後悔病棟 (小学館文庫 か 46-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094064094

感想・レビュー・書評

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  • 2022.5.7.読了
    神田川病院に勤める医師の早坂ルミ子は末期がんの患者達を診ている。空気を読めないと周囲から言われるルミ子は、がん患者に対し心無い言葉を言っては、患者本人やその家族から逆上されることがしばしばあった。ある日、ルミ子は、病院の庭で聴診器を見つける。誰も名乗り出なかったので自分のものとして使い始めると不思議なことが起こる。末期患者の心の声が聞こえるのだ。皆、それぞれ、死を間近にして後悔していること、人生をやり直したいと思っていることがあり、ルミ子はその心の声が聞こえる上に胸に聴診器を当てることでその人生をやり直す体験をさせることができるのだ。

    女優になりたかった大女優の娘

    家族のためにひたすら働いてきたにも関わらず死んだ後の金勘定しか考えていない妻、自分に無関心な息子を前に仕事人間だった自分の人生をやり直したいIT会社の会社員

    ろくでなしと思っていた男との結婚を反対したがために結婚しないという選択をした娘を持つ母親

    中学生の時に真実を言わなかったために親友の人生を台無しにしてしまったことを後悔しているメーカーに勤める会社員

    4人の人生のやり直しを見つめるルミ子。それぞれの患者はやり直した人生にそれぞれの在り方で納得し、安らかに死を迎える。

    死を迎えるにあたって後悔するであろうこと、特に年若くして余命を宣告された人たちはそれぞれやり直したいことがあるだろう。必ずしもやり直した人生が思い通りにいかないということが描かれて非常に興味深かった。特に一番印象的だったのはろくでなしとの結婚を反対したがために婚期を逃した娘を持つ母親のエピソードだった。そのろくでなしは今や青年実業家になっておりなぜあの時に結婚を反対してしまったかとずっと後悔し、今だったら絶対結婚を反対しないと思っている母親は、時が巻き戻され人生をやり直し、娘の結婚を認めるのだが…。

    人生がどうなるかは決して決まったものではなく、いろいろな人々との出会いにより作り上げられていくものということが描かれていてとても興味深い作品だった。

    ルミ子の病院での描き方も面白く、あっというまに読めてしまう作品だった。

  • 短編集のような一つの物語

    不思議な聴診器を手にした、末期がん患者を担当する女医の。

    人生の終わりに残る後悔を、やり直したらどうなるか?それができる聴診器により、人の内面の苦しみを解決していく。

    面白かったけど、泣くほどではなかった。

  • 自分は死を前に何を思うんだろう、と考えさせられるお話だった。もっとこうしていれば、そんな風に思ったことのない人なんていないんじゃないか。それでも後悔のない人生がいいなぁとは思う。
    最後にルミ子自身のお話もあったのがよかった。聴診器の力、次は摩周湖先生の番かな?使う人によってお話も変わりそう。

  • 1度大きな病気をした自分には、共感出来る話しだった。医師の不器用さも、好感が持てた。人の最後には後悔する事は沢山あるだろうけれど、これで良かったんだと思えたら。

  • 末期の患者を診る医者ルミ子の悩みを解決してくれる不思議な聴診器との出会い。
    末期の患者が過去をやり直し、安らかな気持ちで逝けると評判になるが…。
    柿谷さんのファンタジーは、現実に立脚しているので、読みやすく感情移入もしやすい。でもこの作品は、今ひとつ入り込めなかった。
    ルミ子本人の輪郭がくっきりしなかったからかも。
    人間模様が垣間見え、楽しみながら考えさせられたのはとてもよかった。

  •  神田川病院に勤める早坂ルミ子は、勤続10年の内科医。一生懸命頑張っているのに、言葉足らずで、患者の気持ちが分からない無愛想な医師だと陰口まで叩かれる始末。
     そんなルミ子は、ある日の昼休み、花壇の中に落ちていた聴診器を発見する。落とし主が見当たらず、使うことにしたルミ子。しかし、その聴診器を患者にあてると、心の声が聞こえてきて……。

     不思議な聴診器を手に入れた医者と患者の物語。「あの時ああしていれば……。」とか「あの選択は正しかったのか」という不安や後悔は誰にもあるはず。選ばなかった人生とは、はたして?

  • 悔やんだり恨んだり嫉妬したり、僕も時々色々な感情に振り回されるけど、少し想像力を働かせてその感情の対象を別の側面から見てみると、違った姿も想像できて結果自分にも他人にも優しくなれるのかも知れない。
    素敵な本でした。

  • 別の道を選んだら、と思う瞬間は誰にでもあるもの。答えは分からないけれど、何故かこれでも良かったのかもと思える本。

  • 確かに。
    あの人やこの人の間際の声が聞きたかったな。

  • 章ごとに分かれているけど、ストーリーはつながっていて読みやすいです。
    実際の勤務医が、ここまで患者さんと長く触れ合うことってあるかなぁ?っていうほどに深く関わってくれるドクターですが、まあそれもストーリーとしてリアリティ追求よりも、大切なことだと思います。
    垣谷さんのお話は、ほんわかする内容なのに、いつもなにか深く考えさせられる内容が潜んでいる感じがして、深く癒やされます。
    今後は、精神病棟に特化した内容の垣谷さんの小説が読んでみたいと思いました~。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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