りかさん (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253343

感想・レビュー・書評

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  • 「西の魔女」だが、相変わらずの梨木ワールドを堪能できる。人形と心を通わせるお婆さんと孫娘が、関わる人形に込められたストーリーを紐解き、思いを解放していく。人形に限らず、古いものというのはいろいろな「もの」がこびりつくのだから、接する方(人間)が正しくないと、物もひねくれてしまう。こういう考え方好きだなあ。

  • 人形が喋るのがすっと受け入れられる。
    私が無くしてしまった・または持ってなかった憧れていた世界観です。

  • 魅かれた。
    惹き込まれた。
    気づいたらその世界の中にいるような感覚だった。

    他の作品にも触れてみたい。

  • 古い市松人形が話すという、なんだかちょっと怖いような設定。
    それが、ようこという女の子の目線と語り口によって解きほぐされ、気持ちは徐々に、人形たちが背負ってきた悲しみの方へ。
    特に印象的なのは緊迫感をもって迫ってくる「アビゲイルの巻」
    自分に子どもがいたら知っておいてもらいたいできごとだな。

    個人的には併録されている「ミケルの庭」の方が響いた。

  • 「からくりからくさ」を読んだら、こちらも読みたくなるのでいつもセットで読み直している。
    ようことりかさんの出会いと、人形たちの世界を覗くお話。
    人形やいろいろなものとお話しする、心のうちを共有する、そういうのが大好きで空想していた子供だった私にはたまらない。
    この小説はそんな「不思議」の話だけではなくて、やりきれない悲しみ、慈しみを受けることも与えることもできない苦しみ、嫌な相手との付き合い、感情の処し方、そういうことをうまく処理できないときのやり方をそっと見せてくれている。必要な人だけはっとして身を乗り出してよく眺めることができるような感じ。その辺りは「西の魔女が死んだ」に近いかもしれない。
    その優しさがいつも私に染み入る。
    冠と価値観の話とか、さりげなくこういうこと盛り込んでくるのがすごい。

    全く理解できないのに、春の野原のような人形の笑い声を聴くことをうらやましいと思った、いつか子供たちがそれを聞けるようにと願ったマーガレットおばあちゃん。やっぱり子供もその子供も、ついでにその子供もあなたみたいな人間なのだ。同じことを追い求め続けていつも途方に暮れている。
    でも子供の子供のマーガレットはちゃんと、遠い未来に、幸福に包まれて人形の笑い声を聞くのだ。

    大量生産とか化学染料にちくりと刺すようなことも書いてあって、確かにそういう類の思いを私も抱くことはあるが、だからと言ってそんな風に判じるのは保留したいような複雑な気持ちがある。
    例え個性の全くない工業製品でも、私の手に収まった時に特別な一つになって、心を通わせられるような気持ちになったりするし、そういう瞬間が好きで……。梨木さんもそれを否定は全くしないと思うけど。「いろんな枠組みの世界が重なり合って」いる、「全部合わせてそこそこ平均がバランスとれればいい」って、おばあちゃんの言葉に、そうだよね、と改めて思ったりする。

  • リカちゃんが欲しいと頼んだようこに、おばあちゃんから
    贈られたのは黒髪の市松人形のりかだった。
    けれど、おばあちゃんが送ってくれた説明書を読んで、
    人形を幸せにする為にお世話をすることにした。
    りかさんと話が出来るようになった時、人形達の声が聞こえる。
    それををおばあちゃんとりかさんと一緒に解決していく。
    哀しすぎる思いが詰まった人形達。
    思いは形を変えて受け継がれていく。
    不思議で優しくて悲しくて温かいお話しでした。
    「ミケルの庭」は、からくりからくさの続編なので
    「からくりからくさ」を読んでから、ミケルの庭を読むことをお勧めします。

  • メインのキャラは主人公よう子とおばあちゃん、2人と意思をかわすことができる市松人形りかさん。
    ストーリーは人形と会話するということで読み始めは若干ホラーを感じたがそんなことはなく、他に登場する人形たちのストーリーも面白く読めたし、特に自分はおばあちゃんのよう子への終盤の言葉にすごく胸を打たれた

  • 「りかさん」「りかちゃん」?と思っているうちに物語に引き込まれる。文庫書き下ろしの「りかさん」のその後の短編もすごいです

  • おばあちゃんから日本人形を贈られたようこ。本当はリカちゃん人形が欲しかったのだけど。ところが、このりかさん、人間と心を通わせる術を持つ特別なお人形だったのです。りかさんを通じてようこが知る人形や草木に宿る思い、それを見守り導いてくれるおばあちゃん。
    たくさんのお人形が登場して、年代物の人形の場合は時代がかった言葉を話すので、少しわかりづらいところはあった。あと登美子ちゃん家との関係とか、一度読んだだけではちゃんと理解できなくて、軽く二度読みしました。
    お人形の運命、抱えているものは色々で、中でも西洋人形のアビゲイルと比佐子の物語は壮絶で辛くてたまらなかった。
    おばあちゃんが素晴らしく、りかさんを介してようこに大事なことを教えてくれる。植物染めのシーンが良かった。お人形や老木の悲しみや思いが、ようこの慈しむ心で昇華していく。しみじみする何かが心に残った感じです。
    最後に加えられた「ミケルの庭」は、ようこが大きくなってからの話。こちらも良かった。どうやらその後のお話「からくりからくさ」の番外編らしいので、からくり…も読んでみようと思います。

  • 「からくりからくさ」の前につながる話と、余話やったんかぁ。もうすっかり「からくりからくさ」の内容を忘れていたので、まったく新しい小説として読んでしまった。

    和(じゃなくても)人形と女の子ってこういう、密度の濃いつながり…きっと幻想なんだろうけど、実際にもありそうだなぁと思う。新井素子のぬいぐるみとか、結構人形とガチ話している人おるもんなぁ。

    俺には感じられない世界だけど、そこを「非科学的=非現実的」であっさり括ってしまうのは勿体ないというか、人間として薄い。自分の知らない感知できない世界であっても、自分に害をなすものでなければ「そういう世界もあるんだなぁ」と感心したい。

    善悪白黒二元論は、下手すると人形を杭に括りつけて、竹やりで突き刺すことを善とするような、カルトになりかねない。柔軟でありたいし、包容力をもちたいと思う。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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