかったり、外の人である。

    この物語は(失礼な言い方かもしれないけれど)若いからこそかけたのかなとも思う。それなりの年の人が描く高校生って憧れとか上からみてる感じとかが投影されてしまうけれどそれがない。勿論青春群像だからある程度の美化やデフォルメはあるけれど嘘臭くない。
    ほとんどの高校生にとって学校は世界そのもので上とか下とか常に立ち位置を気にしてて、無難に傷付かない方法を探している。大人は彼らに白いキャンバスだ、好きな絵の具で好きな絵が描けるんだ、なんていうけれど未来に夢を描きながらも彼らは自身に絶望している。光をみながら闇に埋もれる。きっとそうだ。朝井リョウはそれをわかっている。
    悪くない。とりあえず他の作品も読んでみようと思った。

    そしてーー、その狭い世界を出たとき、彼らが上とか下とかそんなものを越えた価値あるものを見つけられますように。

  • ロンドンからの電車で。
    パリとはまた違う雰囲気が楽しい。

    映画化もされた作品ということで、これをどう一本の流れにまとめたのか気になる・・・。
    桐島の存在ははっきりしているものの、彼自身は全く出ずに、彼に何らかの関わりを受ける数人の物語。

    学生の頃ってこんな風だったなぁと懐かしく思う。
    朝井君の世代とはもちろん違うのだけど、それでもあの特別な環境は同じ空気なんだな。

    目立つグループとか、自分の立ち位置がどうとか、男子が女子がどうとか、いつからそんなこと考えなくなったんだろう。
    ふと学生時代を思い出しながら、あの頃は若かったなぁという淡い気持ちと共に読了。

    しかし、女性の視点で上手に書くなぁ。
    女性作家の書かれるような、いかにも女性らしい難しい表現は少ないにしろ、若い男がここまで書けるのは驚き。

  • この小説を読んで、自分はいつから「ランク付け」の環境の中で、生活していたのだろうかと考えた。

    少しでも「上」の位置にいたい。今の位置をキープしていたい。「下」にはなりたくない。

    ずる賢くて、残酷だけれど、自分の周りにも、確かに存在していた環境。

    好きなものは好き。その考え方は素敵だし、そうだよなとも思う。
    でも、頭では分かっていても、集団の圧力の前では、やっぱり、そんなのきれいごとじゃないかと思ってしまった自分もいる。

    だけど、「ダサい」とか「ダサくない」「目立つ」とか「目立たない」そういう相手の表面に隠れている、相手のひかりが溢れている内面を見つけ、相手の本質と接することができる人でありたいなと思いました。

  • 40歳のおっさんである自分には、10代の青春群像はあまりにもまぶしいというか気恥かしくて、終始そわそわしながら先ほど読了しました。
    一言いいでしょうか。
    うまい。
    朝井リョウくんはうまいです。微細な心の動きを掬い取るのがとにかくうまくて舌を巻きます。情景描写も実に繊細で、そっと対象に触れるように、人物が、学校が、体育館が、町並みが描かれます。え? これ19歳の時に書いたんでしょ? 栴檀は双葉より芳しなんぞと言いますが、ほんと、そう思いました。
    たとえば。
    「部活が終わったあとは、体が熱を持っている。冷えていく町並みに体温だけがうまく溶けこまない。どんどん幕を下ろしていく今日の中で、体の中に残っている熱が置いてけぼりになっている」(P32)
    「詩織の髪の毛はさらさらさらさら流れる小川みたい。太陽が揺れるたびにひかりがさっと髪の毛を降りていって、水みたいにひらひらひかる」(P55)
    「自分の考えたものを人に見られるときって、初めてまゆ毛を剃った日の百倍くらい恥ずかしくて、なんだか余計なことまで喋ってしまったりする」(P119)
    「ふうん、そっか。と私は返事をした。たっぷりと伸ばしたはちみつのように、細い細い細い声になってしまった」(P173)
    挙げればキリがないので以上。
    最近、「スクール・カースト」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、本書でも、生徒たちがいかに「階級」を意識しているか(より正確には、がんじがらめになっていると表現した方がいいかも)が如実に分かります。
    「高校って、生徒がランク付けされる。なぜか、それは全員の意見が一致する。英語とか国語ではわけわかんない答えを連発するヤツでも、ランク付けだけは間違わない。大きく分けると目立つ人と目立たない人。運動部と文化部」(P89)
    「女子にとってグループは世界だ。目立つグループに入れば、目立つ男子とも仲良くなれるし、様々な場面でみじめな思いをしなくてすむ。だって、目立たないグループの創作ダンスなんて、見ている方までもみじめな思いになる。どこのグループに属しているかで、自分の立ち位置が決まるのだ」(P150)
    読んでいて痛々しくなります。でも、私らの頃も、これに近いものはありました。自分は割と目立つグループの中で、あまり目立たなかった方。でも、グループはある程度、固定化してはいたけれど、グループ間の交流はそれなりにあったと記憶しています。それはちょっと旅行に行く感覚だったかもしれません。
    本書では、甚だしい場合に至っては別のグループは、まるでそこにないものとして扱われます(特に上位グループから見て下位グループは、無視ないし軽視といったレベルではなく、言葉の厳密な意味で「そこにないもの」として扱われます)。
    だからこそ、解説者の吉田大八さんも触れていた通り、終盤の前田と菊池の「出会い」はとても美しい場面となっています。もう、静かに感動がこみ上げてきて、ふるふるしてしまいます。
    ちなみに私は前田涼也くんの章が一番気に入りました。
    朝井リョウくん。末恐ろしいです。

