希望病棟 (小学館文庫 か 46-2)

著者 :
  • 小学館
3.62
  • (57)
  • (163)
  • (153)
  • (21)
  • (4)
本棚登録 : 1780
感想 : 127
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784094068368

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 人の心の声が聴こえる不思議な聴診器を拾った摩周湖先生と、末期癌から回復した患者さんたちが新しい人生を歩んでいく話。

    前作と同じ聴診器なんだけど、違う使い方がされていて面白かった。貧困だったり女性蔑視だったり、社会問題とも絡めて話が進んでいて、わたしはこちらの続編の方が好きでした。

    中高生くらいにおすすめです。
    子どもにも読んでもらいたいなと思いました。



  • やっぱり垣谷美雨さん大好き。

    拾った聴診器を患者の胸にあてると、その患者の本心が聞こえてくるという現実離れした設定ながら、女性の貧困や奨学金返済問題などの社会問題、それに目を向けない国会議員など時事を盛り込んでいるので不思議とファンタジーと感じない。

    姑の変貌は一番意外かな。
    こういう政治屋(政治家でないところがミソ!)一家の一員なのにカトレア荘で1ヶ月も修行して、貴子の風俗店経営も認めて、そんなに柔軟な人いる?!と思わずにはいられない。
    でも垣谷さんの本は最後は丸くほっとする展開が多いので、らしいと言えばらしい。

    続編を期待します!

  • 患者に聴診器を当てるとその患者の心の声が聞こえるという『後悔病棟』の続編。
    「必要とする医師の間を巡るようになっている」聴診器が、今回は口下手で不愛想な医師摩周湖(妙ちくりんな名!)が手に。
    自分の気持ちがうまく表現できないと卑下していた彼女は、聴診器を使うことによって自信を回復し、考えが変わる。
    思ったことをそのまま口に出そうと決め、彼女の勧める治験療法で、担当する末期の癌患者たちも快方に向かい、新しい人生を歩み始める。
    その一人の患者=代議士の妻と姑との経緯には、著者の本領が発揮される小気味の良さが。
    さらに、この聴診器の運命が語られる終盤には、!と。
    『後悔病棟』が、人生をやり直したいと願っている患者に人生の岐路での選択は間違っていないと気づかせるのに対し、患者に新しい一歩を踏み出す力を与えるのが、『希望病棟』。

  • 大好きなシリーズなのでわくわくしながら楽しめた!

    今回の希望病棟は新人医師、摩周湖先生と
    末期がん患者の2人

    親に捨てられ孤児院で育った女子高生と
    クズな政治家の妻
    基本的にはこの2人の変化を不思議な聴診器を使って垣間見る

    ストーリーの進み方も前回とちがったカタチで楽しめたし、エンディングも想像とはまるでちがっていておどろいた

    ちがうんだけとラストは三谷幸喜の映画を見たような気持ちになった

    ほっこりします!!

  • 後悔病棟の続編。
    患者の心の声が聴こえる不思議な聴診器、それと出会った医師と患者たちの物語。
    親を知らない女子高生と、かつて子どもを捨てた、代議士の妻。
    余命わずかから、復活した先の人生の切り開き方は爽快というか痛快というかまさかの選択。
    いつも通り、一癖ある脇役がコロッと改心するあたりにひっかかりはするものの、楽しく読めた。
    人生は、ハッピーエンドのその先を生きなければならない嬉しさと苦しさがあるな、と思った。

  • 黒田摩周湖(29)は患者の気持ちが分からない医師
    先輩医師早坂ルミ子は、役目を終えた「不思議な聴診器」を摩周湖に引き渡したが…

    DNA研究を専門としている黒田摩周湖は、
    末期癌の患者に、「癌を抑制するDNAスイッチをオンにする」という治療を施す。
    治験を受ける二人の患者を、摩周湖が担当。
    小出桜子、児童養護施設に暮らす高校二年生。
    谷村貴子、衆議院議員・谷村清彦の妻、36歳。
    不思議な聴診器が聞かせる、彼女たちの抱えた問題と孤独に、摩周湖は放って置けないものを感じて…

