ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101036168

感想・レビュー・書評

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  • 文章が難しい箇所がいくつかあって、意味が分かる人には深いのかもしれないけど、分からない人には考えても分からない類の難しさだった。
    読む前に想像していた、「かっこよくて個性的な男子高校生の清々しいお話」というのとは、少し違ったように感じる。主人公のかっこよさとか個性とかは、そんなに際立って描かれていない気がした。
    確かに変わり者の男の子だけど、多分誰もが抱える自分の性格とか考え方に対する悩みを、主人公目線でストレートに描かれているという感じで、「変わってるなー」よりは、「分かる分かる」という感じ。
    みんな変わってて、みんな普通で、みんな色々なこと考えて生きてるんだなーと思った。でも、あまり心に響くものはなかった。

  • 山田秀美くん。どタイプ。
    同じクラスにいたら、告白できないまま好きでいるだろうなあ。

  • 大好きになった一木けいさんがずっと読んできたという方で、初めて読んでみた。
    うーーん。個人的には、一木さんの、今まさにとなりに生きていそうな、繊細な人物描写の原点を期待していただけに、少しがっかり。22年前初版で、当時の高校生という設定だからか自分の高校時代との共感性が乏しく、高校生…かな…と現実味のない主人公のように思えた。

    青春時代を扱う小説だと、どうしても自分自身の青春時代との重なりから考えてしまうから、当然なのかもしれない。「昔」というにはそれほど昔でもないことも、読む上で変な身近さを勝手に感じてしまったからかもしれない。

    例えば、主人公の時田がよく使っていた「即物的」という言葉。思考の中や、彼の発言内ならまだわかるのだけれど、幼なじみの真理も会話の中で発していることに違和感。なんで主人公が使うこの言葉を、イケイケな女子である真理も唐突に言うのかな?この頃の高校生ってそんなに一般的に使う言葉だったのかな?
    そんな、些細なズレを気にしてしまったからかそこまで内容に入り込めずなまま終わってしまった。朝井リョウ、湊かなえ、一木けいなど時代に乗ったリアルさが漂う作家が描く青春ストーリーよりも、細やかな部分で共感性がなく(自分にとって)もどかしいまま終わってしまった。悔しいので、この方のもっと違うテーマの本も読んでみたい。
    改めて、小説を読むときに、私は登場人物たちに過去の自分や今の自分を投影させて、共感し、尊敬し、過去や今を捉えなおすことを楽しんでいるのだなぁと気づいた。
    どらえもんの言葉、「想像力は思いやりだ。想像することを諦めたら、破壊が始まるんだ」
    じわりじわりとくる。新しい文に触れて、物語の中の、お話の中の登場人物に触れて。彼らの思いを想像し、作者の意図を想像する。過去の自分や今自分が見えてなかったことを想像する。
    想像の量は、本に直接書いてなかったことのほうが大きい。どこまでも広がり、膨らむ。
    私自身の破壊が始まらないように、色々なジャンルの本を読みつづけたい。

  • 勉強できないと言いながらも、読書家だったり世の中のことをよく知ってる、年上のお姉さんと付き合ってるモテる?高校生の物語。あとがきを読んで作者に近い主人公なのかなと思いました。
    周りとなかなかうまくやれないのだけど、一緒に暮らしてる祖父とちょっとヤンチャな母親の会話がとても暖かいです。
    最後の番外編がとても良かったです。

  • 秀美くんの(彼は、秀美くん、と呼びたくなる。これは仁子さんの育て方の結果だと思う)疑問や怒りに共感しつつも、教師の、秀美くんに対する苛立ちや不快感にも共感できてしまうのは、私の子どもの部分が失われたからなのか。それを成長と呼ぶのはなにか間違っている気がする。
    こうあってほしい、と子どもに対して考えていても、こうあれ、と強要することはできない。子どもはそんなものを受け取らない。だから結局仁子さんのように、我が身で体現してそれを見せるのが、一緒に住んでいる間は最も効果的な方法なのかもしれない。家を出たらまた話は全く変わると思うけれど。

