金閣寺 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101050089

感想・レビュー・書評

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  • 三島由紀夫を今の地位へ押し上げた圧倒的金字塔。
    作者の美に対する特異な感性・哲学が乗り移った登場人物が饒舌体で読者を圧倒する。
    何より彼の文学表現は豪華絢爛でミニマルの対極地。意外と本作は三島作品の読み始めとしては取っ付きにくいかもしれないが、必読である事には変わりない一冊。

  • ずっと気になっていた本。
    やっと読みました。

    生と死、美と醜、陽と陰、光と影、昼と夜、男と女、正と邪、善と悪、明と暗など、様々な対比を用いながら、主人公が終末へと向かっていく過程を描いているのですが、決定打は足りない印象。
    あえてそうしているのであれば、それはそれで非常に練られた手法だと思います。

    基本的にはロジカルに話が進んでいくように思うのですが、終末へと向かう方法を主人公が思いついた瞬間については、かなり飛躍があるように思いました。
    その瞬間もロジカルに進められたら、完璧だったと思います。
    が、これも狙っていたのだとしたら、その計画性には恐れ入ります。

    表現力については、凄まじいほどの豊かさを感じました。
    これほど奥行きのある表現は初めて見ましたし、それでいて新鮮で、視覚的で、的確。
    日本語そのもののもつ可能性や広がりや深み、そういったものも感じながら、読むことができました。

  • 自身の不完全性に直面し、金閣という美の象徴に苦しめられる。疎外感を覚える社会の中で、愚鈍な生に絶望し、いつしか純潔な破滅を望むようになる。内面に大きな闇を抱え、理解されないことこそがアイデンティティになっているという自負を持つ主人公。それと対照的に、他者に対して開放的で、物事の明るい側面を見つめているように見える鶴川や、コンプレックスを逆に利用し、世俗的な社会を乗りこなしている柏木など、主人公の内面との向き合い方は異なる姿勢を見せる人物像が印象的だった。

  • 時代を超えて、これが色んな人に読まれて、そして名作だと言われる理由が、何となく分かった気がする。

    この主人公の、異常なのではと思える程の"美"への執着は、吃りがある自分を美しくないと思っているからであり、その"美"の象徴である金閣寺に執心している、と言うのが、三島由紀夫の圧倒的な筆力と日本語の美しさで描かれている。

    父に連れられて初めて金閣寺を見た時の主人公のセリフ。「美というものは、こんなにも美しくないものなのだろうか」と言う日本語は、とっても美しいと思った。

    そして、主人公が"行為"に及ぶまでの心の動きが、非常に繊細に、そしてやはり美しく書かれている。

    読んでどうこう、とかじゃないし、きっと難解なんだろう。1回読んだだけでは全く理解が出来ない。これは時間をとって、がっつり読み直ししなくてはいけない。

  • 金閣寺を放火するまでに至った青年の告白。

    耽美的であり、徹底的に洗練された思想の深みを感じつつも、読者である私自身の教養の浅さからか、理解できない表現や思考が多く、読破するのが大変だった。

    いずれまた是非、読み直してみたい。

  • 三島由紀夫が天才と揶揄される理由がよくわかる。
    鬱屈としたこの物語を、ここまで綺麗に書き上げられるものかと感嘆した。
    人の抱えるコンプレックスを描くために、自分の闇の部分とかなり向き合ったのではないだろうか。
    心臓を掴まれるような思いがした。
    しかし、この苦悩を本当に理解できるのは、男性だけだろうなと思う。


  • 〝裏に向ひ外に向つて逢着せび便ち殺せ、仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し、父母に逢うては父母を殺し、親眷に逢うては親眷をころして、始めて解脱を得ん。物と拘はらず透脱自在なり〟

     吃りという不具を持つ少年が、仏門と金閣寺をその人生の土台ないしは背景として、父の死、恋した異性の死、戦争の終結、友の死、異性との性交の前に立ちはだかった金閣寺を焼き打つことで、生を取り戻すまでを描く。

