墨攻 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101281124

感想・レビュー・書評

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  • 「墨守」の意味の由来になった。開祖墨子が作った教団は、非攻・兼愛などを説く。戦国時代、大国の侵略を防ぐために墨子の教えを受け継ぐ者たちが、小国を守る。のちに残る儒家は差別愛を説き、大国への猟官を望む時代。

  •  民衆の絶対的な支持を得るために、論功行賞、信賞必罰、それとは気付かれないまでも脅迫までやる。それ以前に、城主から絶対的な権力を得る。そうすることによって、軍隊としてのCommand and Controlのマネジメントスタイル。

     軍隊組織と企業組織。戦時と平時。比べるべくもないけれど。

  • 中国の戦国時代に墨子教団より派遣された一人の墨子が城を守るために淡々と奮闘する。
    その墨子は実は墨子教団の長と意見を違えて飛び出した者。
    たった一人ながらも効率的に素人を束ねて城を守ろうとする。


    中国古代に墨子という専守防衛を説く集団がいたとは全く知らなかった。
    墨子についての研究が進めばいいと思う。

  • 時は戦国時代の中国。多くの群雄たちは中国統一を競い、思想家たちは自説を広めることを競っていた。その結果、有名な孔子や老子などの思想家が登場する。そして、墨子だ。

    墨子の教えは「非攻」、戦わないことをモットーとする。が、戦わないためには、周囲から戦うことを諦めさせるだけの戦力を持たなければならないという考えだ。そのため、墨子集団は武器の発明や戦闘員の労務管理など、何よりも軍事技術の向上に力を注いだ。戦争をなくすために、戦争エリートを目指すのは矛盾しているようだが、抑止力として核兵器を持とうとする現代国家だって、やってることは同じだ。

    そんな墨子教団の教えを忠実に守る一人の男を主人公に、当時の中国の戦闘を具体的に描いたミリタリー歴史小説。シュワルツネッガーのアクション映画を見ているような痛快な娯楽性がある。とはいえ、あまりに突然で消化不良なエンディングにはガックリ。滅びの美学をもっと追求してほしかった。

  • 墨子の弟、革離による守り戦のフィクション小説。大国を相手に、小さな城とわずかな邑人(むらびと)を守り切れるのか…。

    中国の歴史をほとんど知らず、酒見賢一さんの作品も初めて読みました。現代的な言い回しが多く思ったよりも読みやすかったです。ただ淡々としすぎていて、感情移入もする間も無く終わってしまった感。

  • 中島敦記念賞
    著者:酒見賢一(1963-、久留米市、小説家)
    挿絵:南伸坊(1947-、世田谷区、編集者)
    解説:安本博(1938-、兵庫県、中国哲学)

  • 墨子という集団を初めて知った。おもしろかった。

  • 図書館で。お話として面白かったです。が。挿絵は牧歌的すぎないだろうか?結構殺伐とした話なのに。戦争だし。職人さんが自分の仕事をきっちりこなす様を読むのはとても楽しいのですがでも結構厳しいですよねえ…。自分なら嫌だな。捕虜が敵に殺されずに保釈されたのに味方の陣営に殺されるってなんか理不尽。私なら反逆したいな。斬られるのはイヤだけど。戦争はイヤですねえ…本当に。

  • 二十年前に漫画で似たような題名があって、なんか一人で孤軍奮闘してる兵士の話かなぁと思って、気になり少し読んでいたことがあった。
    先日、本屋で「あっ!同じ題名」と思い手にとり、今読了。
    早速、ネットで調べたら…「なんじゃーい!あの漫画の原作かいっ!」
    映画にもなりそうと思ったら、映画にもなってるのかょっ!