  • 短編集はテンポ良く読めるので良い。
    こんな大人びた小学生でも高校生でもなかったなと過去の自分を恥じてみたり。

  • いつもはミステリーばかり読んでいますが、SNSで本書をお勧めされたので読んでみました。

    全部読んだ後の作者のあとがきが面白い。

    自分が小学生の頃に名札をよく付け忘れていて、学年主任の先生にそれをきつく咎められた事を思い出した。学年主任の先生も名札を付けていないのに、どうしてこんなに怒られるんだと思ったっけな。

    理科の先生に「小さい車と、大きい車がぶつかったらどちらがよりひどく壊れるでしょうか」という質問を当てられて「小さい車です」と答えたら、「壁にぶつかった場合の話をしているんだ」と後出しで言われて どうしてこんな簡単な問題も分からないんだ と小馬鹿にされことも思い出した。

    週一で昼休みにクラスメイト全員が一緒に遊べる遊びを考える「遊び係」にみんななりたくない状況を見て「みんなやりたくない係なら、なくしてもいいと思います。」と言って滅茶苦茶担任に怒られた時もあった。

    大人ってどうしてこんなことで怒るんだろうって不思議に思っていたあの頃が蘇る苦い青春小説でした。

    その後自分は矯正してしまって、たまに自分で自分を本当につまらない人間だなと思うことが多々ある。
    だから、かなり今更ながら読書を始めたっていうのもあるんだけど。

    後悔までとはいかないけれど、大人になってからオリジナルであることがありありと分かる人に出会うと「素敵だなあ」と悔しくなることがあります。あー、苦い。

  • 勉強ができなくても、自分の中に独自の揺るがない価値観を育てた秀美。
    小さい頃から権威に屈せず、堂々とした意見を言える彼は立派だ。
    人の噂や色眼鏡に惑わされず、物事を自分の物差しで判断する力を養ったのは、
    相当アクのある、でも一本筋の通った母親と、
    女好きだけど、優しくて本質を見抜く目を持つ祖父だった。
    二人の、彼に対する付かず離れずの愛情が微笑ましい。

    心の中で葛藤し、もがきながら成長する青年が眩しくて、
    新緑のようなエネルギーを感じた。

  • 読み終え、本より先に山田詠美という作家に更に興味を感じる。
    読む本ごとに異なる感動があるのだが、メッセージはぶれなていない。
    もう何冊か読み込んでみたい。

    僕は勉強ができない。は、あとがきにも書いてあるが、叙情は常に遅れてきた客観視の中に存在する。その時代を一生懸命生きてきたからこそこの本の良さがわかる。
    男の子の半分くらいは、勉強より他の楽しいことに夢中で、それって人間性に繋がって行くんだな。
    村上龍の69、金城一紀のGOのような青春小説と同様に生涯記憶に残る一冊。
    しかも、女流作家が書いた青春小説に驚きです。
    A 2 Zにも登場している母、仁子は魅力的、同時に子どもの感性について大人が価値観を押しつけることにも考えさせられた。
    こういった良い青春小説を読んだあとはいつも必ず思う。
    人生もっと楽しもう!

    • 9nanokaさん
      この本に関しては、意見が合いそうな気がします。どこにでもいるようなちょっとダメな大人を悪の根源のように書いていますよね笑。部長のような…(^...
      この本に関しては、意見が合いそうな気がします。どこにでもいるようなちょっとダメな大人を悪の根源のように書いていますよね笑。部長のような…(^^;;
      komoroさんも勉強より他の楽しいことに夢中な男の子でしたか(^^)
      きっと残りの半分に類するような子供が、そのまま育つと悪の根源になっちゃうんだろうなぁとレビューを読んで思いました。
      2014/08/30
  • 勉強はできないのに本を読んでいるからと言って饒舌に哲学めいたことを語りたがる、勉強はできないが女性にはもてると自負している主人公がたとえ冗談でも気持ち悪い。
    思春期ってこういうもんでしょ?青春ってこういうもんでしょ?こういう名言が学生とか若者には響くんでしょ?とすべてウケを狙っているような語り方というか、言葉なんてこれっぽっちも期待していなかったしいらなかった。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。85年『ベッドタイムアイズ』で文藝賞受賞。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞、89年『風葬の教室』で平林たい子文学賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花文学賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞、16年「生鮮てるてる坊主」で川端康成文学賞を受賞。他の著書『ぼくは勉強ができない』『姫君』『学問』『つみびと』『ファースト クラッシュ』『血も涙もある』他多数。



「2022年 『私のことだま漂流記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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