ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.78
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  • (2004)
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本棚登録 : 19024
感想 : 2166
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036168

感想・レビュー・書評

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  • 自分も奥村先生側の人間なので秀美のお前モテないだろ、つまらない等の言葉に耳が痛くて仕方がなかった。
    それと同時に学生時代、教師や親、同級生に傷つけられることを恐れていい子で生きてきた自分からすると自由な発想と確固たる価値観で物事に立ち向かう秀美は眩しくかっこよく羨ましくとても魅力的に見えた。

    読後は一通り凝り固まった価値観をを打ちのめされた後まあ力抜いて自分なりの価値観で生きていけばいいじゃん、全部に丸をつけることから始めようやって背中を押された気持ちになった。

    • workmaさん
      つけものさんの、「まあ力抜いて自分なりの価値観で生きていけばいいじゃん、全部に丸をつけることから始めようやって背中を押された気持ちになった」...
      つけものさんの、「まあ力抜いて自分なりの価値観で生きていけばいいじゃん、全部に丸をつけることから始めようやって背中を押された気持ちになった」
      という言葉に共感します。自分、地味な学生だったので、「自分は自分で生きていいんだ」と励まされた物語です。
      2021/05/03
    • つけものさん
      コメントありがとうございます。
      自分も学生時代は周りから見て色の薄い学生生活を送っていましたが、同時に自分の人生において大切な価値観を育めた...
      コメントありがとうございます。
      自分も学生時代は周りから見て色の薄い学生生活を送っていましたが、同時に自分の人生において大切な価値観を育めた期間だったと今では思えます。
      コメントをいただき同じような方がいらっしゃる事を大変嬉しく思います。お互い自分らしくありましょう。
      2021/09/03
  • 番外編・眠れる分度器

    「あの人たちの言う良いこと悪いことの基準て、ちっとも、おもしろくないと思う。良い人間と悪い人間のたった二通りしかないと思いますか?良いセックスと悪いセックスの二種類だけで、男と女が寝るんですか?女手ひとつだと、母親は、そんなにも辛酸を舐めなきゃいけないって決まってるんですか?その子供は、必ず歪んだ育ち方をするんですか?人間って、そんなもんじゃないでしょう」(p.111)

  • この本についてはここ数年来、新潮文庫の夏の100冊フェアでよく見かけていて、とても興味深いタイトルだと思っていた。つい先日ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』を読み、主人公が学校でいい成績を取ろうと苦心して結局つぶれてしまうストーリーだったので、本書を読めば何か対比できるものがあるのでは、と思い読んでみた。

    結論、非常にがっかりした。

    主人公は勉強ができないというが、基本的に勉強に向き合っていないし、作品としても扱っていない。勉強するシーンもまったくなければ、勉強についての思いなども特にない。最初のエピソードで学年トップの同級生を幼馴染の色仕掛けを利用しておとしめるのと、「勉強ができても変な顔で女にもてなかったら虚しい」くらいか。最終的に大学に行くことに決めたらしいが、それも幼馴染に「大学で勉強して私に教えて」と言われただけで、自発性はない。期待していた勉強という一点において、とうてい満足できるものではなかった。

    人間関係はとっても二元論的。母親、祖父、担任(兼サッカー部顧問)、彼女らは主人公を理解しすぎなくらいよく理解する味方であり、成績学年トップの同級生や小、中の担任などの悪役の言動は極端にひねくれており、リアリティーをまったく感じられず気持ち悪かった。作品全体が軽い印象。

    父親がいないことや裕福でないことを軸に、ステレオタイプな大人たち、マイノリティへの偏見などへの反論が作品の根底にある。中にはいいことを言ってるな、と思わせるところもあるものの、基本的に自己肯定、自己満足で、屁理屈とも呼べるものをあれこれ展開する。勉強はしない割に、本を読んでるおかげなのかなんなのかしらないけど、変に難しい言葉を使ったり、冗長な表現が多くうんざりさせられる。自分にとっては哲学とか名言とは受け止められなかった。

    自分が勝手に偏った期待を持ったせいも多分にあると思うけど、残念だった。この素晴らしいタイトルでなければよかったかもしれない。また、中高生で読めばもっと違った感想だったかもしれない。

    • kurodamanabuさん
      こんなコメントが打てる機能があったなんて知らず、どうせなので僕もコメントを返させていただきます。レビューは自分が再読する時のために書いていた...
      こんなコメントが打てる機能があったなんて知らず、どうせなので僕もコメントを返させていただきます。レビューは自分が再読する時のために書いていたので、こういった形で反応があったことに驚きつつ、嬉しくもありました。なにより、アクションを起こして、コメントを下さり、ありがとうございました。レビューを拝見し、こういった解釈もあったんだ、ここは自分と同じこと思ってるなぁと非常に刺激になりました。大多数がこれは良いと言う中で、これは良くなかったと思うと、自分はズレているのかと考えてしまう時があります。今回は、そういう意味では同じ考えを持った仲間に出会えたと勝手ながらに喜んでいる訳ですが、同時に、自分はこのままでいいのだという励みにも繋がりました。改めて、ありがとうございました。
      追進:本棚のフォローをさせていただきました。
      2013/10/19
    • kurodamanabuさん
      フォローありがとうございます!
      これからも、機会があればこうしたコンタクトのやり取りが行えることを楽しみにしてます。
      フォローありがとうございます!
      これからも、機会があればこうしたコンタクトのやり取りが行えることを楽しみにしてます。
      2013/10/19
  • 放課後の音符に続いて再読。


