香港警察東京分室

著者 :
  • 小学館
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本棚登録 : 644
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784093866828

感想・レビュー・書評

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  • 珍しいもの読んでるね〜と言われました。が、月村本を読むのは何作目か。かなりバイオレンスで血が出るにもかかわらず、なんか優しいので、手に汗握らないというか(いい意味で)。なかなかにデリケートな話題というか、まあ、最初から元凶はあそこでしょうな、、と思いながら読みつつ、やはりの結果にモヤモヤなくすっきりした。日本側と香港側の双方ともに、いろんな能力と背景のある人物で構成されて、私の好きなサイボーグ009とかアベンジャーズとか、あのタイプのある程度現実味のあるような、ないような、そこらへんのええところ攻めてくる感じがよろしい。
    水越警視のキャラ、ええですねぇ。彼女だけでなく全員ええキャラとバランスで、設定が楽しい。

    何がなんでも変更しない呪い、、、

  • 香港の警察機関が日本警察と組んで東京に分室を作り、そのメンバーが国際的陰謀に立ち向かう活躍を描いた作品。香港と中国、日本と中国の現在の状況を考えると、なかなか面白い題材だとは思うが、もう少し深掘りした方がより面白味が増すのではないか、と思った。いろいろな要素が詰め込まれ過ぎているようで、ちょっと物足りなく感じた。

  • STORY BOX2022年6月号〜2023年1月号掲載のものに加筆修正し、2023年4月小学館刊。活劇調の架空警察小説だが、月村さんだけあって設定や世界観が緻密で物語りに取り込まれた。タイトルを見てなんで香港?という疑問があったが、2047年問題を見据えた登場人物たちの会話や行動で納得。月村さんの物語構築はとても説得力があります。

  • 香港でデモを扇動し犠牲者を多数出した上、助手を
    殺害したとされるキャサリン・ユー元教授を確保するため、日本警察5名と香港警察5名から成る組対部特殊共助係『分室』のメンバーが、事件と事件に隠された陰謀を追う。

    それぞれの警察官の視点で話がテンポ良く切り替わっていくので、読んでいて全く飽きなかった。
    銃撃戦は迫力があったし、身を潜めるシーンは緊迫感が伝わりハラハラした。
    信念をしっかり持っている個性豊かなメンバー10人が、ぶつかり合いやピンチを共にする中で徐々に同じ目的に向けて動くのも良かった。

    2014年に香港で実際に起きた雨傘運動というデモや、つい先日カナダへの事実上の亡命がニュースで報じられた民主活動家の名前も作中に登場する。
    一国二制度や2047年問題など、中国と香港の関係性についても文中で自然な流れで触れられているので、ノンフィクションを読んでいるのかと錯覚するようなリアリティだった。

    続編がありそうなラストだなと思った。分室メンバー10人の物語は続きを読んでみたいけれど、現実の世界では危険なことが起こらなければいいなと願う。

  • 香港の政治背景、日本の政治背景、キャラクターの個性が絡み合っていてとても面白かった。
    銃撃戦はドキドキハラハラしながら読めた。

  • 2047問題なんて知らなかったな。とても勉強になりました。
    物語前半は悪くはないけどやや軽い印象で、2047問題が背景にあるのが明らかになってからは香港と中南海を取り巻く権力闘争の代理戦争が日本を舞台にして行われているという意味で重みを増していく展開になったのかなと思う。まあ、日本にとってはえらい迷惑な話だけど、、、
    終盤のユーとシドニーとのやりとりは意識朦朧の中でということだがイマイチわからず、、、
    個人的に1番響いたのは物語の内容とはあまり関係ないかもしれないけど『日本は香港よりも容易く独裁主義、全体主義の手に落ちるでしょう。いや、すでにそうなっているといったほうがより実情に近いはずだ』というセリフだな。肝に銘じたい。

  • 日本に潜伏している香港の民主活動家を確保すべく、分室の10名は全力で「敵」に挑む!日本側5人、香港側5人はいずれも突出した個性の持ち主。はじめのうちは登場人物一覧を参照しながらの読書だったが、中盤を過ぎるとその必要もなくなった。

    銃撃戦やカーチェイスなどは、まるでアクション映画を観ているようだった。銃の種類や人の動きが詳細に描かれ、それにより登場人物の特徴も把握できる仕組みである。修羅場となる建物も、元介護施設、高級住宅街の豪邸、そして廃寺と、バラエティ豊かだ。最初から映像化を意識して作った物語のように感じる。

    メンバーの高度な技術と心意気が魅せてくれる一方で、ターゲットであるキャサリン・ユーの特徴はなかなかつかみにくい。彼女は元教授で支持者も多い。しかしその一方でよからぬ噂もある。こうした「わからない」状態が、何となくストレスになってしまった。

