- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087477085
感想・レビュー・書評
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北白川右京と早見リツ子のやり取りを始めとしてツアー参加者皆が笑えて切なくて個性的で
良い人達。常に笑いながら読み進んでしまった。かつてゼロ戦乗りだった岩波さんがパリを見て「美しいものをこしらえるのは、施政者の実力ですが、それを守り続けるのは市民の実力です。悲しいかなわが祖国には、そのどちらの力もないと思った。」との語りは戦争で破壊されてしまった日本を思う時、妙な説得力がある。
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ストーリーは特に面白味はないけど、読ませる作家さんの手に掛かると面白くなるという作品です。
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パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、ルイ十四世が寵姫のために建てたという「王妃の館」。今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて…。ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。
ひと癖もふた癖もある「光」と「影」のツアーメンバーたちは、ドタバタ騒ぎとニアミスをくりかえしながらも、それぞれのパリの旅を楽しんでいた―かに思えたが、ついにツアーの二重売りがバレそうになって、さあ大変。さらに「王妃の館」に秘められた太陽王・ルイ十四世の愛の行方をからめて、物語は十七世紀と現代とを縦横無尽に駆けめぐる。思いっきり笑って泣いて、ついに感動の大団円。 -
ヴェルサイユ宮殿、
王妃の館、
太陽王ルイ十四世。
愛と自由の国、フランス。
フランスがフランスたる所以を知った。
惜しむべきは、
フランス語を第二外国語としながら、
覚えているのは
「ケスク セ?」くらいとは
何とも情けない自分であった…。 -
それなら、CHROMING ROSEの名2ndアルバムタイトルとなったルイ14世の知識を得ようと気持ちを切り替えて臨んだら、なんだか予想を裏切られる浅田次郎節。上巻より遙かに読み易くなっていた。
反戦についての主張にも納得、同意。岩波先生の昔語りに涙した。バカ自民党議員どもに読ませたいよ、ポップカルチャーはフランスから羨望の眼差しを向けられる日本ではあるけれど文化の側面では足下にも及んでないよ。外苑通りの銀杏を切り倒すの決めたの誰だよ。
小池ゆりこに投票したヤツ、都知事選挙に行かなかったヤツちょっとこい。
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「浅田次郎」の長篇ユーモア小説『王妃の館〈上〉〈下〉』を読みました。
『終わらざる夏』、『残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉』に続き、「浅田次郎」作品です。
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〈上〉
思いっきり笑えて泣ける、人情巨編!
150万円の贅沢三昧ツアーと、19万8千円の格安ツアー。
対照的な二つのツアー客を、パリの超高級ホテルに同宿させる!?
倒産寸前の旅行会社が企てた、“料金二重取りツアー"のゆくえは…。
パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、「ルイ十四世」が寵姫のために建てたという「王妃の館」。
今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。
しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて…。
ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。
〈下〉
涙と笑いの人生ツアー、ついに決着へ!
