ローマ人の物語 (27) すべての道はローマに通ず(上) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101181776

感想・レビュー・書評

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  • ★3.5。
    この巻は色んな意味でこの作家の感度の限界を感じた気がする。つまり文筆家と言いつつ、時系列に歴史を語ることについての疑問を感じていないという点。これは決定的に致命的とさえ言える。
    本巻はトピックごとに切り取る形で史実を語ってますが、これは時を超えた語り口と言えます。ただ哀しいかな、このパラダイムシフトに対して作家自身が自覚的でない。当方レベルの愚民でさえ意識できる重要論点をかっ飛ばしているところに、残念感を覚えざるを得ない。惜しいなぁ。。。内容は凄く面白いだけに。

  • 冒頭、筆者がかなり強調していたとおり、今までの内容とは毛色が違う。ローマのインフラ整備について。

  • 番外的な巻であり、ローマ帝国のインフラ整備を扱った巻。主として、ローマ街道網を解説。
    インフラ整備の視点が現代と通じる点は、さすがローマ帝国と思わずにいられない。

  • この巻は、書籍名通りのローマに通じる道の話。

  • 現代日本において道路法上の道路であることを満たす幅員は4m。
    これがローマの街道の車道の幅員と同じだった事実にも驚きだが、それよりも感心したのは歩道について。

    ローマの街道の両脇には歩道が3mづつあったということだが、これは歩行者、つまり一般市民の尊重の表れではないだろうか。

    タブーラ・ペウティンゲリアーナのような楽しげで有益な地図の存在が、このことを証明しているように思える。
    現代日本の貧弱な歩道に常々不満を抱いている自分としては、羨ましい事実。

    返す返すも惜しいのは、ローマ人のインフラ整備の精神が中世で途切れてしまったこと。

    ローマ帝国が滅ばずに、その後も継続して発展していたならば一体どんな世界になっていたのか。想像するのは楽しい。

  • 帝政ローマに入って以降、歴代ローマ皇帝の治世を追ってきたが、この巻では一度その流れを離れて、ローマのインフラストラクチャーの整備と運営管理を、共和制ローマ期のアッピア街道の整備のころからローマ帝国衰退期までを通して概観する内容になっている。

    この巻では、ローマの街道と橋がテーマとなっている。

    ローマの街道や橋のハードウエアとしての技術力の高さは、この時代のものが現代にも多数残っているという一事をもってみても証明される。

    ただし、それだけではなくネットワークの複線化といった計画面での戦略性、メンテナンスの重要性を最初の段階から認識し道路用地にもメンテナンス用のスペースを含めるといった先見性など、ローマのインフラ整備には現在に繋がる要素が非常に多く含まれているように感じた。

    また、それらを活用した郵便制度や宿舎等の付帯サービスの充実、地図の制作といったソフト面での運営にもいても、ローマの街道ネットワークは先駆的であった。

    最も印象に残ったのは、国の防衛のためには国境に城壁を築くのではなく国内に道路網を張り巡らせることを第一とした、ローマの考え方である。

    軍用道路として、有事に帝国の各辺境にローマ軍が素早く移動できるために整備をされた街道が、国内の経済や文化の交流も促進し、ローマ帝国の国力の増強にもつながるという、非常に大きな副産物をもたらしたというのが、ローマのインフラ整備の真骨頂だろう。

    合理的な発想に基づいて、このインフラ整備とメンテナンスを数百年にわたって持続的に行ったローマ人というのは、インフラの父と呼ばれるにふさわしい人たちだったということが、あらためて分かった。

  • 今までとは違って人からインフラに焦点を当てて、歴史横断的に考察を加えている。
    巻頭のカラーの写真や図も多く読んでいてワクワクする巻でした。
    インフラの重要性を見越したカエサルやそれを維持・発展させた歴代の皇帝の先見の明に驚かされ、創造的天才ってどうやって生まれるんだろうと改めて考えさせられました。

  • 巻頭カラー
    イタリア本国のインフラ
    イタリアの遺跡
    ローマ近郊地図
    フォロ・ロマーノ
    紀元前六世紀及びコンスタンティヌス帝時代のローマ復元模型
    ローマ市内の遺跡
    ローマ市内の橋
    ナポリ近郊地図(ローマ時代/現代)
    ナポリ近郊の遺跡)
    ハードなインフラ(街道;橋;それを使った人々)

    著者:塩野七生(1937-、北区、小説家)

  • 現代においては有力者の意向で道路や線路の方向が歪められるなんてどこの国でもありそうな話だが、
    ローマ帝国においては、皇帝でさえもそんなことは出来なかった。

    ローマ、アテネ、コンスタンティノープル、アンティオキア、エルサレム、カイロ、チュニジア、コルドバ、リヨン、ロンドン、アウグスブルク、ウィーン、ブタペスト。

    他にも広範な地域の制覇に成功した帝国は存在したが、なぜローマだけがこれほどの地域をネットワークと言えるほどに道路を張り巡らせることができたのか。
    本書で他国の実例が語られるわけではないので詳細な比較はできないが、多くの長所がそうであるように。
    その必要性から作られたものは、やがてそれ中心の構造となり、もはやそれなしでは成り立たないように成長していった。

    もちろん街道自体はどこの国にでも、いや、国の成立以前から存在する。
    だが、ローマを代表する街道として最初に建設されたのは、自然にできた道を頑丈に舗装したわけではなく、
    都市から都市を目的地とする移動路でもなく、港から物資を運ぶ輸送路でもなく。
    既に存在した街道に、別の経路を新設して複線化したアッピア街道が始まりだった。

    複線化の利点は現代においてさえ一見して理解されないが、
    工事や災害、出兵や外敵侵入などの緊急時にはもちろん、
    平時であっても路面や気候、宿や駅舎などの状況に応じて経路を選択可能である利点は予想以上に大きい。
    何より、郵便や物流が安定しているという事実は、経済活動に対する信頼へとつながることとなる。

    少なくない費用はその名誉のために富裕層による寄付でまかなわれ、
    人手はパクス・ロマーナという平和を与えられた軍団兵が担当。
    さらに、移動速度が上がれば少ない軍団兵で広大な地域を治められる。

    こうして多くのローマの制度は、何時如何なる状況でも道路が使用できるという信頼のうえに成り立つこととなった。
    それでは、このような盤石なローマのハードなインフラの上に乗るソフトなインフラとは何であったのか。
    次巻に続く。

  • 今までとは異なり、ローマ人ではなく、ローマのインフラにスポットを当てた巻
    今までの内容でたびたび触れられていたローマのインフラについて、どのように作られ、維持され、使用されていたのかをまとめている。
    ローマ人は何故にそこまで徹底的にインフラを作ったのかと考えてしまう内容だった。
    [more]
    これまでのローマ人の国家にがっつりと食い込んでいるインフラ
    むしろインフラの整備こそがローマなのでは無いかと思えてしまう内容だった。
    最初は敗者の同化に効果があるなどとは思ってもいなかっただろうが、そこに気が付き数百年も維持してきた事にはただ驚嘆する次第だ。

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