思い出トランプ (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101294025

作品紹介・あらすじ

浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など-日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 十三話の短編からの思い出トランプ。最後の作品は「ダウト」。洒落ている。
    何処にでもあるような、普通の家庭の中にある不穏な空気感。家族への疑惑、疑心、不安、不満。それらを飲み込みながら、家族としての在り所を探していくのでしょうか。
    現在の価値観では、納得できない世代もあると思う家庭や夫婦の表現かもしれませんが、狡さとか背信をも受けとめて、愛情と諦めの混雑が実情だった時代です。男女それぞれの感情が響く素敵な作品です。

    • Manideさん
      おびのりさん

      すごい良い感想ですね (꒪̥︣ό꒪̥︣)

      この感想を読んでいると、とても深みを感じます。
      感想を何回も読み返してしまいまし...
      おびのりさん

      すごい良い感想ですね (꒪̥︣ό꒪̥︣)

      この感想を読んでいると、とても深みを感じます。
      感想を何回も読み返してしまいました。

      1980年の作品なんですね。
      背信をもうけとめるなんて、どんな感じだろうかと、物語の世界観に触れた気がしました。

      いつか私も読んでみて、その時代に触れて見たいと思いました。
      2022/08/04
    • おびのりさん
      Manideさん、こんばんは。
      いつもいいねありがとうございます。
      コメントもありがとうございます。
      短編なので、感想が抽象的でしたね。でも...
      Manideさん、こんばんは。
      いつもいいねありがとうございます。
      コメントもありがとうございます。
      短編なので、感想が抽象的でしたね。でも、しっくり読みました。
      シリーズを書き終わる前に直木賞が決まった作品とのことです。
      私も向田さんの作品をもう少し読みたくなりました。
      2022/08/05
    • Manideさん
      おびのりさん

      いつも返信ありがとうございます。
      怖い本リストの中で、この本を紹介している方がいました。
      人間が一番怖いというコメント付きで...
      おびのりさん

      いつも返信ありがとうございます。
      怖い本リストの中で、この本を紹介している方がいました。
      人間が一番怖いというコメント付きで…

      人によって捉え方が違ったり、
      同じ人でもその時の状態によって受け止め方が違ったり、
      いろいろあって、面白いですね。

      気温差が激しい8月になっていますが、
      お身体気をつけてお過ごしください ◠ ◡ ◠
      2022/08/06
  • ウン十年ぶりの再読です。ちょうど私が学生の頃、直木賞をとった作品として話題になり手に取ったのでした。そして、ウン十年後の今、読み返してみるとどう感じるのか?試してみたくなったのです。13作品の短編集です。

    当時の日本の一般的な家庭の風景。ごく普通に流れていく家族の生活。夫婦、親子を通した日常。一見何もおかしな所はないのだけれど、その中の個々人の心の中には様々な思い、記憶、経験。嬉しいこと悲しいこと、憎らしいこと。様々な思い、感情が表面には出てこないけれど内面に渦巻いている。そういった内面を掴み取り、暴き出して端正な言葉と文章で鋭く描写している。

    私は向田さんの家族愛に基づいたキレキレの描写が好きなのだけれど、人間の心の闇に切り込んでくるところも流石だな!と思ってしまいます。

    例えば今回再読していて、「獺祭」という言葉の意味を改めて認識しました。今の私には「美味しい日本酒」というイメージしか頭の中になかったのだけれど、「かわうそ」という作品の中で、妻である一人の女性のシタタカな一面を見せつけられた様な気がしました。「獺祭」という言葉を通じて、、、少し怖かった。

