墨攻 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101281124

感想・レビュー・書評

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  • この人のは初。

    中国戦国時代の思想家集団墨家を扱った作品。非攻を説きながら、戦闘集団でもある彼らのうちの一人の墨者に焦点を当てる。

    絶対的な規律を設定するも、自身が一番に働き、民衆の指示を得る。論功行賞も極めて公平。

    それでも納得のできないものは現れる。人の心は教科書どおりにはいかない。それがラストにつながるのだろう。

    とにもかくにもさくっと読み終わったし、この著者、古代中国関係のものを書いているようなので、他のも読んでみようかな。

  • 20年前に読んだ本。

    そのときは守城という設定と墨子の思想をストイックなまでに体現する主人公・革離のキャラに惹かれた。

    あらためて読み直すと、この人の文体が好きだったんだと思う。決して猛々しい文章ではなく、乾いた文体で、ストイックな革離のキャラにピタリとはまっている。

    この小説を原作として、コミック版、映画版、さらには映画版のノベライズまである。随分と内容が変わっているが、それはこの小説が想像力を掻き立てるからなのかもしれない。

    とにかくおもしろい。

  • 酒見ワールド全開。こんなに短いのに(だから?)。この味わいがすごく好き。

  • 三国志とか読んでいると、この話も良くあるパターンの話だなぁと思うかも。
    短編にしておいて良かったって感じの作品ですね。
    主人公の最後の独白が印象的でした。
    あとがき、解説はちょっと書き過ぎって気がしました。

  • 墨子という思想家、その思想を信奉する墨家という学派。
    まだまだ研究途上で謎に包まれていて、そこがまた興味を惹かれる。。
    小説はほんのひとエピソードって感じで短く、サラッと終わってしまうが、
    墨家の空気は感じられた気がする。

  • 以前映画を観て面白かったので読みたいと思ったのだが、どうやら本は絶版のようで、書店で手に入らず、探し回ってようやく手に入れました。
    内容は、映画よりも数倍面白く、こんなに薄い本で、こんなに面白おかしく簡潔に書けるものかと、作者の力量に感服しました。
    主人公・革離の墨者としてのすばらしい能力、冷静な判断力、キャラクターとしての魅力、読む側をグイグイと引き込みます。
    そして、あっ!と驚くラストは、映画とはまったく違うラストで、私個人としては、こちらのラストの方が清々しく好きでした。

  • 「墨守」という言葉があることをはじめて知りました。薄い本なのにとても面白いです。専守防衛が隊是の自衛隊の方々には大変参考になるのではないでしょうか。

  • 再読。仕方ないとは言え、幕切れを知っているとなあ。でも、この人の文の魅力はまた別なとこにあるんでなあ。

  • ん~

    微妙

  • 『瞭姫を殺したことはこの場合誤りだったのだ。何事も教科書通りにはいかぬ』
    革離は一つ学んで、にやりと笑った。革離は墨子教団に属し、天志のもとに生きる男であったから死を恐れる必要はなかった。

    ・「守」に徹する。できなくば死ぬくらいの信念。
    ・「守」はメンタルだ。全員が同じビジョンを共有することだ。その維持のためには正当な信賞必罰。仲間でも斬る。
    ・さらに重要なポイントは、それだけでは駄目だということ。

  • 図書館から借りました

     歴史小説。中国古代もの。
     始皇帝以前の物語。
     戦闘にたけた、謎の墨子教団から派遣されたたった一人の男が小さな城を守ろうとする。

     中身は150ページに満たない。
     読みやすい。さらさら読める。
     墨者の革離という男は合理主義で勤勉で、融通がきかなくて、プライドの高い戦争職人。
     女遊びしか考えないダメ城主、墨者を嫌うその息子、戦の素人である民。
     それらを短期間で躾なおして、強大な敵と戦う。
     素人の民衆にとって、革離は軍神だった。小柄で、さして若々しくもなく、おそらくは普通の男であったけれど。彼は短期間でその城の柱となりおおせた。
     結果として、城主の息子が自分の女を処刑された(敵に情報を漏らしたため)恨みで、革離を殺してしまうと、途端にくずおれてしまう。
     死にさいしてもいさぎよい。
    「ああ、あそこで彼女を殺すのは間違いだったのか」と、思う。
     だがそれは後悔ではなく。
     答案に間違った答えを書き、正しい答えをみつけて、ああわかったという感想でしかなかった。
     戦闘の仕方が書かれていて、攻城、籠城の戦い方がわかりやすい。
     参考になった。