愛人と別れたうえリストラされたOL。
人気作家とその担当編集者。
心中を目論む老夫婦。
カード詐欺師の夫婦…。
「ルイ十四世」の秘話を織り込んで、親子の愛が、夫婦の愛がホロリとさせる珍道中の物語。
ひと癖もふた癖もある「光」と「影」のツアーメンバーたちは、ドタバタ騒ぎとニアミスをくりかえしながらも、それぞれのパリの旅を楽しんでいた―かに思えたが、ついにツアーの二重売りがバレそうになって、さあ大変。
さらに「王妃の館」に秘められた太陽王「ルイ十四世」の愛の行方をからめて、物語は十七世紀と現代とを縦横無尽に駆けめぐる。
思いっきり笑って泣いて、ついに感動の大団円。
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女性月刊雑誌『メイプル』の1998年(平成10年)5月号から2001年(平成12年)4月号に連載されたコミカルな作品、、、
2015年(平成27年)に「水谷豊」主演で映画化され、2017年(平成29年)には宝塚歌劇団で舞台化されているらしいです。
パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、「ルイ十四世」が寵姫のために建てたという「王妃の館(シャトー・ドウ・ラ・レーヌ)」… 今は様々な著名人が泊まった一見さんお断りの高級ホテルとして鎮座する、、、
しかし、実は現在の懐事情は芳しくない… そこへ日本の倒産寸前の旅行会社がホテルを抱き込み、ダブルブッキングのツアーを企画・実行する。
昼に滞在する客(光(ポジ)ツアー)には10日間で150万円、夜に滞在する客(影(ネガ)ツアー)は19万円という格差があるツアーをダブルブッキングがバレないように両方の組が鉢合わせしないようにして行ったのだ… そんなことを知らずにツアーに参加した客は、みな訳ありや癖がある者ばかり、、、
物語は、取材のためにツアーに参加した作家「北白川右京」の創作などの、「ルイ十四世」と愛妾「ディアナ」、そして2人の息子の「プティ・ルイ」の話を織り交ぜながら、ドタバタ劇が繰り広げられる。
久しぶりに読書しながら笑えましたね… 面白かった、、、
泣くほどではなかったけど… 様々な過去を抱え、それぞれの目的を持ってダブルブッキングのツアーに参加した個性的なメンバーたち、顔を合わすことはなかったはずの光(ポジ)ツアーの7人と影(ネガ)ツアーの8人がニアミスを繰り返し、そして、ハプニング等にも助けられ、ツアコンの2人を含め次第に打ち解けて、同じ目的に向かって将来を生きて行こうとする展開は人情劇的で良かったですね。
「浅田次郎」の作品って、幅広いですねぇ… 三作品、続けて読みましたが、それぞれ全く違う作風なので、同じ作家の作品とは思えないくらいです。
以下、主な登場人物です。
【光(ポジ)】ツアーメンバー
「桜井香」
上司との不倫の末、リストラされた38歳のOL。
リストラ奨励金を使い切るためにツアーに参加
「北白川右京」
ベストセラー作家。
長篇小説『ヴェルサイユの百合』執筆のために、隠密旅行に。
「早見リツ子」
精英社の文芸編集者。
リフレッシュ休暇を使い、北白川右京の書下ろしを完成させるべく、グリップ旅行に。
「下田夫妻」
工場経営が破綻し、数億の借金を抱える中年夫婦。
心中目的で有り金はたいてパリへ
「金沢貫一」
バブル崩壊後に成り上がった不動産王
「ミチル」
元銀座のホステス。現在は貫一の恋人
「朝霞玲子」
<光(ポジ)>ツアーを引率する敏腕ツアコン。社長と愛人関係にある
【影(ネガ)】ツアーメンバー
「近藤誠」
謹厳実直。猪突猛進型の元警察官。
韓国旅行での上司や同僚たちの醜態を見て退職。
"世界を見聞するため"に参加。45歳
「クレヨン」
本名・黒岩源太郎。ゲイ・バーに勤める美形。
フランス人の元恋人を探している
「丹野夫妻」
全身黒づくめの謎の夫婦。実は世界を股にかけるカード詐欺師。
「岩波夫妻」
元夜間高校の教員とその妻。
夫はかつてゼロ戦乗りだったという過去を持つ。
「谷文弥」
音羽社の文芸編集者。北白川右京を追ってパリへ
「香取良夫」
文芸四季社の文芸編集者。谷と結託してパリへ
「戸川光男」
<影(ネガ)>ツアーを引率するツアコン。朝霞玲子はかつての妻。
今は娘と二人暮らし。
十七世紀「王妃の館(シャトー・ドウ・ラ・レーヌ)」をめぐる人々
「ルイ十四世」
フランスの太陽王
「プティ・ルイ」
本名ルイ・ド・ソレイユ・ド・フランス。ルイ十四世の息子
「ディアナ」