    なぜこの二人なのか、ということは物語が動いていくうちに分かってくる。
    以前ほど聴診器の活躍は無いようだ。
    前作は章ごとに患者が異なり、死を前にして過去をやり直したい話が主体だったが、今作では、登場人物たちが自分の足で未来に向かって進んでいる。
    養護施設の調理師の桃山さん、貴子の夫の対立候補の有馬弁護士など、力を添えてくれる人々もいる。

    人は多かれ少なかれ、表と裏に別の顔を持つ。
    貴子の夫やその友人の東条は特にひどい。
    代議士や弁護士を全員信用できなくなるほど。
    垣谷美雨の強烈な風刺。
    貴子の姑の「パートでも一生懸命働けば、月30万円くらいは稼げるでしょう?」発言とか。
    でも、この姑は世間知らずだっただけで、決して愚かな人では無かった。
    だって自分の息子が馬鹿だって分かってたも〜ん。

    『読者は自分に中にある偏見や固定観念と向き合うことを余儀なくされるだろう』
    と解説に書かれている。
    貧困女性が進学や生活のために大きなお金を稼がなくてはならない時、最後の手段は風俗で働くことしかない。
    最初は皮肉で言っているのかと思っていたが、読んでいくうちに、繰り返し出てくるし、どうやら本気らしいと分かる。
    もちろん、風俗だけはやめなさい、言語道断、というキャラも出てくる。
    しかし解説者は、それが偏見や固定観念と言いたいのだろうか?
    ちょっと違うと思う。

    私は、貴子の姑と同じく、風俗には反対だ。
    しかし、風俗で働いている女性を特別視したり蔑んだりするつもりは全くない。
    お金に困った女性が性を売り物にすることでしか働けないように仕向ける男社会、そして、女性を働かせて搾り取る男が許せないと思っている。
    いつぞやの芸人の「お金に困れば、キレイなオネーちゃんが風俗で働きます」という発言が表している、そういう輩の考え方が許せないだけだ。

    垣谷美雨がこの作品で繰り返し、「貧困女性が進学や生活のために大きなお金を稼がなくてはならない時、最後の手段は風俗で働くことしかない」と書くのは、その肯定というより、その現状に目を向けて、という訴えである。
    一番許せない野郎は、こういう女性の窮状を知ろうとせず、何も対策しない、貴子の夫に代表される政治家たちだろう。

  • この手の作品も十分面白い。第二弾なので、今後も続くことを祈ります。定年とか老後とかのテーマが多い作家さんなので、毛嫌いしてる人がいたらこの作品はおすすめです。

  • 後悔病棟の続編ということで、今度は摩周湖先生がどんな成長を遂げるのかと楽しみにしていたらいい意味で裏切られた‼️自分のとらわれていた価値観を見直すことで違った人生が切り開かれる。そのためには大きな決断が必要で、生き直す潔さが綴られていた。桜子と貴子の生き様がどうなっていくのか気になってページを繰る手が止まらなかった。それを見守る摩周湖先生のどんでん返しも用意されていて読み応えバッチリの大満足できた作品だった。またお話はルミ子先生に戻るのかな。またまたワクワクが止まらない。

  • 神田川病院に赴任した女医の黒田摩周湖は、二人の末期癌の女性患者をみている。先輩のルミ子に促され、中庭で拾った聴診器を使うと患者の”心の声”が聞こえてきた。児童養護施設で育った桜子は、大人を信じていない。代議士の妻の貴子は、過去に子供を捨てたことがあるらしい。摩周湖の勧めで治験を受けた二人は快方に向かい、生き直すチャンスを得る。”従順な妻”として我慢を強いられてきた貴子は、驚きの行動に出て…!?孤独と生きづらさを抱えてきた二人はどのような道を歩むのか。共感の嵐を呼んだヒューマン・ドラマ『後悔病棟』に続く感動の長編。

  • 後悔病棟の続編。私は後悔病棟のほうが好きだった。
    ラストがまとまりすぎているのと、女性の貧困を救うのは性産業しかない、という言い切りに残念なものを感じてしまったので。

全127件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

垣谷美雨の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×