    なんかタイムスリップした気分

  • 墨子の思想を信奉する主人公革離が小国の依頼を受け大国からの攻撃をさけ城を守る物語です。主人公の最後が主人公らしくもあるけれど、悲しい結末でした。

    九州大学
    ニックネーム:原田豊

  • 古本で購入。

    七大国が覇権を競う戦国時代。
    百花斉放・百家争鳴のこの時代に、儒教と並ぶ勢力を誇る墨子教団が存在した。
    博愛主義「兼愛」とそれゆえの反戦論「非攻」を説く一方、大国による侵略をくじくための戦術・技術を磨き上げた戦闘集団でもあった墨子教団。
    今、趙・燕の争いに巻き込まれた土着豪族梁氏の小城に、革離という墨者が救援に駆け付ける。
    怯懦な城主の下、素人にすぎない邑人たちを率いる革離の前に、万を数える趙軍が押し寄せる―

    何とも珍しい、墨者を主人公にした歴史小説。
    ここで描かれている戦いは全てフィクションで、史実ではない。
    ただ、墨子教団によって戦われたであろう防衛戦の凄まじさを想像させるに足る。
    「攻城戦」という響きにときめきを感じる人には間違いなくオススメできます。

    150ページ足らずの短い小説だが、淡々と描かれた小さな城郭の攻城戦は濃密。
    徹底した規律と公正な評価によって烏合の衆をまとめあげるというあたりは、一種の組織論としても読めましょう。
    これが原作となっている映画の方も気になるところ。

  • 中国の歴史に全く詳しくないが楽しく読めた。内容は史実ではなく創作。墨子は門番に対して「だれのおかげでこの城下が平和なのか知っているのか」って悪態をつくし、革離も梁城で『このような田舎の小城で、なにが大将軍、司徒、司空だ』と内心で笑ってる。なんか人間的にどうなんやろって思いながら読んだけど最終的にはオモロかった。馴染みの無い兵器名も出てくるが気になるのは最初だけ。もう少し長編で読みたかった気がする。140ページぐらい(挿絵が有るので実質140も無いと思う)しかないので読み易かったのかも。1人のアホの行動で国が滅ぶ。

  • 実に面白いエンターテイメント。映画もみたい。

  • 古代中国の戦国時代の墨家のお話。昔映画のほうを見たが少しあらすじがちがったのでこれはこれで面白かった。特になんというか具体的な攻城戦について触れられているところはよかった。

  • 血なまぐさい。
    無駄をそぎ落とした非常に簡潔明瞭な物語で、それはいいんですが、あまりにも飾り気のない戦争描写に読んでて気分が悪くなったので星マイナス1させていただきました…。
    間違っても、「城に迫り来る2万の大軍!絶体絶命のピンチに、墨家が立ち向かう!神算鬼謀の冴えるエンターテイメント小説!」ではない。
    あとがきがすごく長い。表紙と挿絵で高感度大アップ。

  • ガード専門

  • 映画で観た以来です。
    当時はもっと墨家は牧歌的…いや違う…平和的思想だと思ってたんだけど、結構過激だったんだな、と思った。

    でも、非攻を守る不動の意思、カッコいい!
    非核三原則を掲げる日本としては、学ぶところもあるような、ないような…(^-^;

  • 墨家といえば・・・「非攻」「兼愛」、そして「墨守」。
    戦に負けると、城市とともに滅びる道を選ぶとか。
    その烈しさに驚き、惹きつけられるのだが、詳しくはまったく知らない。
    だから、こんな本があると、手に取らずにはいられなかった。

    私のような素朴な読者は、本書に描かれた墨者のありかた、特に戦い方を鵜呑みにしてしまうけれど・・・
    後書までしっかり読むと、無論資料が少ないので、かなりの部分を作家の想像力で補っている、とのこと。
    もちろん、リアルなことと思わせてしまう、作者酒見賢一の手腕もあるのだろうけれど。
    そうか、やはり「墨家の謎」は、そうそう簡単にはわからないのだな。
    それでも、やはり面白かった。
    無駄な描写がない引き締まった小説。
    この人の作品を読むのは「後宮小説」以来だが、随分雰囲気が違う。

    南信坊のイラスト、とてもいいのだが・・・クライマックス近くで見開き二ページを使ったイラストが何回か続くと、ちょっと読むペースを乱される。
    ゆえに、★ひとつ減。