プティ・ルイの母。ルイ十四世寵姫だったが、ヴェルサイユを追われる。
「ムノン」
宮廷のグラン・シェフ
「ジュリアン」
ムノンの娘婿
「マイエ」
マ・ブルゴーニュの店主 -
作者の遊び心満載というか、はけ口と言うか、やれやれ案件でしたね。
とんでもない金額の遊びゴゴロはこちらの脳も破壊してくれて良きかなと。 -
一転、泣かせてくる。けど小ボケが多い。けどやっぱ泣く。16人の日本人とルイ14世とその周りの人たちの話。刺さる。
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「日輪の遺産」のときとは違ったなぁ。
最後に「そう繋がったか〜」の感動はなかった。
光ツアー、影ツアー、過去のフランスという、三つの次元(?)で話が進んでわかりにくいところに加え、各ツアーの参加者も参加者それぞれの物語があるから、複雑というか、話が多すぎるというか… -
普通の人々が気軽に外国へ行けるようになって四半世紀。こんなツアコンのドタバタ劇も当たり前の朝飯前。よーく解ろうものである。
文豪がふらんす物語を大上段に書き読者が雰囲気を味わい浸った時代があったのだよね。いやいや松本清張が「黒の回廊」(ヨーロッパツアーものミステリー)を書いたころ(1970年代)だってこんなに庶民が簡単に外国へ行きはしなかった。高根の花だった。いいなー!とミステリーに浸りつつ、行かれやしない旅行を一緒に楽しんだもの。と時代錯誤、思い出はこの辺でやめて。
浅田さんはこんな風のも書くのかと、王宮(シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ)のパロディとパリ観光案内っぽいのが面白かった。なぜかというと、パリへ行ったことのあるものにとって、ああ、あれね、あそこねとうなずけるので、これが現代の贅沢…といっても「影(ネガ)ツアーメンバー」の19万8千円コースだけどね。
この対極の「光(ポジ)ツアーメンバー」の百五十万円コースとダブルブッキングされてドタバタ劇が展開するのだ。
そして、きっと「ベルサイユのバラ」を読んでいたらよかったのかもとも思う。それこそフランスの王宮のことをもっと知っていたらパロディも冴えてわかったであろう。
まあ、軽快すぎてちょっと泣きは短編ほどでなかった。読んでいた私もだれていたのかもしれない。
しかし、日本人のツアー一行のキャラクターの設定は無理がなく、いるいるこんな人と思わされ、てだれであるよ。浅田さんはさすがである。
特にベストセラー作家の描写はご自身のパロディかしらなんて思って、作家は早死にするというくだりに真実を感じぞっとして、身を削って書く「さが」の悲哀を感じた。それほんとだもの。しかし、読者としては渾身の傑作を望むもの。勝手だわ。 -
コミカルで軽快な分、シリアスで重いテーマに振れた物語だった。油断してるとそこかしこに金言が飛び出してくる。
そして作者が描きたかったのは、長命のカラスに語らせた最後の数ページなのでは。ブルボン王朝が築きナポレオンが化粧を施した”パリの美”を守るためにドイツに明け渡したパリ市民、ヒトラーの命令に抗ってパリを攻撃しなかったドイツの軍司令官。確かに世の中を美しいもので一杯にすることこそ平和の礎になるのかもしれない。ふとアンネフランクの日記を思い出した。京都が破壊されていたら日本人の情緒はどうなっていたんだろう。
平和は戦争がない時間を指すのでなく、心の平安が約束された時間、という言葉が刺さる。
老コンシェルジュの昔語りから、舞台が一気にルイ14世の時代に移ったのには鳥肌がたった。プティルイと太陽王、グランシェフ•ムノンとジュリアン、ジュリアンとアンリ、岩波先生と下田。血の繋がりの有無に関係なく、渡辺えり子のいうように父子の関係性、父がどうあるべきかが語られていたと思う。そう思うと、今のコロナ禍で国の方針が示せない日本は国の父が居ないのかもしれない。
そして渡辺えり子の父のエピソードは、驚くほど作中の岩波の人生と重なり同等(いやそれ以上)のインパクト。解説が本作を凌駕して良いのだろうか、、笑。解説が本作を補完しているといっても良い。力強いマロニエが見たくなって思わず画像を調べてしまった。
太陽王と謳われたルイ14世の光と影、ツアー客やツアコンの光と影、どうしようもない、残酷な事実、でも人は愛おしいと思える物語。最後は怒涛のハッピーエンド。
“人間は木石ではない。生き物だ。だから呼吸をするからこそ値打ちがある”
へこたれそうな時に再読したい。