りかさん (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253343

感想・レビュー・書評

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  • 人形とお話できたら、という素朴な発想から、ここまで響く小説ができるとは。やっぱり作家はすごいな。

  • 朝の光の清らかさ、春の気配、や、梅雨時の鬱蒼とした雰囲気。
    繊細な内面のゆらぎや色合いの変化。
    梨木 香歩さんのお話は、そんな目に見えない事象を丁寧に映し出すのが上手いな、と思います。
    春の気配がようやく見え隠れするこの時期、読みたくなるのが、
    『りかさん』
    リカちゃん人形が欲しい、とおねだりしたら、お祖母ちゃんからプレゼントされた市松人形の「りかさん」。
    主人公のようこちゃんは、思っていたのとちがう贈り物に、ひとときは落胆するのですが…。
    不思議な力を持った「りかさん」と過ごしながら、日常の中に隠れている不思議な出来事を経験していくお話です。

    お祖母ちゃんからもらった「りかさん」には説明書がついています。それを見ながら「りかさん」のお世話をするシーンは、女の子だったら、ちょっと憧れるのではないでしょうか。お人形専用の小さな器に、毎日一口ずつ、家族と同じ食事をのせてお世話する。お話の中では、お母さんもワクワクしていました。
    私も、雛人形の小さな器に、おひな祭りのチラシ寿司とはまぐりのお澄まし汁をのせて差し上げたことがあります。母と一緒にひな壇のお膳にのせるとき、何か愛おしいような気持ちになったのを覚えています。おままごとのような儀式めいた遊びは、気持ちをどきどきさせてくれます。

    其処ここに何かの精がいたり、大切にしているぬいぐるみに心があるんじゃないかな、なんて、ほのかに思っている気持ち。
    梨木さんはそんな目に見えないことを大事に掬い上げてくれる気がします。

    おひな祭りの季節、この本を読みたくなってしまうのは、そんな気持ちが呼び起こされるからかもしれません。
    後日譚、ともいえる「からくりからくさ」も一緒に読むと、物語の奥深さがより味わえます。

  • 「からくりからくさ」に繋がる話。りかさんがいると、そこからふわりと優しい空気が広がっていく。それはりかさんが持ち主から大事に扱われてきたいいお人形だから。いいお人形は、吸い取り紙のように、感情の濁りの部分だけを吸い取っていく。大人になった蓉子の、他人や生き物全てを包み込む優しさは、りかさんと一緒に過ごしていたから身についたのだな。文庫書き下ろしの「ミケルの庭」は初読み。マーガレットの赤ちゃん・ミケルが危篤状態になる。自分の風邪がうつったからだと後悔する紀久にかける蓉子の言葉がほんとに温かい。

  • 表題作と短編『ミケルの庭』
    「からくりからくさ」の前,蓉子とりかさんの出会いを描いている.おばあちゃんの麻子さんやようこの親友登美子ちゃんとの交流の中で,りかさんと一緒に人形達の不思議な世界に触れていくのがとても自然で,優しく暖かい感じが気持ちよかった.

  • リカちゃん人形がほしかった女の子にプレゼントされた、しゃべる日本人形りかさん。
    人形たちの秘密を、苦悩を救っていくようなお話。
    人形好きにはたまらない、のかな?

  • 小さい頃、大事にしていた人形やぬいぐるみと、会話していたことがあった。
    もちろんそれは現実ではなくて自分の妄想の中での会話だったのだけど、会話できたらいいのに、という願望も含まれていた気がする。

    そういうことが本当に起こる、言うなれば“和風ファンタジー”。ものすごく不思議な世界観。
    よくよく考えてみればけっこう怖いのだけど(笑)、子どもだからこその澄んだ感性が羨ましくもなる一作。

    リカちゃん人形が欲しいとせがんだ小学生のようこにおばあちゃんから送られてきたのは、黒髪の市松人形だった。名前は“りか”。
    こんなはずじゃ、と落ち込むようこだったが、一晩が明けた頃その市松人形が会話をして人と心を通わせることが出来ることに気づく。人形は言った、「りかさんと呼んでね」。
    りかさんに導かれたようこは、古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れていく。

    黒髪の市松人形が喋るってやっぱり怖い(笑)でもこのりかさんは、とても思慮深く頭が良く、少ない言葉でようこを助けていく。
    元々はようこのおばあさんが持ち主で、ずっとおばあさんと暮らしていた。なのでようこは要所要所でおばあさんにも助けを求めるのだけど、りかさんとおばあさんの導きでようこはだんだんと成長していく。

    世の中にある人形の中には、とても深い思いが込められているものがある。何か意味があって作られたものもある。
    そういう人形が廻りめぐって持ち主が変わり、その思いや意味が忘れ去られた後でも、人形たちの中に残されたものは変わらない。
    そこで苦しむ人形たちに手を差しのべて思いを解放させる役割を、ようことりかさんが担う。
    強く信じる心と純粋な精神がなければ出来ない役割。シャーマンとか、そういうものに近いような(この作品にはそういう宗教的なイメージはないけれど)。

    いわゆる青い目の人形がモデルになってるのかな、という人形も出てくるのだけど、この人形と関わった1人の少女の物語はとても切ない。
    青い目の人形のことは、私も高校時代に牧師さんからじっくり聞いたことがあるのだけど、国と国の関わりや争いの中に人形が存在していることもある。
    人形供養というものが実際行われているのだから、人のかたちを模したものに思いが宿るのは、よくよく考えてみればとても自然なことなのかもしれない。

    もう1つ収録された「ミケルの庭」も「りかさん」と繋がっている。
    詳しくは描かれていないけれど、とても深い繋がりが。

    ファンタジックで可愛らしくてちょっぴり怖くて、実はとても重い意味がある物語。
    普段何気なく目にしている人形にも、何かの意味や思いが込められているのかも。

  • 再読。一気に読み終えた。

    同じ人形ファンタジーの『最後のゲーム』とくらべると、りかさんは、初めからすっとそこに不思議がある感じがして、ファンタジーとか魔法というよりは、アミニズムのような感じがした。ロジックの世界に、魔法という力が作用を及ぼしたりするんじゃなく、日常と地続きのふしぎ。だから、ふわっと包まれるような感じがするのかな。

    2編めのアビゲイルがかわいそうで……。でも、じっさいにそういうことがたくさんあったんだものね。やはり一番おそろしいのは人間のおろかさだなと思うけど、自分もふくめ、それをどうやって見極めてふせいでいけばいいのかはむずかしくてわからない。かなしい。

  • 厳かな雰囲気があった。
    子供とおばあちゃんの組み合わせは最強だと思う。
    おばあちゃんの言葉はとても偉大。言葉が深すぎて私にはもったいないくらいだったが、いつか実感を持ってわかるようになりたいと思った。
    りかさんは人間を超越した存在だけど姉のようでもあり母のようでもあり、ようことのやりとりは微笑ましかった。

    • komoroさん
      梨木香歩ですね。
      あなたならきっと素敵な母親になれますよ。
      おばあちゃんの言葉以上の素質をもっているから。
      梨木香歩ですね。
      あなたならきっと素敵な母親になれますよ。
      おばあちゃんの言葉以上の素質をもっているから。
      2016/06/09
  • 人形は人の形をしています。
    人の心を秘め、時を超えて、未来へと想いを運ぶのですね。

    切なくも、心温まる物語でした。

  • 「からくりからくさ」と合わせて自分の本棚においてもいい!図書館本だけど、買おうかなぁ。
    お人形が話すといっても荒唐無稽にならず、少女の導き手となっているのがいい。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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