  • H29.9.5 読了。
    ・桐島は、出てこないのかーい。と突っ込みたくなる作品。登場人物たちの楽しみや立場や苦悩などが描かれていて、面白い。自分にもこんな年齢の時があったなあと思い出した。

    ・「本当は、世界はこんなにも広いのに、僕らはこの高校を世界のように感じて過ごしている。」
    ・「人間関係は硝子細工に似ている。見た目はとてもきれいで、美しい。太陽の光を反射して、いろいろな方向に輝きを飛ばす。だけれど指でつっついてしまえばすぐに壊れるし、光が当たればそこら中に歪んだ影が生まれる。そんなもんだよな、と思う。」
    すごくわかるって思う。

  • バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こして……。至るところでリンクする、17歳の青春群像小説。
    Amazon より

    瑞々しい感性がほとばしる文章.視覚的.
    自分が高校生だったとき、こんな風に世界は色をもっていたのだろうか.

  • 「何者」で、スゴいと思った朝井リョウのデビュー作。
    題名がとても印象的。
    高校生の日常がとてもリアルに感じた。勢いとノリがあふれてる。
    読みながら、作者の非凡な才能をあらためて印象づけられました。
    自分の高校時代(かなり遡るけど)いろいろ思い悩んでため息ばかりだった気持ちがよみがえってきました。
    かと思うと、ふだん我が家の高校生の娘で実感している、今どきの高校生の様子がまるごと胸に響いてきてじんとする。
    未来へ向かっているそれぞれの登場人物たちを見守りたい、頑張れ!と思えた。

  • 高校生の思うことや発言を、そのニュアンスやリズム感を
    含めて見事に文章に定着させているところがスゴイ。技巧と
    いうよりはセンスだなと思う。
    「高校生にありがちなリアルな心情の揺らぎがいい」といった
    コメントを目にするが、そもそも、タイトルにある「桐島」を敢えて
    出さずにまわりの男子女子の変化を描くというアイデアというか
    構造が、この本の一番の魅力。
    遠い大陸で革命があっても、日本の総理大臣が変わっても
    彼らには何の影響も与えない。ちょっとした人物が部活を
    やめたことが、まわりにさざ波のように大きな変化を与える
    のだ。高校っていうのは、そういう世界なのだ。その世界の
    中で、彼らはそれなりに生きていくために細かな戦いをして
    いるのだ。

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田舎の県立高校。バレー部の頼れるキャプテン・桐島が、理由も告げずに突然部活をやめた。そこから、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく。バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部・亜矢、映画部・涼也、ソフト部・実果、野球部ユーレイ部員・宏樹。部活も校内での立場も全く違う5人それぞれに起こった変化とは…?瑞々しい筆致で描かれる、17歳のリアルな青春群像。第22回小説すばる新人賞受賞作。

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