  • 中国の様々な思想家集団の中で、とりわけ謎が多い墨家。
    「墨守」という言葉が残るほどの彼らの固い守りは決して消極的なものではなく、そのまますなわち「攻撃」でもあったのだ、という前提で書かれた物語。
    「後宮小説」の時も思ったけど、この著者は想像で描いた内容がまるで事実であったかのように感じさせるのが巧い。
    最後が少し呆気ない気はしたが、じっくり人物の心理状態を書き込む作品ではないし、見方を変えれば乾いた手触りが漢文風とも言える。
    また同著者の別の作品も読んでみたい。

  •  酒見さんの中華物は面白いというイメージがありましたが、今回も裏切らず。面白かった! 超薄い本でしたが、内容は濃くて、革離の軍師っぷりが清々しく、最後のあっけなさもリアリティがあってよかった。戦にいかされる知恵にもドキドキした。城攻めに心躍り、革離の生き様がかっこいい。墨子に興味が湧いた。もっとじっくり読みたかったな。歴史物が好きならばお気に召すと思う。おすすめ。

  • 作者については、「後宮小説」で見限っていた。だから彼の原作と知らずに映画を観て、結構気に入った。ポスターの主役がイチローに似てて(笑)興を削ぐエピソードもあったが、あれは国民性だろうなぁ~
    原作を読んで、映画とは別に淡々とした歴史書的感じが良かった。人物にもう少し肉付けがあってもと思うが、過剰になると映画に近くなる。内容的に・・ちょっと悔しいが田中芳樹より上。中国歴史は好きなので、他の作品も読んでみたい。

  • ある城を守るために派遣された一人の墨子が活躍する小説。徹底的に防御。

    良いテンポでさくさく読め、すぐに読み終わってしまう。
    あっけない幕切れだけど、それがまた小気味良い。

  • 1/5:秦の時代に実際した戦術集団の墨子による、ある防衛戦を描いた短編小説 短いながらも戦闘シーンが生々しく、重機同士がぶつかったり、刻の声をあげながら猛り狂う兵士、村人の声が聞こえてきて非常に没頭してしまった 墨子の存在自体もミステリアスで集団として妖しさを残して興味深い
    このボリュームでこの内容とは感嘆に価する

    映画化されているようなので観てみたいが想像を絶しているのか?

  • 最初難しそう。。。と思っていたけど、そんなことはなく、とても入りやすかった。
    するする読めたし、面白かったです!
    酒見さんの文章は本当に読みやすいなぁ。

  • 趙の大軍の侵攻に備え、小国・梁は墨子教団に助力を求めた。
    しかし、派遣されてきたのは革離ただ一人…。
    梁の手勢は少なく、城主は色欲に耽り、その城壁はあまりに脆かった。
    果たして、革離はたった一人で梁城を趙の猛攻から守り通すことができるのか?

    戦国時代の中国に存在したという墨子教団。
    「一人を殺せば単なる犯罪者だが、戦争によって多くを殺せば英雄である」という警句を当時既に吐き出し、「己を愛するように他人を愛する」兼愛説を唱え、他人に奉仕する一方、優れた技術者集団であり、「非攻」を唱え、まさに侵略されようとする国々を守る事のみを専らとした特異な戦闘集団であった。
    かつて、多くの思想家とともに存在し、歴史の中に消えた学派・墨家。
    その教えを忠実に守り、生きようとした一人の男の「非攻」の戦いを虚実入り乱れて描く歴史小説。

