後悔病棟 (小学館文庫 か 46-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094064094

感想・レビュー・書評

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  • 人生の終わりが見えてきた時、何かしら思い残すことってあるのではと思います。
    自分は何を思い出すのか考えると面白い。

    末期がんの患者を診ている早坂ルミ子、ある日不思議な聴診器を拾う。その聴診器を患者の胸に当てると患者の心の声が聞こえてくるのです。
    過去の自分が見えたらどうでしょうね?

    「老後の資金がありません」の作者だったんですね。
    他の作品も読みたくなりました。

  • 早坂ルミ子は、終末期医療に携わる医師。
    対人関係がやや苦手で、言葉選びが上手くないため、『無愛想』『患者の気持ちがわからない』と揶揄され、ベテラン看護師からは冷たくあしらわれ、思い悩んでいたのだが…

    ある日、病院の中庭で不思議な聴診器を拾ったルミ子。
    なんと、その聴診器を使うと、患者の心の声が聴こえるだけではなく、患者が『やり直したい』と後悔している過去のターニングポイントに戻って、“あの時選ばなかった人生”を垣間見せることが出来るのだ。


    不思議なひみつ道具を手にしたことで、主人公の毎日が一変する、という物語…といってしまうとありきたりなんだけれど。
    ただ、「余命わずかな患者の」心の声、というところに切実さがにじむはずのところ、全体に軽くコメディタッチなのが可笑しい。

    せっかく心残りなく旅立った患者が、またまた天国で後悔してしまいそうな残された家族の様子とか、余命わずかなはずが治験薬で命拾いした患者とか、回を追うごとにひねりがきいてきて、トントン読める。

    人間いつ死ぬかわからないんだから後悔しないようにいつも精一杯生きましょう…
    …な〜んて堅苦しくならず、何度も失敗してOK、その時の自分の幸せに向かって生きてOK!というメッセージを、軽やかに届けてくれた。


    とはいえ、現実に重病の患者さんやその家族は、笑って読めないかも。


    昔から妄想してるんですが、心の声はともかく、患者の不調や痛みを、医師が体感出来るひみつ道具があればいいのに!
    そうしたら、幼い子供や口のきけない患者の疾患も正しく診察できるし、患者の辛さに共感を持って親身に治療できるのでは。
    そんなことになったら、医者になりたいと思う人はいなくなっちゃうか。

    「このくらい我慢して」って、本気で痛いんですけど!が伝わらず、誤診、たらい回し。なんて経験、ありません?

  • 間違えて希望病棟を先に読んでしまったw
    でも、正解だったかもw
    同じ聴診器から聞こえてくる患者の声に過去に遡り後悔していたことを改めて歩んでみる。
    今の人生で幸せだったと感じて人生を終えるってそれはそれで幸せだ。
    みんなあの時間違った人生の帰路を後悔するが全てあの判断があったら今がある幸せも噛み締めなくちゃいけないんだなって改めて感じる。
    特に第二章のファミリーは家族を持つ人たちに読んでもらいたい

  • 末期がん患者が入院する病院で、医師として働く30代のルミ子。
    「空気が読めない」「患者に失礼ないことを言う」と言われていて、患者からも看護師たちからも評判が悪い。
    あるとき、病院の敷地で聴診器が落ちているのを見つけた。その聴診器を患者の胸に当てると、患者の心の声、記憶を聞くことができるのだ!
    死を前にして、人生の後悔が残る患者たち。
    芸能界デビューすればよかった。
    仕事ばかりせず子育てもすればよかった。
    娘の結婚を反対しなければよかった。
    自分が罪をかぶればよかった。・・・
    選ばなかった人生を選んだら、どうなっていたのか?

    人の思っていることがわかるというと、下世話な好奇心を満たしたくなる気がするけど、その点ルミ子はどうだったのだろうか。
    ルミ子は、患者が人生の後悔を残さずに安らかに死ねることを一番に考えていたのは本当だと思う。好奇心もあっただろうとは思うけど・・・優しい医師だと思った。
    思いがけずガンからサバイブした患者について、なんか生き残ってがっかりしているような?そんなことないか。

    ラストでは、小学生の時に別れた実父と聴診器なしに心を通わせることができ、聴診器はもう必要ないと思えたのだろう。
    でも、私ならお守り的に持っておきたいけど・・・笑。
    聴診器は、ルミ子より空気が読めない摩周湖に渡り、これからこの病院はどうなるのだろうか。

  • おもしろかった〜。
    ルミ子は末期がん患者をみるお医者さんなのに、空気が読めず口下手で、よく患者さんを怒らせてしまっては落ち込んでしまう33歳の女性。あるとき、心が読める聴診器を手に入れてしまう。しかも、その聴診器をあてられると、患者さんも過去をやり直す体験ができる!選ばなかった方の人生を歩んでいたら…。他人の人生をのぞき見しているようで楽しかったです。

  • 内容紹介 (Amazonより)
    「過去に戻れる聴診器」を使ってみたら…

    33歳の医師・早坂ルミ子は末期のがん患者を診ているが、「患者の気持ちがわからない女医」というレッテルを貼られ、悩んでいる。ある日、ルミ子は病院の中庭で不思議な聴診器を拾う。その聴診器を胸に当てると、患者の心の”後悔”が聞こえてくるのだ。

    「過去に戻って、もう一度、人生をやり直したい」

    聴診器の力を借りて、”もうひとつの人生”の扉を開けた患者たちが見たものは――!?

