- Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101001548
作品紹介・あらすじ
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」-15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。
感想・レビュー・書評
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田村カフカとナカタさんが物理的に近づいてきた。
四国。
上巻の後半、ずんずん面白くなってきた。
キーワードは、オイディプス王の伝説か。
ナカタさんが教わったような関係性がどう絡んでいくのか。複数の人生を交互に語り、少しずつ繋げる手法は、村上春樹さんも原田マハさんも凪良ゆうさんも心憎いほど上手だ。
上巻でお気に入りは主人公の二人と大島さんだ。
大島さんが、想像力を欠いた人間を「うつろな人間」と呼び、論破するところが面白い!「想像力を欠いた狭量さや非寛容さは寄生虫と同じだ」ときっぱり言い切る。
この本でも図書館やシューベルトのピアノ・ソナタ、プッチーニのオペラが登場する。ブレンデルのピアノでシューベルトを聴こうかな。
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はじめて読んだのは、8年前。初版。19歳だったわたし。
あの時、よく読んだなあ、と改めて思った。
田村カフカ少年、こんな複雑だったっけ?
大島さん、こんなにかっこよかったっけ?
読みながらつけた付箋は12ヶ所。
前と全く違うところにしるしがついた。
だから再読っておもしろい。 -
惹きこまれる一冊。
15歳の誕生日を迎えた僕、田村カフカ。
彼が家を出て、遠くの街へ行き、図書館の片隅で暮らす…というスタート。
このままカフカ少年の冒険成長譚かと思いきや、また別の人物、ナカタさんを主体にした話も盛り込まれ、先は全く見えないながらもどんどん惹きこまれる。
カフカ少年、ナカタさん、二人はこれから交差するのか。
二人はそれぞれ大島さん、星野青年との縁に導かれて、それぞれが新しい扉を開いていくのか。
気になる、やめられない不思議な世界観を味わいつつ下巻へ。 -
村上文学のなかでは、自分探しをしながら、他人と関わって、自分を成長させていく、ノルウェイの森やねじまき鳥クロニクル系の小説。いつもながら、主人公の孤立が中央にでんと座って、さまざまなモチーフが絡み合って物語が複雑化していますね。
オィディプス王に似た父親殺しから、母親との姦通も匂わせるエディプスコンプレックスらしきものを大きな筋として、主人公カフカが自分と向き合っています。幻想世界の中には、源氏物語や雨月物語の生霊が加わり、対役のナカタさんが親近感高く描かれています。突飛だが、妙にリアリティーのあるナカタさん、好きだなー♪
物語があっちの世界に行ったり、こっちの世界に帰ってきたり、村上ワールド全開に楽しめます。 -
今更ながら、この作品を読んでいます。
著者の一番メタ的な、感性が凝縮された作品だと
私は感じています。下巻が楽しみです。 -
狭量さ、非寛容さ、全ては想像力の問題… 僕らの責任は想像力の中から始まる…
との視点、その想像力を育むために少しでも多くの小説に触れたいなと。先日読んだ奈倉有里さんの夕暮れに夜明けの歌をにもあったけど納得。
父の呪に対峙すべく15歳の僕は家を出る… -
ナカタさんがかわいい。
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きゃ! せっかく書いた感想を、間違って全部消してしまった!…好きな作品でした…。うう、。
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図書館で借りてから何日かかけて読んじゃった。途中何度か挫折しそうになったけど、別々のストーリーが繋がっていく楽しさに助けられた。
ベースとなっているのはギリシャ悲劇や源氏物語なんだということは素人の私でも分かる。 -
「村上さんのところ」で村上春樹はいろんなルートから登れる山みたいな小説がかけたらいいなと言っていたけれどこの「海辺のカフカ」は無数の登り方がある小説だと思った。
世界の終わりとハードボイルドワンダーランドのような章ごとに主人公が代わり、視点が移動する仕掛け。殺風景な描写(その描写の軽妙さが村上春樹の真髄でもあるのだが)が続いて、退屈になってきた時には気分転換として、シリアスあるいはグロテスクな描写が続いたときには精神的緊張の糸を解す役割として効果的に働いていると思う。片方の視点だけを別々に再読して、印象の違いを楽しんでみたい。
田村カフカの「坑夫」についての感想を述べるシーンと大島さんがカフカにギリシャ悲劇におけるアイロニーの意味について教えるシーンがたまらなく好きだ。
自分の人生は誰かが決めていることをなぞっているに過ぎなくて、いくら努力しようと徒労に過ぎないと告白する様はまさに坑夫の主人公に自分を重ねている証拠。
「人が運命を選ぶのではなく、運命が人を選ぶ。」この不条理とも言える現実に絶望するのではなく、そこにあるアイロニーを直視して、より深く、より優しい人になってほしいというメッセージを僕は受け取った。
ナカタ編は猫と喋るシーン、ジョニーウォーカーとのシーンなど見どころはたくさんあるが四国への道中でナカタさんを助ける人々がいちいち魅力的。OL二人は親切だし、営業の男の子は陰がある。トラック運転手は言葉遣いこそ粗雑かもしれないが建前のない本質的な人間。逆よりずっといい。