    10人のメンバーが死闘を繰り広げる背景に、強大な力関係が渦巻いていると知り、終結は難しいと感じた。私自身キャサリン・ユーには全く同情できず、人物背景にも作りすぎている印象が強くて、消化不良のまま読了。これがちょっと残念。でも10人のキャラクターは好きである。双方のキャップである水越とウォンを中心に、10人が横並び一直線でじわりじわりと進んでくる映像を勝手に想像してしまった。また別の物語で彼らに会いたい。

  • 月村作品には欠かすことのできない、裏社会とのつながりと銃撃戦とアクション。
    ストーリーの設定はシンプルで読みやすさは
    あるものの、物語のキーパーソンが呆気なく死んだので拍子抜けした感じ。
    密接に香港情勢とフィクションを絡める
    手法はお手のもので、引き続き注目して
    いきたい。

  • 以前『機龍警察』を読んだときに感じた難解さは全くなく、とても読みやすく楽しめた。香港と中国の問題を描きながら日本の闇についても考えさせられる。個性的なキャラが多く、続編が出たらまた読みたい。

  • <斬>
     新刊作品を読み始める時に いつも気にするのは人気作者のいづれかのシリーズものの途中巻ではなかろうか?と云う事。本作はどうやら全く新しい単独作品の様子だ。面白くストーリーに蓋然性があれば人気となってシリーズ化されてゆくのだろう。今のところはその辺りは未知数の作品。 少しストーリーに触れる。警視庁と香港警察が合体wして分署を東京(しかも神田神保町ってのがまたいいねw)に作って・・・というお話。まあそこに興味が無い読者さんには面白い作品とはならないだろう。僕は興味あり!だった。良かった。

     本文84ページから引く。女性キャリアの水越管理官のセリフ「・・・判断は任せるわ。私は草壁刑事部長に連絡してから本部に行き・・・」 ここで僕は,おい警視庁の刑事部長は管壁なんて名前じゃなくて伊丹部長だろうに,と真剣に思って3秒経ってから,あ,作者が違ってた,と思い直したw。しかし毎冊思うのだが月村は絶対に今敏先生のファンなのだ!

     おいらは頭が悪いから登場人物の名前とその素性をうまく覚えられない。今作で一番苦労したのは香港警察側メンバーの性別。特に今回は香港メンバーを英語名で呼び交わしているので男か女かが分からりづらいのだ。そして多分意識的にだと思うが作者はわざと男言葉をその女性警官たちに使わせている。読者が性別混乱を起こすことにどうやら月村は喜びを感じている様に思える。いわゆる変態,いやまあ作家なんてみんな多少はそういう癖がなければ物書きで糊口をしのぐ事なんか出来ないだろうからそれでいいんだ。

     んで,相変わらずアクションシーンの面白さは群を抜いている。これだけで読む価値が十分にある。しかし人間個人の描き方については,こちらも他の作品と変わらず妙に信条信念ばかりを前面に出して,だからこいつはこういう行動をするんだよ,という具合に,全員を描いている。これは「機龍警察」以来の事で,思えばあの作品も主人公たち個人の性情をおもいきり強調して書いていたなぁ。いっしょやで。

     まあ同じ作家が書く作品なのだから似た様なモノになって当たり前なのだけれど,今回はストーリー仕立てには特別なものを感じないので 妙にそこが気になる。とは言ってもやはりとても面白い本なので実はおすすめである。どのくらい面白かったかと云うと。僕は会社の昼休みに本を読む。まあ大体25分間くらいは読む。ここ最近は四六判の単行本で小説作品を読むときはせいぜい20ページがいいところだった。それがこの作品はなんと35ページも読み進めてしまったのだった。そのくらい集中できて面白本なのだ。

     後半で嵯峨の先輩ヤクザがしゃべる関西弁があまりに自然に流暢でビックリ。なんでこんなに普通に違和感なき関西弁が書けるのだろう,もしや,と思って著者のプロフを改めて読んだら なんと月村は関西出身だった。全然気づいていなかった。すまぬ。この分だと 僕の贔屓作家さん 黒川博行並のしっかりした素晴らしい出来の関西やくざ小説が書けるなぁ。ああ楽しみ。

     まあしかし月村と云う作家は中華国だの北朝鮮だのの政治体制がらみの話題が好きだね。僕も嫌いではないのでそれらの作品を面白く読めているが一般受けはどうなんだろう,とふと思う。好きではあるがそれは非日常な話題としてであって,当事者たちの心情を鑑みるとそうも言ってられない面は多いに有るのだろう,などと想いながら読み楽しむのであった。ともかく,この本は面白いです。おすすめです。

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著者プロフィール

1963年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部文芸学科卒。2010年『機龍警察』で小説家デビュー。12年『機龍警察 自爆条項』で第33回日本SF大賞、13年『機龍警察 暗黒市場』で第34回吉川英治文学新人賞、15年『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』で第68回日本推理作家協会賞、19年『欺す衆生』で第10回山田風太郎賞を受賞。近著に『暗鬼夜行』『奈落で踊れ』『白日』『非弁護人』『機龍警察 白骨街道』などがある。

「2021年 『ビタートラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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