サラバ! (中) (小学館文庫 に 17-7)

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  • 小学館
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094064438

感想・レビュー・書評

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  • 中巻は正しく一気読み。
    何なんでしょう。地味な変態たちがジワジワくる。
    歩の姉がどんどん可愛く思えてくる。
    母もここまで突き抜けていると腹立たしさは感じず、むしろ清々しい。
    そしてサトラコヲモンサマ、思いっきり吹き出してしまいました。
    いやぁ、ジワジワくるなぁ。
    下巻へ続きます。

  • 上巻よりもぐっと面白くなる中巻。主人公の思春期から青年期の話。主人公のこころの動きが的確な言葉で表現されていて、自分の事のように思えてくる。誰にでもあるような青春時代を過ごしながら、異常な家族に囲まれつつ、ついにその家族が崩壊するところまでを描く中巻。ただ、なんの話なのか、相変わらずわからない笑。どうやって終わるのか。下巻が楽しみすぎる。

  • 初読

    歩が日本に帰国。
    「男の子」の感じ、書くの上手いなぁ
    中学生の時の「男女」になっていく、
    でも男同士でいる方が楽しそう。
    あの感じ。

    大学に入ったあたりから色褪せていく感じもなにかどこかリアル。
    サトラコヲモン様とお姉さんのあたりは、フーン。
    くらいw

  • 面白くて一気に読んだ。自分の体験にもどこか重なるような、歩の青春時代が実にあけすけに、真っ直ぐに描かれている。

    • トミーさん
      西加奈子はよくわかりません。
      西加奈子はよくわかりません。
      2020/02/10
  • 3巻まとめて↓

    本当に出会えてよかった。もっと早く出会いたかった。なんで上中下巻に怯えてずっと積読にしていたんだよ自分、、、と思いました。

    エジプトの魅力的な描写から引き込まれ、周りの顔色を伺わざるを得ない環境で育ったが故の、他責思考の主人公。それはそのまま彼の人間性になるけれど、本人も気付いていない(ふりをしていた)それに気付かせたのは、その他責思考の人間をつくった張本人で。

    だけどやっぱりそれは彼の人生だから彼がコントロールするべきだと、結局はそう思わせてくれるのがすごいです。

    めちゃくちゃ主人公に感情移入してしまったし、たぶんみんなこういう気持ちを少なからず抱えて生きているし、それは、そう考えないと生きていけないようなことが本当に多すぎるからだけど、でも結局は自分の人生なんだから嘆いているだけでは変わらなくて「自分が信じるものを自分で決める」ことでしか生きていけないんだ、と本当の意味で気づく物語でした。

    「私は歩を愛している。それは歩を信じているからではなくて、歩を愛している私を信じているからだ(趣意)」という台詞には本当に震えました。

    あーーーーもっと早く出会いたかった、素晴らしかった!!!

  • 上に続いてスルスルと読み終えた。

    女性に囲まれ、男社会で生きることに喜びを見出していた歩が、いかにも、な大学生として生きていく。
    その生き方は現代っ子らしさがあるが、阪神・淡路大震災で深くまで沈んでしまった友人、須玖が隣にいれば、歩は全く違った生き方をしていたと思う。

    姉は身近に頼るものがなくなった、サトコラヲモンサマがなくなったとき、どうしていいかわからず海外での宗教に染る。人ってなにかに縋りながら生きていくものだから、姉の宗教に頼る気持ちはわからなくもない。
    ただ巻貝アーティストとしての道に至った経緯はまったくわからない。笑

  • 別れた夫が買った家に住んで、別れた夫から振り込まれる金で暮らして、自分の祖母が他界してすぐ再婚してその家で男と住もうとする母親の幸福への執着すごいなぁと思った。

    「自分の信じるものを見つけなあかん」
    自分の信じるものってなんだろう

    「酔うと、なんかそうなっちゃうんですよね
    でも、セックス した後は、みんな自分のことをすごく話してくれるから、楽しいんです。小さな頃のこととか。なんていうか、壁がなくなる感じ?
    私、50人位の過去と悩み知ってますよ!
    私、神社みたいでしょ?」 p209


    でも内心は、まだ愚痴ってくれていた方が楽だと思っていた。
    晶は弱みを見せるような女ではなかった。だからこそ晶の愚痴は尊かった。弱っている晶を、僕は可愛いと思った。でも晶は、ある時期を境に、まったく愚痴を言わなくなった。言うまい、としている晶の頑なさが、僕らの間の空気を何か尖った、硬質なものに変えてしまった。 p244


