- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784094064438
感想・レビュー・書評
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中巻は正しく一気読み。
何なんでしょう。地味な変態たちがジワジワくる。
歩の姉がどんどん可愛く思えてくる。
母もここまで突き抜けていると腹立たしさは感じず、むしろ清々しい。
そしてサトラコヲモンサマ、思いっきり吹き出してしまいました。
いやぁ、ジワジワくるなぁ。
下巻へ続きます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
初読
歩が日本に帰国。
「男の子」の感じ、書くの上手いなぁ
中学生の時の「男女」になっていく、
でも男同士でいる方が楽しそう。
あの感じ。
大学に入ったあたりから色褪せていく感じもなにかどこかリアル。
サトラコヲモン様とお姉さんのあたりは、フーン。
くらいw -
面白くて一気に読んだ。自分の体験にもどこか重なるような、歩の青春時代が実にあけすけに、真っ直ぐに描かれている。
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別れた夫が買った家に住んで、別れた夫から振り込まれる金で暮らして、自分の祖母が他界してすぐ再婚してその家で男と住もうとする母親の幸福への執着すごいなぁと思った。
「自分の信じるものを見つけなあかん」
自分の信じるものってなんだろう
「酔うと、なんかそうなっちゃうんですよね
でも、セックス した後は、みんな自分のことをすごく話してくれるから、楽しいんです。小さな頃のこととか。なんていうか、壁がなくなる感じ?
私、50人位の過去と悩み知ってますよ!
私、神社みたいでしょ?」 p209
でも内心は、まだ愚痴ってくれていた方が楽だと思っていた。
晶は弱みを見せるような女ではなかった。だからこそ晶の愚痴は尊かった。弱っている晶を、僕は可愛いと思った。でも晶は、ある時期を境に、まったく愚痴を言わなくなった。言うまい、としている晶の頑なさが、僕らの間の空気を何か尖った、硬質なものに変えてしまった。 p244
晶の声を聞いていると、晶が最初から僕に何ごとかを言うつもりだったことが分かった。「無理せんときな」はちょっとしたきっかけであって、他の何であっても、きっとこうなった。つまり晶は最初から臨戦態勢だったのだ。
晶はコーヒーのカップに、手をかけていた。その、骨のように白いカップは、ふたりで出かけた美術館のスーベニアショップで買ったものだった。僕はそのカップを見て、胸が苦しくなった。おそらく、そのとき僕はもう、別れの予感を強く感じていたのだ。
「歩って、いつもそうだよね。」
女の子が「いつもそうだよね」と言う時は、悪い事に決まっている。その言葉に続くのは、きっとこうだ。
「何考えてるか分からない」
「自分の意見がないの?」
「どうしたいのかはっきりしてよ」
今まで答えてきた時のように、こう言うしかなかった。
「うーん、まあ」
この態度のせいで、女の子がますますヒートアップすることは分かっていた。でも、それ以外の言葉を発して、積極的にその雰囲気に介入することを避けてきた。僕はいつでも受け身でいたかった。勝手に怒り、さらにヒートアップしてるのは、そっちだけだよという態度でいたかった。
「歩は、いつも、頑張ってる人のことを見下してる。」
「自分はいつも、努力してないのに選ばれる、そう思ってるでしょ?いつだって受け身で。それで、努力して努力して、何かを得ようとしてる人を馬鹿にしてるんじゃないの?」
その日僕は晶と別れたのだったが、晶が別れの言葉を発する前に、もう晶のことを嫌いになっていた。あれだけ好きだった、素晴らしい女性だったのに同じレベルにいたくないと思えるほどに。晶は遠い人だった。 p246
「なんでサトラコヲモンサマやったん?」
「見てみ」「猫?」「チャトラや」
「うちの家によう来てたチャトラがおったやろ。」
「あの子が伸びをしたら、お尻の穴が、ぶぶぶって震えるねん。それが可愛くてなぁ。それを見てたら、おばちゃん、なんでもどうでも良くなるんよ。」
「チャトラの肛門ってこと?」
「せや」
「なんでもどうでも良くなるんよ」
それこそが大切だった。立派なものであってはいけない。こちらを畏怖させるものであってはならない。この世で起こっている様々な出来事を、「どうでも良くなる」と思わせるもの。
自分が信じたもの、心から信じ、寄り添ったものは、大いなる力ではなかった。偉大なる何かではなかった。それは、猫の肛門だったのだ。
今まで散々見てきた、どこにでもある、取るに足らないものだったのだ。
「あの子には、自分で、自分の信じるものを見つけなあかん、て言うたんや」 p300 -
家庭環境に難があるものの、主人公の容姿と性格が出来すぎていて、ベタなドラマぽさを感じてしまう部分はある
人の人格形成を1から辿れるのは面白い。
普通の人はこんなに立ち回りについて色々考えているのだろうか
自分がどれだけ何も考えずに人生を歩んできたか
祖母が亡くなった直後に再婚する母
自分の幸せへの執念
父としての役目を終え出家する父
母である前に、父である前に、1人の人間。
今まで両親と1人の人間として接したことがないな。家族という役とでしか -
父の赴任先のイランで生まれた歩。イランと日本をまたぎ、父、母、姉、祖母、叔母、友人たちの間で悩み揺れながら生きる長い長い物語。
歩はいつも家族が抱える問題や人間関係に揺さぶられている。上がったり下がったりどん底に落ちたり。人生曲線ぶれぶれ。人間なんてそんなものなのかもしれない。特に若い頃なんて。姉の言葉「自分の信じるものを見つけなさい」が響く。