ローマ人の物語 (19) 悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181691

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  • 第四代皇帝クラウディウスは、即位するまでの50年の人生を歴史家として過ごし、ヒーローとしての特質や軍での華々しい経歴も持たない人物であった。

    この巻で繰り返し述べられているが、政治とはニュースや歴史年表を飾るような出来事への対応ではなく、むしろ日常の地味な課題を一つひとつ解決していくことにこそその本質がある。

    そういった意味で、地味でありかつ真面目であったクラウディウスの治世は、政治の本質を体現したものだったと言えるのではないかと思う。

    実際に、先帝カリグラの時代に傾いたローマの財政や社会秩序が、クラウディウスによって立て直されていく。

    国勢調査、インフラ整備、辺境防衛(ブリタニア制覇、東方問題、北アフリカにおける反乱)といったローマ帝国の典型的な政策課題について、それぞれ一定の成果を挙げている。

    点数をつけるとすると、合格点ということなのだろう。このような地味な皇帝が地道に取り組むことで運営ができりるところまで、ローマという国家が完成度を高めてきたということが、この巻を読むことでよく分かった。

    一方で、政治のもう一つの側面である市民の支持、周囲の人々を惹きつける魅力の演出といった点については、クラウディウスは全く関心を持たなかった。その結果として、市民からの支持も決して高くはなかった。

    しかし、強烈な自信を持たないこと、特に家庭問題においては優柔不断もあったことなど、4代目にして初めて人間らしさを感じる皇帝の誕生であったと思う。

  • カリグラの後に皇帝となったクラウディウス
    生来の虚弱より、公的役職にならずに歴史学者であったクラウディウスは棚ぼたの皇位継承をどのような気持ちで迎えたのだろうか?機会があればと思っていたのか、それとも自分がやらなくてはいけないという使命感でもあったのだろうか。
    [more]
    統治内容に関しては特に問題なく、財政危機に陥ったローマをうまく持ち直している。
    さらにはアウグストゥスが止めたローマの開放路線を再開する為にローマの歴史と伝統を用いた演説で元老院を説得する様子は元歴史学者の面目躍如と言ったところか。
    最後に妻達に関して思う事は覚悟なしに絶大な権力を手に入れると自制心はほとんど動かなくなってしまうのだろうか?クラウディウスも相当に面倒臭かったのではないだろうか。
    それでも自分はクラウディウスの様な国民への人気取りに走らない人物がカリグラの後を継いだ事はローマにとって幸せであったと思う。

  • ローマ人の物語〈19〉悪名高き皇帝たち(3) (新潮文庫)

  • 50歳まで歴史家であったクラウディウス。
    こういう学者肌のかたが皇帝になるとどんなものか?という経験では大変良かったと思います。
    私はクラウディウス好きです。
    ただ、本で勉強も大事だけど経験も大事なんだなと。

    塩野女史は好みでない女性に厳しいです。ここではメッサリーナと小アグリッピアーナ。でもこの時代頭の良い女性が活躍するにはこういうかたちでしかなかったのでしょうね。

    クラウディウスのように学者だと興味のあることは詳しいけど面倒くさい話は考える気にもならない。だから奥さんやいろんな人たちにあれこれ言われるとろくに詳細読みもせずに署名してしまうのです。

    皇帝としてはきちんと仕事していた人なんですが、塩野女史の考えではここで奥さんに暗殺されてそれはそれでいいんじゃない?と言っているよう。今まで散々出てきた「志半ばで亡くなった」かたがたとは違うようです。

  • わずか4年で皇帝の暗殺という衝撃的な事態を招いたカリグラの統治時代でしたが、その後の皇帝は誰になるのかということがとても重要です。
    表向き共和制をとっていたこの頃のローマの帝政では元老院と市民の承認が必要でした。初代皇帝アウグストゥスは後継者を血縁関係者にと固執した考えを持っていたため、ユリウス一門の男子がなる手筈を整えていました。しかし、ガリウス亡き後に残っていた男子は、もう一つの血縁にあたるクラディウス一門の50歳になるクラディウスだけでした。ガリウスの叔父にあたる人物です。この時は血筋が何より承認を得るために必要な条件だったのです。
    クラディウスは、肉体上の欠陥があり不恰好な上に、身なりにも構う人ではなく、一族の女性にもこれまで可愛がられる半生を送ってこなかったとあります。この記述におやおや…いう感想を抱きます。この年齢になるまで彼は、歴史研究に没頭していたとありますから、今で言うオタクを想像してしまいました。そして、その身体的な欠陥のため、幼少の頃から人から軽蔑や嫌悪の念で見られることに慣れてしまっていたという、権威のある位に就いたというのに何とも情け無い態度は変えられませんでした。
    そのことが長じて後に、皇帝となってからの振る舞いが重大な影響を及ぼします。政治的な手腕は兎も角も、妻も含めて部下たちにも軽んじられていたのに本人はまるで気にしていない有り様。こうして、若い妻メッサリーナの放蕩の限りを尽くした行動が始まります。彼女が破滅して、後妻を選ぶ時にも自分で相手を選べず、奴隷出身の秘書たちに相談する始末。ここに来て歴史上名高い「皇帝ネロ」の母アグリッピーナが登場します。叔父と姪の関係にも関わらず、無理矢理結婚に漕ぎ着けた彼女は、その息子ネロを次期皇帝にするべく、様々な策を推し進めて行きます。
    歴史上では毒を盛られて死んだとされるクラディウスは、この時63歳。…女にモテたことのない男というのは、選べるようになっても怖じ気づくのである…と作者に言わしめたこの方は、悪妻?にコントロールされ、自分の子どもよりも妻の連れ子を養子に迎え、皇帝への道筋を許すことになり、結果的に毒殺されてしまいます。
    降って湧いたような皇帝の地位で、彼は誠心誠意振る舞ったのですが、ローマ帝国の統帥ともなれば、そればかりでは駄目だったというのが何とも悲しいところです。しかし、テイベリウスの遺産ともいえる政策を吟味しながら実行し、ユダヤの統治問題などの安定を図り、平和な社会を持続した末の死だったということでしたので、ほっとします。

  • レビューは1巻(シリーズの17巻)で。
    http://booklog.jp/users/pilvoj/archives/1/4101181675

  • クラウディウスの治世と死。

  • 女性の社会進出について考えさせられますね。クラウディウス自身は玄人好みな感じ。

  • 思いがけず皇帝になったクラウディウス。筆者により姿、話している様子が目に浮かぶ。ローマへ言ってみたいな。

  • 前皇帝の突然の死を受けて帝位を継承することになったクラディウス。表舞台に立たず歴史家として過ごしてきたが名門の血を引くという理由で50歳にして皇帝になった。彼は目立つことを好まず、たとえ悪い風評が流れようとも柳のように聞き流す。一方で政治としては港湾の整備など公共事業を着実に実施していく。しかしながら、強欲な悪妻に巻き込まれ残念な最期を迎えてしまう。さらに残念なことに死後は市井の人に酷評を浴びる。柳のように過ごしたことが仇となったのか。自分のパフォーマンスをどうアピールするか、、、この歴史が問いかける。

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