人間そっくり (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101121123

感想・レビュー・書評

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  • SFとはしたけれど、果たして「ぴったり」とは言いにくい。
    読み進むにつれ世界が歪み、反転していく。その様は見事。
    果たして見慣れているはずのこの景色は、ホントウなんだろうか。全ては「そっくり」なのかも知れない。
    眩暈を覚える怪作。

  • 日本のSF小説。自分を火星人と名乗る男とのやり取り、主に会話で176ページというその構成がそもそも凄い。ラストがあははうふふ。正気と常識の意味を考える。

  • 今の時代に読むとナンダカナーな感じはしますが、世界観にはすっかり引き込まれます。文章もなめらかで饒舌でうっとりする。素敵な作品。

  • 【本の内容】
    《こんにちは火星人》というラジオ番組の脚本家のところへあらわれた自称・火星人――彼はいったい何者か?
    異色のSF長編小説。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    『砂の女』『箱男』など前衛的な作風で知られた作家、安部公房(1924~93年)が、再びじわじわと注目を集めている。

    娘のねりさんの『安部公房伝』が新潮社から刊行され、文芸誌「群像」では、政治学者、苅部直さんの連載評論「安部公房を読む」が続く。

    国際的にも評価の高い小説群の中で、とりわけ本作は背筋がゾワッと冷える。

    ラジオ番組「こんにちは火星人」の脚本家のもとに、「ぼくは火星人なんです」と語る男が訪れた。

    人間そっくりでも、本物なのだと言い張る。

    最初は、単なる正気を失った男と片づけていた作家は、話に振り回されるうち、自分とは、そもそも人間とは何なのかよく分からなくなる……。

    作家の大江健三郎さんが一人で選考する文学賞を今年、星野智幸『俺俺』(新潮社)に贈った際、安部公房の作品に似ていると語り、その文学の特徴を「小説的思考力」にあると述べた。

    想像のつかない設定を作り、話を展開する思考力。

    その才能を持つ安部さんが、「想定外」の出来事が続く震災後の日本に生きていたら、どんな物語を紡いだのかとぼんやり思う。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 昭和40年代に書かれた作品と思えば、斬新だったのかも知れないが、今読むと今ひとつだった。

    読後に、得体の知れない静かな恐怖感、日常に見えてもしかしたら的な悪寒を感じなくはないけれど、たぶん、私(読者)がいまやそれに慣れきってしまっているのでしょう。
    安部SF作品の中でも、イマイチだなーという感じ。

    解説は、福島正実。SFマガジン解説の立役者、中心人物なので、解説から読むと、作品が生み出されるに到った背景的なことがわかります。

  • 読む前と読んだ後で読者の現実を変えてしまう、ホラーコメディの傑作だ!

  • SFというよりも徹底したまでの論理性の追求と、想像力の飛躍を突き詰めた作品のように感じた。如才ない自称火星人男の雄弁ぶりにぐいぐいと引き込まれて行く。一見冗長に思われる火星人男の口上が、透徹で清廉な論理性を積み重ねている。難渋する主人公の状況や、諄々と相手を説き伏せ、帰らせようとするやりとりが非常に可笑しくもある。事実は公理。公理は証明できないからこそ公理である。ウィトゲンシュタインの言語ゲームを思い出した。

  • 安部公房作品によく見られるモチーフである追うものと追われるものがいつの間にか逆転し誰が追われているのか誰を追っているのかがひどくあいまいになってくる。本作もそのモチーフが存分に生かされている。人間そっくりの火星人なのか、はたまた人間なのか…。2013/397

  • 想像していたより読みやすかったので驚きました。内容はわかったようなわからないような、考えすぎると深みにはまってしまうような、読んでいるうちに自分でも何だかわからなくなっていました。
    昔、思春期の自分とは何だろうと、ぐるぐる考えていたことを思い出しました。不思議な作品ですけどハマりそうです。

  • 自分は火星人だと主張する男の訪問により、自分が何だか分からなくなってしまうラジオの脚本家の話。

    落語の粗忽長屋を聴いて、この小説を思い出し、再読。
    粗忽長屋は、行き倒れになった死体を自分のものだと思い込んでしまったそそっかしい男が、結局自分は何者なんだか分からなくなってしまうという噺。

    数年前にこの小説を読んだときは、何でもない相談から、二人の掛け合いで途方もない世界へと連れて行かれる、ブラックマヨネーズの漫才を連想した。

    相手は完全に狂ったようなことを話している、それを分かっていながら、知らず知らず、相手のペースに飲まれて気づけば自分も狂っている。

    狂っているとは何なのか。
    真実は誰が決めるのか。

    脚本家と自称火星人の男、二人の密室でのやりとりの他は、
    それぞれの妻が少し出てくるだけ。
    狭い舞台設定の中に、これでもかと引き込まれる。

    オチのブラックな加減も、結構好き。

    今度は読み終わってから、映画で見た、松尾スズキの『クワイエットルームにようこそ』を思い出した。

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著者プロフィール

安部公房
大正十三(一九二四)年、東京に生まれる。少年期を旧満州の奉天(現在の藩陽)で過ごす。昭和二十三(一九四八)年、東京大学医学部卒業。同二十六年『壁』で芥川賞受賞。『砂の女』で読売文学賞、戯曲『友達』で谷崎賞受賞。その他の主著に『燃えつきた地図』『内なる辺境』『箱男』『方舟さくら丸』など。平成五(一九九三)年没。

「2019年 『内なる辺境/都市への回路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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