  • 墨子については名前を聞いたことがある程度だった。これを読んで俄然興味がわいてきた。ちょっと調べてみよう。
    それにしても中国物は面白い。

  • 本書は薄い本であるが、中身が濃い。

    「墨子」は耳にしたことはあるがよく知らない思想だった。訓練された「戦争請負人」を派遣する組織というのが新鮮。孔孟思想などは現代にも残っているのに、墨子についてはわからないことが多いというのが興味深い。

    淡々と進み、梁城を守り抜くという革離の目的はほぼ達成したが、敵将・巷奄中の執念によって頓挫してしまう。また依頼主の身内から崩れるというのが真理をついていると思った。

    思想に基づきつつも、ほとんど創作というのがすごい。

  • 今年最後の本がこれ。中国ものは好きでよく読む。
    酒見賢一という人は知らなかったが、墨子にはちょっと興味がある。で、中島敦記念賞受賞作となると読まずにはいられない。
    おもしろかったが、文庫判140ページと中島敦ばりの小品で、物足りない気がしないでもない。小説というよりエピソードという感じ。もう少し読みたい。いずれ他の作品も読んでみよう。

  • 戦闘シーンの緊張感が見事。ページを捲る手を止めさせてくれません。
    終わり方があっけなさすぎるようにも思えたが、逆にあれが革離の偉大さを強く感じさせて良い演出だったと読後は感じました。

  • 再々読。面白い。

  • 未だ謎が多き墨家であるが、戦国時代の中国には、非攻という哲学を説き、侵略されんとする国々を救援していたという。その教団の革離という人物が梁の防衛に派遣されたところから物語が始まる。梁の手勢数千に、迫り来るは趙の軍勢は2万。果たして革離はたった一人で城を守り通せるのか!?…というような感じ。
    映画版墨攻の原作の、マンガ版墨攻の原作の、小説版墨攻であるが、映画とは異なる内容となっている。

  • 中国哲学に授業の中で学び、興味を持った墨家の思想をベースにした小説。かなり短いのですぐに読み終えることが出来る。所々での情景描写や、使用する武器等々が、馴染みのない漢字を使用しているため、少し状況把握が難しかった。映像で見たいと思った。小説よりは映画版や漫画版の方がいいかもしれない。

  • 20120905読了

  • 墨子の思想があり、それをどう受け止め どう生きるか。

    たんたんと、信ずるところやるべきことをやる、実践者の生。

    う~~~ん。

  • 墨子を始祖とする《守り》限定戦闘集団「墨子教団」。
    教団首長の右腕である主人公が救援要請を受け、貧弱小城の籠城戦の指揮を執る。

    おもしろかった。読みやすい。

  • 創作歴史小説(矛盾した表現だけど他の言葉ではうまく言い表せない…この人の小説に限っては時代小説って言いたくない)を書かせたら、もう、酒見さんに対抗できる現役の作家って殆どいないと思う。

    墨守ではなく、墨攻。
    ああもう、かっっっこいいなあ!!!
    酒見作品でこういった技巧的なタイプの主人公は珍しい気がします。物語の幕の引き方も然り。個人的にはやっぱり映画よりもこちらの流れの方が好みだな。解説にもあったけれど、終盤の展開がある種の隠喩に思えてならない。
    しかし墨者は最後まで墨者でした。指導者としてはパーフェクトだなんてとても言えない。でも、それを補っても余りある魅力があるんだな。やっぱり酒見さんの書かれる文章すきだー…

  • 戦国時代の中国、特異な非攻の哲学を説き、まさに侵略されんとする国々を救援、その城を難攻不落と化す謎の墨子教団。その教団の俊英、革離が小国・梁の防衛に派遣された。迫り来る敵・趙の軍勢は2万。梁の手勢は数千しかなく、城主は色欲に耽り、守備は杜撰であった。果たして革離はたった一人で城を守り通せるのか―史実を踏まえながら奔放な想像力で描く中島敦記念賞受賞作。

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