    あとがきで山田さんがむしろ大人に読んでほしいって書いてたけど、再読してみて改めて感じることが多かった。


    主人公秀美くんと同じ高校生のときに読んだときは、秀美くんの生き方がすごく魅力的だなって思ってたけど


    今回はむしろその秀美くんの周りの人物にひかれました。


    特にひかれたのは、お母さんとおじいちゃん。


    価値づけで悩んだりする時期ってあるけど、世の中でよしとされている価値観にしばられて生きるのは窮屈なときってある。


    でもそれはけしてだめなことじゃないし、価値って結局自分でつけるもんだよね。


    「〇をつけよ」はまさに私の気持ちを代弁してくれているような話。


    第三者によって○か×か決められたくなんかない。


    色あせることない名作。

  • 生きていく上で大切にしたい考え方や物の見方が詰まっていて、バイブルにしたいと思える本
    出逢えてよかった!と思える一冊
    学生の時に知っていたらなぁ

  • 濃いキャラクターがたくさん登場しますが、私は小学校の奥村先生の話がとても印象的でした。
    彼は常識が全てのようなつまらない男で、従順な生徒の上に立つことで保ってきたプライドが、本質を突いてくる秀美の言動に脅かされ苛ついている。そんな奥村先生が秀美や仁子に翻弄される姿が痛快なのだけど、本人には自分のつまらなさに自覚がありながらも気づかないふりをしている。そんなどうにか取り繕うとしているところが人間らしく、そういう部分って誰にでもあるのかもと思ってしまった。
    回想場面との間に空白がなく気づいたら話が戻っていたり、どういうこと?とわかりにくく感じる部分があるのが気になった。
    また、秀美の哲学的な考え方や、語彙力がとても勉強できない人に思えないことも、小説だから仕方ないけど気になった。
    最後のあとがきが面白い。

  • この本の中の大人は、みんな弱い部分を持っていて、それを隠したり、大人だから守るものも多くなってしまうのか、情けない行動をする人が多い。んで、それは多分秀美がそこばっかり目に付くからよく描かれているんだと思う。でもそれは全然悪いことじゃなくて、子供と大人の違いってそこなんだろうなぁと思う。てか、子供から見て情けなく見える大人も、秀美の母・仁子のように誰にも邪魔されない強さを持っている大人も、どちらも素晴らしいと思うし憧れるなぁと思った。
    高3にしては大人びた考えを持っている秀美だが、純粋な心をみると年相応の印象を受ける。
    最初は大人を舐めている、ませた子供の話かと思ったが、色々なことを純粋さ故によく考え、悩んで成長していく姿にとても感心した。秀美もだし、秀美を温かく見守る祖父と母も、とても賢い人達だなぁと思った。
    私自身今大学1年で、ついこの間まで反抗期だったのでなんか秀美の気持ちをよく理解出来たように思う。今読めてよかった。

  • 多数派や権威ある人の発言や見解に対し、ほとんど何の疑いも持たずに「その通りだ」と同調してしまう人たちがいる。私自身、子どもの頃からそんな人たちを好ましく思っていなかったが、本書の主人公、秀美もきっとそうだろうと思った。
    「○をつけよ」にある、秀美の言葉には深く共感した。

    >事実は、本当は、何も呼び起こしたりしない。そこに、丸印、ばつ印をつけるのは間違っていると、ぼくは思うのだ。父親がいないという事実に、白黒は付けられないし、そぐわない。何故なら、それは、ただの絶対でしかないからだ。

    >ぼくが、昔から憎んだのは、第三者の発する「やっぱりねえ」という言葉だった。ぼくは、その逆説を証明することで、自分自身の内の正論を作り上げて来たのだ。それは、ぼくは、ぼくである、というそのことだ。他人が語れる存在にはならないという決意だ。

    自分自身が見知らぬ誰かに乗っ取られることのないよう、これからも注意を払って生きていきたい。自分の意思で自分の考えを持ち、自分の言葉で人に伝えられる己でありたい。もしも人から弱い部分を突かれてしまったとしても、誰かのせいにするのではなく、自分の責任として受け止められるようにありたい。改めて、そう思った。

  • 見た目、チャラっとしたイメージをうける一冊ですが、深い。
    子どもって、大人が考えているよりもずっと色々なことを理解し大人と同じように、ときにはそれ以上に考えている。大人がそれを受け止められず力で押さえつけようとしたとき歪みが生まれるんだと思う。長年生きてるからという理由で大人が子どもより全て優れているとは限らない。学ぶべき所は子どもからでも素直に学ぶべき。

  • 心に残る、素敵な一冊。今出会えてよかったと思える本。
    高校生という大人ではない年代の視点から、大人と子供には見えない、世界の何気ない側面の大切さを教えてくれる。さり気無いせいで見過ごしがちであったり、もしくは忙しさを理由に考えることを放棄してしまう日常の様々な側面や溢れる物事が、素直で真っ直ぐな視点を持つ主人公によって映し出されている。
    正しさが時に疎まれてしまう社会や世の中に、いつの間にか順応してしまうこと。その不自然な順応に違和感を感じなくなってしまうこと。そして大人になる、ということがどんなことであるのか。そういうものが、複雑な人間の心理描写と繋がりながら描かれている。
    大切なことに気づかせてくれる、本当に素敵な本。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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