チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181028

感想・レビュー・書評

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  • 15世紀末、イタリア。イタリアという言葉は何世紀もの間詩人の辞書にしか登場しない言葉でした。つまり、ローマ人、フィレンツェ人、ヴェネツィア人は存在してもイタリア人は存在しませんでした。この分裂状態にあったイタリア半島を1人の若者が統一する野望をいだきます。若者の名はチェーザレ・ボルジア。父はローマ法王アレッサンドロ6世、妻方の親族にはフランス王ルイ12世という2つの後ろ盾の援助を受け彼は自分の王国創立を目論みます。
     チェーザレの優雅なる冷酷によって中世ヨーロッパの価値観や体制はことごとく打ち壊され、歴史は彼を「ルネサンスのメフィストフェレス」や「毒を盛る男」として弾劾してきました。その一方で政治思想家マキアヴェッリは「狐(冷徹な現実主義)とライオン(大胆な魂)」を持つ支配者の理想像として彼をモデルに『君主論』を著します。
     ルネサンスでイタリアは超一流の芸術家を多数輩出しますが、政治の面でも超一流はいたのです。31年の短い生涯を流星のごとく駆け抜けた若者の栄光と挫折を豊富な史料をもとに書き上げた本作は閉塞感漂う現代社会を打破する何かしらのヒントを与えてくれるかと思います。そこまで難しく考えなくても普通の青春小説としても楽しめます。文庫版と「塩野七生ルネサンス著作集」としてまとめた単行本がありますが、個人的にメイキングが収録されている単行本版をオススメします。(担当H)

  • 途中からイタリアの地名、人名を整理できなくなるのがしんどい。知っていたらもっと楽しめていたはず。

    レオナルドとチェーザレの出会いの場面が印象的だった。
    「・・・両社の間には、相手を通じて自分自身の理想を実現するという、冷厳な目的のみが存在するだけである。保護や援助などに比べて、また与えるという甘い思い上がりなどに比べて、どれほど誠実で美しいことか」

    そしてマキャベリとチェーザレについても。
    「・・・チェーザレは使命感などという、弱者にとっての武器、というより拠り所を必要としない男であった。・・・マキアヴェッリは、使命感よりもいっそう信頼できるものとして、人間の野望を信じたのである」

    沢木耕太郎の解説が秀逸。

  • ローマ教皇アレッサンドロ六世の庶子であり、バチカンで権勢を振るったボルジア家のチェーザレ・ボルジアについて書かれた一冊。
    チェーザレの出生から亡くなるまでを書いたのではなく、父ロドリーゴがローマ教皇に推挙される頃から短い生命を終えるまでを書いた半生記。

    塩野七生さんの名前はよく見ていたし、イタリアに造詣のある作家さんらしいことは知っていたけれど、読んだことはなかった。
    はじめて読むのなら、教皇として悪名で有名なアレッサンドロ六世について書かれたものを読みたかったがないようなので、チェーザレについて書かれた本書を選んだ。

    ボルジア家のひとびとは、アレッサンドロ六世自身はそれなりに長く生きているが、子供たちはチェーザレを含めホアン、ルクレツイア、ホフレと皆短命である。
    一時はバチカンに留まらずイタリア全土で栄華を極めたボルジア家であるのに子供の生命までは思い通りにはいかないという当たり前なことを思う。

    ボルジア家ではここぞというときに毒薬を用いていたと半ば事実のような伝説をよく耳にしていたが、実際はそうでもなかったようだ。
    妻帯を許されないカトリックの司教であるのに隠れて妻を持ち子をなしたロドリーゴが教皇にまで登りつめたところに疑惑が芽生えるのは至極当然とも言えるけれど。

    アレッサンドロ六世に対立するジュリアーノ・デ・ラ・ローヴェレ後のジュリオ二世のことも少し出てきて面白く読める。
    しかしチェーザレについての本なのでアレッサンドロ六世とデ・ラ・ローヴェレ司教の確執などはかじる程度でしかない。やはり興味のある人物について書かれた本でないと物足りないのは否めない。

    塩野七生さんはチェーザレに同情的な様子が文章の端々から伝わってくる。

    チェーザレの波乱に富み野望達成を目前に人生の幕を引く姿は、道半ばで自刃した織田信長を思わせ、日本人には好みかもしれない。

  • 中性ヨーロッパの歴史も勉強するか

  • マラリア怖い。
    でも良かったかもしれない。

  • 徹底的に人物が頭に入ってこない‥‥というか登場人物が多すぎる。塩野七生読書の難点だ。
    そして好きな男は贔屓の引き倒しって姿勢、好きですよ!!
    私はこんなに冷酷な殿方には惚れられないな〜と思いました。女史はさすがお目が高くいらっしゃる。
    でもカリスマってこういう人だよなと思う。語らず行動体現して周囲を動かす。まさに歴史に名を残す人物。

  • チェーザレには親近感がある。
    全体的に文章は読みづらかったけど、最期を語る優しい文に、寂しさを感じつつ、読んで良かったと思いました。

  • ちょっと長かったけど、イタリアで国家統一・自分の国を作ろうと野望に燃えた1人の男の一生は、読んでいて飽きることがありませんでした。
    自分の地位や形勢を熟知し、動くべき時に迅速に動く。著者が「行動の天才」と記したように、あくまで自分の目的のため、時には冷酷にことをなす。こうありたいと思う部分も多かったです。

  • チェーザレ・ボルジア。この時代にこれだけの強烈な印象を残した人。現代に生きていたら、どんな生き方になっただろうか。権謀術数、血と裏切り。読み物としては楽しいが、周りにいた者はどんなに落ち着かない日々を強要されたことだろう。31歳没。

  • チェーザレ関連読書。マキャヴェリ『君主論』のあとに読み始めて、1ヶ月ほどでようやく読了。物語の始まりはちょうど惣領冬実『チェーザレ』の既刊の続きあたりから。解説の沢木耕太郎氏によれば、歴史でも伝記でも小説でもなく、同時にそれら全てでもある、塩野七生氏独特のスタイルであるらしい。主人公チェーザレの内面はほとんど見えず、淡々と彼の行動の軌跡だけが描かれる。これぞまさにハードボイルド?そして、塩野氏のチェーザレ像が『君主論』に影響されているため、実際のエピソードを通して、マキャヴェリが彼を君主として理想としたところをなぞることができた。
    17歳で枢機卿。しかしローマ教皇の庶子というあるまじき出自のために、聖職者としての限界を感じて自ら緋の衣を返上した。その後イタリア統一の野望を胸に、父アレッサンドロ6世や美しい妹ルクレツィア、フランス王ルイ12世さえも利用して、各都市で次々と戦果を上げて行く…。なんて恐ろしい20代の武将。昔の人は短命だからか生き急いでいるような違和感があるにしても、チェーザレのやり口があまりにも冷酷で、興味はあるがもはや彼を好きで読んでいるわけではないと、途中ではっきりと自覚してしまった。
    とにかく情報量が多い。彼の家来や味方、敵など多くの登場人物の名前、彼が手中に収めた各都市さえも覚えきれない。主人公が歴史上の人物であるため、最後は死ぬのだとわかっていても、彼の表舞台から退いて行く様は読んでいて辛かった。実際残り50頁ほどになってからの、読書の遠去かりっぷりはなかった。これがフィクションであったなら、読者から反感を買いそうな主人公の最期だ。事実は小説より奇なり。だからこその面白味を強く感じた読書だった。

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