  • 映画にもなりましたね。南伸坊の挿絵、絶妙な脱力感があってよいです。

    戦国時代の中国で、大国に攻められそうな小国や村落からの依頼を受けて、墨家集団はメンバーを派遣する。戦争の専門家として、彼らは当時最先端の技術を駆使しひたすら守りに徹する。
    ある墨家の一員と、彼が助っ人として参加した戦闘の緊迫した攻防が描かれています。

    防御に徹するとはいえ、敵を殺すことにかわりはなく、墨子の教えである「非攻」と「兼愛」をかかげつつ、同時に優れた戦闘集団である墨家の矛盾が浮き彫りになっていきます。

    中国という国の歴史は混沌としていて奥深く、面白い。
    短くて結構あっさり読めました。

  • 良い。他の作品も読もう。。

  • 短編とは思えない読み応え。
    薄くてもこんなに充実した本に出会うとむやみやたらに分厚い本はそこまで書き連ねないと話を面白くできないのか?という一抹を危惧を抱かせる。
    分厚い本が好きな人間のたわごとでした。

  • 【本の内容】
    戦国時代の中国、特異な非攻の哲学を説き、まさに侵略されんとする国々を救援、その城を難攻不落と化す謎の墨子教団。

    その教団の俊英、革離が小国・梁の防衛に派遣された。

    迫り来る敵・趙の軍勢は2万。

    梁の手勢は数千しかなく、城主は色欲に耽り、守備は杜撰であった。

    果たして革離はたった一人で城を守り通せるのか―史実を踏まえながら奔放な想像力で描く中島敦記念賞受賞作。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    諸子百家の中で古代では最も流行したにも係わらずその後急速に衰えた墨家の非攻思想と実践を描いています。

    独特の淡々とした筆致でありながら不思議と引き込まれる小説。

    漫画化や映画化もされており、それも違った魅力が有りお勧めです。

    映画予告では10万の軍勢だったと思いますが、その軍勢を相手に、数千の手勢でどう対するのか?

    武器や城砦など、小説の描写だけではどんなものかよくわからなかったのですが、想像力を刺激します。

    攻撃ではなく守備が専門という墨子集団。

    そのひとり革離。

    たったひとりで小城を守るためにやってきたのですが、守ることに徹した作戦で敵の攻撃を待つ戦術にしびれます!

    読み進めるうちに、こんな不可能な状況が、何とかなるかもと思われてくるのが楽しかったですね(笑)

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 面白いけど短過ぎる。もう1エピソード!と思ったらあとがきかよ

  • 墨攻は映画を観て、むちゃくちゃツボにはまっちゃって、
    次に漫画を読んで、さらに深くはまっちゃって、
    小説も読んだら、ラストがいちばんよくて、ものすごく
    気に入りました。

    最近の作家で好きな人っていなかったんだけど、酒見賢一氏の
    作品はこれからいろいろ読みたいと思っています。

    映画とか漫画で墨攻を知ってる人は、立ち読みでもいいから、
    ラストだけでも触れてほしいです。
    このリアリティはほんとにすごい。
    ぜんぜん劇的じゃなくて、戦国時代にはありふれた
    風景なんだけど、だから映画の劇的さより、ずっと
    「こうなんだなあ」と感じるんです。

    酒見氏、可能なら一度お会いしてお酒でも飲みたい人です。

  • ストイックで乾いた感じが大変私好み。映画はちょっとベチョっとしてたなー。

  • 最初とっつきにくいかと思ったけど、とてもおもしろくあっという間に読めてしまいました。いろいろな意味で勉強になった作品。

  • 2009年夏ごろ読んだ。

  • H21.11.22 読了

  • 本当に薄い本で、短い話なのに、読み終わったあとこんなに充実感が残るのはやっぱりすごい。
    どうでもいいけど、この本は文庫本として一番美しいページ数だと思う。

  • そこまで込み入った政治的な話もないし、簡潔な文章でさらっと読める。

    墨子の思想は、自分の主義主張とよく合致するw

    でも、実在は疑われてるらしいですね...残念。

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