    ●dream――千木良小都子(33歳)
    母は大女優。「芸能界デビュー」の夢を諦めきれなくて…

    ●family――日向慶一(37歳)
    俺はもうすぐ死ぬというのに、なぜ妻は金の話ばかりするのか。

    ●marriage――雪村千登勢(76歳)
    娘の幸せを奪ったのは私だ。結婚に反対したから、46歳の今も独り身で…

    ●friend――八重樫光司(45歳)
    中三の時の、爽子をめぐるあの”事件”。俺が罪をかぶるべきだった。

    この世の中の誰もが、「長生き」することを前提に生きている。
    もしも、この歳で死ぬことを知っていたら…

    家族、結婚、夢、友情。
    女性から圧倒的な支持を受ける著者が描くヒューマン・ドラマ!!




    最後に書かれてある書評家・吉田伸子さんの解説がとてもしっくりくる感想だと思いました。
    あの時違う選択をしていたら 違う今があったのかなぁ?と思うことは確かにありますが だからと言ってやり直したいかというと...私はそうは思わないんですよね。
    今の私が本来の私なのだから 過去をやり直したいとは思いません。
    けれどどの話も気持ちはとてもよくわかりますし このように考えられるようになったのは 歳を取ってからのことなので...

  • <過去に戻りやり直すせる聴診器>という設定はファンタジーということで飲み込んだが、死期迫る中、過去に戻って<やり直し>を望むんだろうか、というところに引っかかってしまい、なかなか入り込めなかった。
    死期が迫ると自分に未来が無いことを悲しみ、日々悪化する苦しさに恐怖を感じる人が多いが、、、。リアリティ抜きにして、読み物としては読みやすく面白いんだと思う。世にも奇妙な〇〇みたいなお話。

  • 「患者の気持ちがわからない医師」とレッテルを貼られている内科医の早坂ルミ子が、ある日拾った聴診器。
    それは患者の心の声が聴ける聴診器だった。

    患者が後悔している人生の岐路を、不思議な聴診器で聴きとりはじめたルミ子。
    そんな患者のもとに、「もう一つの人生の選択肢」を選べる扉が現れる。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    主人公の早坂ルミ子は、とんでもなく言葉のチョイスが悪い医師です。
    「この場でその言葉、選ぶ?!」と誰もが思うような言葉をポロッとこぼしてしまうため、患者からも看護師からも日々、冷たい目で見られています。

    それはルミ子が意地悪な医師だから、というわけではなく、コミュニケーション力が極端に低いからなのです。
    …と、頭ではわかっているのですが、読んでいると言葉選択のあまりのイマイチさに、だいぶモヤモヤしました。

    主人公にもやもやした意外は、文も読みやすく、さらさら先に進めました。

    各章には、もうひとつの道を選ばなかったことを、後悔している4人の末期癌患者が登場します。
    4人それぞれの人生の結末は、まさに4者4様でした。

    読み終えてひとつだけ言えるのは、未来はわからないから、人は道を選べるんだな、ということです。
    両方の道とも、しあわせが待っていたとしても、やはりどちらが「より」しあわせか、ずっと悩んで選べないと思うのです。
    では両方の道とも、不幸が待っていたら?
    それもまた、思いきって飛びこむことは難しいでしょう。
    その不幸がいつ来るのか、知りつつ日々を過ごすのは、毎日を暗闇のなかで暮らすようなものです。
    未来はわからないから、選べるのです。

    今、自分が歩んでいる道に後悔があったとしても、登場人物たちの人生を見ることで、その後悔がなくなるかもしれない…、そんな1冊です。

  • 空気が読めないと悩むお医者様(早坂ルミ子)、患者さんに余計なことを言ってしまい顰蹙もの、まして余命宣告を受けている患者さんにはキツイ。ところが、当てると「心の声」が聞こえる聴診器を拾って使ったことから、患者さんの気持ちや後悔などがわかるようになった。ちょっとファンタジーみたいなんだけど、さすが垣谷美雨さんの筆運びは、人生の真実を突いてなるほどと思わせる物語になる。4つの物語にヒロインルミ子の人生が絡まって大団円となるのは安心して読めるということ。

    人の心はわからない、だから複雑に解いて見せる文学が生まれる。byばあチャル(笑)

  • 過去の後悔を聴診器を通じて実際に、その後どうなっていたのかを体験できる。

    ファンタジーっぽいけど、現実は思い通りにいかず、今の人生が良かったと思わせるのは現実的だったと思う。

    読みやすい作品。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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