行人 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101010120

感想・レビュー・書評

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  • これは読了に結構時間がかかってしまった。

    おそらく自分にとって、主人公=兄の一郎を客観的に描く文体にうまく馴染めなかったからではないか。
    正直、裏の説明文を読まなければこの作品が兄に関してのものであるということを理解するのに、半分くらい読み終えてようやく気づく、という感じであろう。
    主人公をあくまで客観的に描くというやり方は非常に面白いが同時に面白くなくもある。他の作品も割と客観的に淡々と描くものが多く感じるが、この作品は特に顕著だと思う。

    まだ自分にはこの時期の作品を理解することが出来ないかとなると若干悔しさもこみ上げてくるが、めげずに他の作品も鑑賞するとする。

  • 一郎の苦悩が壮絶で痛々しい。幸せになる方法を追求しながら、実際は理想とする幸せから離れていくという矛盾。また、その矛盾をも良くわかっているのに追求をやめられない。いい加減=良い加減 やっぱ これに尽きるんだろうなと。 次はラスト、こころ。

  • 漱石に限らず、この時代の文章は
    「語らずに語り、語るが語れず」
    という感じがする。
    隠微な空気や
    胸がやけつくような愚直さ

    友人の手紙は長すぎる気がするも、
    最後の文がやさしくて
    じんとした。

  • いかにも夏目漱石らしい、美しい文章で、淡々と、ただ静かに物語は流れる。何と言うか、この人の小説は水を思わせる。穏やかな海、川、曇りの日の湖。この小説もまさにそんな感じで、暑い夏の描写の中でも、どこか涼しげな冷たさがある。一人称のはずの小説なのに、何と言うかことごとく冷淡に進む。
    妻が弟を愛しているのではないかと苦悩する兄。その苦悩によって兄は妻を疑うことしか出来ず、ますます関係は悪化する。それを、他人事のように眺める弟。
    小説を読み終えた時、心をいっぱいにしていたのはお兄さんの子どものように美しい苦悩だった。静かに、しかし正直に妻を愛するお兄さんの悲しさが切なかった。

  • こころ、につながる佳作。ダークトーンな夏目節が冴える。

    追記。

    佳作、などと書いているが、しばらく時間が経ってみると、強烈な印象として蘇ってくる。

  • 主な登場人物は、二郎と二郎の兄一郎、兄嫁の直、両親、岡田夫妻、妹の重、家の厄介者のお貞さん、二郎の友人三沢、あの女呼ばれる入院中の芸者

    まだ結婚の気配のない二郎の視点から、上手くいかない兄夫婦の問題を中心に話が展開してゆく。

    その中で、色々な種類の「家」のあり様、上手くいっている夫婦の岡田、とんとん拍子で結婚に向かうお貞さん、嫁いだ後に不縁になり精神病になった女など、が書かれている。

    それぞれの人物が互いに対比されているため、話に明暗・緩急がつき、リズムが生まれている。

    また、舞台が東京、大阪、和歌山、その他となっており。海、山、都市、田舎、観光地の描写が話の展開と共に入れ替わり、情景を楽しむ事ができる。

    行きつく所は理智の過ぎている一郎の性質が引き起こす苦悩であるが、希望の持てる終わり方で、読後感もすっきりしている。

  • ラストにくるHさんの手紙がすごい。頭がいい人ほど幸せになれん気がする。

  • この本には、真の「孤独」が描かれている、と思う。
    漱石の作品の中では、一番のお気に入り。

  • 明治に書かれた、今を生きる人のための本。

  • 主人公、兄、嫂を中心としてそれを取り巻く人々の心情が描き出される小世界。

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著者プロフィール

1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)にて誕生。帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表。翌年、『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。

「2021年 『夏目漱石大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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