    晶の声を聞いていると、晶が最初から僕に何ごとかを言うつもりだったことが分かった。「無理せんときな」はちょっとしたきっかけであって、他の何であっても、きっとこうなった。つまり晶は最初から臨戦態勢だったのだ。
    晶はコーヒーのカップに、手をかけていた。その、骨のように白いカップは、ふたりで出かけた美術館のスーベニアショップで買ったものだった。僕はそのカップを見て、胸が苦しくなった。おそらく、そのとき僕はもう、別れの予感を強く感じていたのだ。
    「歩って、いつもそうだよね。」
    女の子が「いつもそうだよね」と言う時は、悪い事に決まっている。その言葉に続くのは、きっとこうだ。
    「何考えてるか分からない」
    「自分の意見がないの?」
    「どうしたいのかはっきりしてよ」
    今まで答えてきた時のように、こう言うしかなかった。
    「うーん、まあ」
    この態度のせいで、女の子がますますヒートアップすることは分かっていた。でも、それ以外の言葉を発して、積極的にその雰囲気に介入することを避けてきた。僕はいつでも受け身でいたかった。勝手に怒り、さらにヒートアップしてるのは、そっちだけだよという態度でいたかった。
    「歩は、いつも、頑張ってる人のことを見下してる。」
    「自分はいつも、努力してないのに選ばれる、そう思ってるでしょ?いつだって受け身で。それで、努力して努力して、何かを得ようとしてる人を馬鹿にしてるんじゃないの?」
    その日僕は晶と別れたのだったが、晶が別れの言葉を発する前に、もう晶のことを嫌いになっていた。あれだけ好きだった、素晴らしい女性だったのに同じレベルにいたくないと思えるほどに。晶は遠い人だった。 p246


    「なんでサトラコヲモンサマやったん?」
    「見てみ」「猫?」「チャトラや」
    「うちの家によう来てたチャトラがおったやろ。」
    「あの子が伸びをしたら、お尻の穴が、ぶぶぶって震えるねん。それが可愛くてなぁ。それを見てたら、おばちゃん、なんでもどうでも良くなるんよ。」
    「チャトラの肛門ってこと?」
    「せや」

    「なんでもどうでも良くなるんよ」
    それこそが大切だった。立派なものであってはいけない。こちらを畏怖させるものであってはならない。この世で起こっている様々な出来事を、「どうでも良くなる」と思わせるもの。

    自分が信じたもの、心から信じ、寄り添ったものは、大いなる力ではなかった。偉大なる何かではなかった。それは、猫の肛門だったのだ。
    今まで散々見てきた、どこにでもある、取るに足らないものだったのだ。

    「あの子には、自分で、自分の信じるものを見つけなあかん、て言うたんや」 p300

  • 最初の方は、ヤコブが出てこなかったりサラバ!が出てこないことで、こんなにひと(歩くん)の成長に大きなインパクトを与えた出来事やひとでもその姿が薄くなってしまうんだって悲しかったけど、それはこちらが勝手に期待してたストーリーの展開だったのかなって反省。
    須玖くんはめちゃくちゃセクシー!sophisticated でありサッカーにも熱を出しちゃう、好きになってしまうわ!笑
    最後の自由奔放なお母さんと正反対にいる何もかも悟っているようなお父さんにもう涙が出てしまった。お父さんの価値観、ちょっと母に似ててどきっとする。幸せであればいい、楽しそうであればいい、そんなこと言えちゃうひとに勝ることはできない(勝ち負けではないんだけど、手も足も出ないってこと)。

  • 家庭環境に難があるものの、主人公の容姿と性格が出来すぎていて、ベタなドラマぽさを感じてしまう部分はある

    人の人格形成を1から辿れるのは面白い。

    普通の人はこんなに立ち回りについて色々考えているのだろうか
    自分がどれだけ何も考えずに人生を歩んできたか

    祖母が亡くなった直後に再婚する母
    自分の幸せへの執念

    父としての役目を終え出家する父

    母である前に、父である前に、1人の人間。
    今まで両親と1人の人間として接したことがないな。家族という役とでしか

  • 父の赴任先のイランで生まれた歩。イランと日本をまたぎ、父、母、姉、祖母、叔母、友人たちの間で悩み揺れながら生きる長い長い物語。
    歩はいつも家族が抱える問題や人間関係に揺さぶられている。上がったり下がったりどん底に落ちたり。人生曲線ぶれぶれ。人間なんてそんなものなのかもしれない。特に若い頃なんて。姉の言葉「自分の信じるものを見つけなさい」が響く。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

西加奈子の作品

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