     恥ずかしながら、私は金閣に起きた放火事件がノンフィクションであることを読了する今の今まで知らなかった。

     そして、本作は、第二次世界大戦の戦火の中を過ごす少年時代と戦後の復興前の日本を過ごす青年時代とで、主人公の精神生活と社会生活とを細部まで描いていた。

     作り話には決して思えない。起こり得るべくして起きた。そんな、確かな実感を抱くような物語だと感じた。

    (2021.9.14)
     

  • いつかは読んでみたいと思っていた三島由紀夫。

    主人公の内面描写がすごい。
    倒錯した美学と深い思考がこれでもかと描かれている。

    人間のドロっとした部分は、自分にも思い当たる節を感じてドキッとしながら読んだ。

    そんな中、老師が俗っぽくて風刺が効いていて面白かった。

    唯一明るい存在だと思っていた鶴川が柏木に手紙を送っていたことに驚いた。それぞれ闇を抱えているのが人間というものなのだろう。
    そして柏木には何か人を惹きつけるものがあるのだろう。


    柏木の言葉
    「この世界を変貌させるものは認識だ。
    この生を耐えるために、人間は認識の武器を持ったのだといおう。」
    が印象に残った。

     

  • 昔の小説を読むには時間がかかる。
    だからドラマやYouTubeで解説を見た方が早いのだが、三島由紀夫さんが知りたくて。

    完璧主義、自己愛、半端のない執着…
    疲れるだろうな。しんどいだろうな。

    「美」は私の人生の概念にそれほどなかったが、「コンプレックスの対称」としてみれば、この主人公のようにいつでもどこでも線で結びついて出てくる訳ではないものの、誰にでも多少あるものだと思った。

    だができれば「そんなのは執着だよ」と流して金閣を燃やさない「強さ」と言われるものを備えてほしい、それはそうでなければ今の世の中ではどうしても生きづらいから。

  • どうしたらこんな文章を書くことができるのだろう。決して短くはない話の初めから終わりまで、一時も途切れることなく続く張りつめた緊張感。理知的に構成されつくし、解析されつくした物語を成す一文一文は、驚くほど比喩と詩情に富んでいる。それでいて作者の筆の呼吸やリズムは人間的に乱れることがなく、その語りは読者である私たちを物語の方へ誘い引き寄せはしても、完全に内部へ入り込むことは許さない。「無欠」という言葉はこの小説の為にあるとさえ思える。(だから読んでいて疲れる。)そしてこの異様なまでの「完全性への固執」が、三島由紀夫の生そのものだったようにさえ感じられる。
    いつも思うのだけれど、三島由紀夫の人生は当人によって緻密に計算・構成されつくした「現実世界の小説」で、自決も含めて彼は周到に用意したプロットをただひとつひとつ実行に移していったにすぎないのではないか、と。その証拠に(かどうかは実際分からないけれど)、作中で彼は主人公に述べさせている。「運命というものに、われわれは突如としてぶつかるのではない。のちに死刑になるべき男は、日頃ゆく道筋の電柱や踏切にも、たえず刑架の幻をえがいて、その幻に親しんでいる筈だ。」と。この小説『金閣寺』を読み終えて、そのゆるぎない、欠くところのない非現実的な美しさに、私は畏怖の念といわれのない悲しみを抱いている。

    • すりむさん
      小林秀雄は「なんで最後に主人公を死なせなかったんだ?だから小説として完結してない」と三島に意地悪を言っています。どう思われますか? 三島にと...
      小林秀雄は「なんで最後に主人公を死なせなかったんだ?だから小説として完結してない」と三島に意地悪を言っています。どう思われますか? 三島にとってはこの時点はまだ「刑架の幻」の段階だったのかもしれませんね。
      2011/06/02
    • celineshonagonさん
      コメントを下さっていたのですね!ありがとうございます。私は逆に「なんで主人公を死なせなければいけないんだ?」という感じです。金閣を焼くことに...
      コメントを下さっていたのですね!ありがとうございます。私は逆に「なんで主人公を死なせなければいけないんだ?」という感じです。金閣を焼くことによってしか繋ぎえなった生への一筋の望み……こんなラストほど悲劇的で美しく完成されたものを他に思いつきません。すりむさんはどう思われますか?
      2011/06/30
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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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