パプリカ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101171401

感想・レビュー・書評

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  • 財団法人精神医学研究所の研究員である29歳の千葉敦子は、おなじ研究所に勤める時田洪作とともに、ノーベル医学生理学賞の受賞候補者です。時田らは、患者の夢の世界を映像化したりそこに入っていくことのできるテクノロジーを開発し、敦子は「パプリカ」という少女に扮して患者の夢のなかで彼らの症状の解析をおこない、治癒にみちびきます。

    一方、研究所の副理事長である乾精次郎は、寵愛する弟子の小山内守雄とともに、敦子たちの利用しているシステムに対する懐疑をとなえ、両者のあいだに対立が生じます。そんななか、洪作は装着したひとどうしで夢の内容を伝達しあうことができる「DCミニ」という装置を開発します。

    敦子は、理事長である島寅太郎の依頼で、自動車メーカーの重役である能勢龍夫や、その友人で警視総監の粉川利美の治療を引き受けます。ところが、粉川の夢のなかにダイヴした敦子は、そこで乾に遭遇することになり、彼らが洪作からうばったDCシステムをつかって夢の世界に干渉をおこなってきたことに気づきます。こうして、現実と夢の両方の世界を行き来して、敦子と乾たちとの抗争がくり広げられていきます。

    SF作家としての著者の持ちあじがぞんぶんに生かされている作品です。なお、「解説」を執筆しているのはフェミニズム批評でおなじみの斎藤美奈子で、主人公の敦子のキャラクター造形にかんして、彼女であれば当然指摘するであろうことが、やはり指摘されています。SFやミステリといったジャンルでは、こうした観点からの批評に対して愛好者たちはほとんど見向きもしない傾向があるように思うのですが、なぜこの人選になったのかと首をかしげてしまいます。

  • 映画から。
    パプリカの映画はパーフェクトブルーや妄想代理人でお馴染みの今敏節がこれでもかというばかりに効いているので原作を読む必要があると思い読んでみたが非常に良い。
    ただ読んでいて文章の節々から時代を感じてしまい、個人的にキツい部分があった。
    私個人の意見だが、男性作家の描く女性像を見ると読了後胃もたれしてしまうので(女性作家の描く男性像も同じく苦手)私と同じ感性を持たれる方は注意が必要かなと。

  • 学生時代に「とてつもない映像体験」として心に深く残った映画の原作を、何の縁かふと思い立ち読んでみた。
    あまりの鮮やかさに眩暈がするほどの読書体験として、中年期の心にも深く残る作品となった。

    読了後、改めて映画を見返すと、映像の使い回しが多かった。これだけクオリティの高いアニメーション。仕方ないと思う。
    映像表現には限界がある。
    一方で脳内のイメージは無限であるということに気付かされた。

    読書の楽しみの根本は文字を媒介に作者のイマジネーションを心ゆくまで堪能することだと思うけど、没入度合いは登場人物の背景に説得力があるかどうかに左右される。
    パプリカはこれがもう際立っていて、登場人物たちは複雑に絡み合い舞台も夢と現実が混ざり合い混沌とした様相を呈するわけだけど、引っ掛かりなくシームレスに物語に入っていける。

    特に西洋の怪物となって出現する乾はすごくエモかった。イメージするたびにゾクゾクして、これしか無いと思わされたし、楽しかった。

    読み手の想像力を遥かに上回る広く深い知見に支えられた想像力で紡がれる世界に没頭した。

  • 映画を観たことがあったので読んでみた。
    最後の方がかなり駆け足な気がした。

  • 精神医学研究所に勤める千葉敦子はノーベル賞級の研究者/サイコセラピスト。だが、彼女にはもうひとつの秘密の顔があった。他人の夢とシンクロして無意識界に侵入する夢探偵パプリカ。人格の破壊も可能なほど強力な最新型精神治療テクノロジー「DCミニ」をめぐる争奪戦が刻一刻とテンションを増し、現実と夢が極限まで交錯したその瞬間、物語世界は驚愕の未体験ゾーンに突入する!
    (1993年)
    --- 目次 ---
    第一部
    第二部
    解説/斎藤美奈子(文芸評論家)

  • 映画が好きだったので、原作もと思って読んだ。
    主人公が性に奔放過ぎて、終始引いてしまった。全体的にはもちろん面白いけど、途中途中で、読者の興味を保とうとしてるのか…?と思うぐらいベッドシーンが入るので、うーーんと思いながら読んだ。
    周りの人に勧めるなら、とりあえず映画をすすめる。本は興味があれば読んでもらえればいいので、あえてすすめない。

  • 夢と現実が入り乱れるファンタジー。ただただ作者の知識と教養が見せてくれる世界観に圧倒される作品だった。

  • 「旅のラゴス」がおもしろかったので、「パプリカ」も読んでみた。映画は以前観たけどどんな話だったかは覚えていない状態。
    研究所内の政治的な人間関係も濃密だし、DCミニの効果による描写などは、「攻殻機動隊」みたいなおもしろさがあった。(主人公が女性というのもあるからだろうか?草薙素子をパプリカに重ねて読んでいた)
    というか攻殻機動隊や最近のVRのさらにその先を描いているような感じがする。こんな作品が93年に書かれていることに驚く。まだパソコンすら普及する前だ。
    どんどんメチャクチャなことが起きるわりには不思議と破綻はまったく感じず、ぐいぐい物語の世界に引き込まれた。とてもおもしろかった。

  • 今敏監督没後10年ということで、映画のシーンを思い出しながら拾い読みの再読。小説+映画で一体となってる感がします。

  • 美人で姿かたちのよい千葉敦子は、精神医学研究所に勤める精神科医。現実にもいらっしゃる美しくて賢い女医さん、私も知ってる(笑)診ていただいている。

    ところが、美人セラピストとして<夢探偵>もする、その名は『パプリカ』。えっ、香辛料の名前かな?それはどうでもいいが他人の夢に侵入して治療、ちょっと恐い。いいのかなーそんなことしてと思いつつ、これは小説なのだからいいのだと言い聞かせて読んだ。アニメーションのようなゲームのような展開が畳み掛けるようにあり、そんな文章にも慣れてしまったのだった。(最近ほんと読めるようになったという感想)

    登場人物のキャラクターがくっきり決まっているし、背景に世俗的な組織の内紛あり、嫉妬あり、ロマンスありで面白いのだが、最後まで夢かうつつか読者を彷徨わせるところがにくい。不思議で読んでいる間に実際に私が、続きを夢見たりしてハッとして目覚めたりしたので、人間の心理ってどうなってるのかな。

    芥川龍之介の「杜子春」では薪が燃えさかってぽとりと落ちる間に、夢の中で人生を3度経験したという。
    夢でなくても様々な経験は出来るというもの。それが文学、小説。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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