    やはり、家族や人の心象が向田さん独自の多彩な輪郭で描かれている。場面展開の素早さも心地いい。途中で止められなくなります。

    ウン十年前に読んだ時は「何だか不気味な作品集」というイメージを持っていたのだけれど、今回再読して過去とは異なる印象を持つことができました。

    もちろん背景はウン十年前の昭和の情景です。しかし、人の心の有り様というのは変わらないものですね。

    向田さんの作品は歳をとりません。

  • H30.8.24 読了。

    ・短編集。「かわうそ」「犬小屋」「花の名前」は、面白かった。

  • 人の心の奥にあるわだかまりや、後ろめたさ。
    他人には計り知れない、家庭の内情などが書かれていて、どきどき、ハラハラしながら読みました。
    登場人物それぞれの人間臭さが、とてもいいです。
    こんな中身の濃い短編集を読んだのは初めてです。

  • タイトルがなんだか可愛らしくて手に取りあらすじを読んで気に入った本であったが、想像していたものとは良い意味で違った。
    全編読了後のくるしさ、苦さがすごい。
    とにかく向田邦子さんのすごさがわかる。
    特に向田さんの芸を感じられるのは
    「かわうそ」 「大根の月」
    どちらも終わり方が素晴らしい。
    文学作品として美しすぎる。

  • 2019年4月14日、読み始め。
    著者は、日航機事故で亡くなられた。
    そのことは、事故直後の報道で知ったが、それまでは、著者のことは全く知らなかった。
    で、著者の作品のいくつかを知ることになり、いずれは読んでみたいと思っていた。
    が、時間ばかりが経ち、日航機事故から37年以上が過ぎてしまった今、ようやく作品に向き合うことになった。

    63頁まで読んで、返却。

  • 気づいてはいるけれど、見なかったことにしてやりすごしている日常の毒を、端正な筆致で描き出す小説。
    ヒステリックにほら見なさいよ、あなたってこんなよね、と突きつけるのではなくて、人の哀しみとして隣にただ佇んでくれるような。
    沁みます。

  • 何でしょう?
    日常の少し嫌な、モヤモヤすることの集合体のような短編集でした。読後感は正直あまり良くはない。
    ともすれば、日常に埋もれて流れていってしまうささくれのような出来事をこんなに拾って詳らかにできることがすごいと思う。
    普段の生活にどれだけ気を配って生きていた方なのだろうと感じました。

  • トランプのカードの如く、無駄の無い巧みな描写の13の短編が収められている一冊。
    改めて、向田邦子さんの文章の巧みさ、構成力に魅せられる。
    どの作品も、人生の最盛期を越えた人々の描写が多く、人の弱さや、狡さ、図太さが何気ないさらりとした文章の中に、実は生々しく、かなり辛辣に描かれている。天才である。

    飛行機が苦手であった著者は皮肉にも1981年の台湾での航空機事故に遭い、惜しいことにお亡くなりになられる。

  • 何気ない日常のなかで目にしたり耳にした物事をきっかけに、ふと過去の記憶を無意識に手繰り寄せていることがある。色んな大人の「そういうこと」を丁寧に丁寧に描いた13の短編集。私は随分多くのことを忘れてしまっている気がするけど、自分の容れ物のどこかに、これまで記憶してきた色んなものが、散り散りになって置かれてる。そしてそれは大概、暗くてどろどろして痛々しいものが大半で、思い出すとしんどいから都合よく袋で何重にも包んじゃってる感じなんだろうなあ。と気づかされてつらい。その上包み方も雑だから、たまに漏れ出ちゃってつらい。そして袋は年々劣化していく。

  • 昭和の雰囲気がとても心地よい。
    現代においても昭和においても、人の悩み、葛藤、嫉妬、疑惑といった複雑な感情は変わらずにあって、そういった意味では古さを感じさせない。
    日常生活のちょっとした出来事から様々な感情を描き出す物語に没頭してしまいました。



  • 過去一の短編集。ワードセンスレベチ。何だこれわ。

  • 書店で、綺麗な赤の装丁の『プレミアムカバー』として売っていた。他に並んでいたのは、梶井基次郎の『檸檬』ほか、錚々たる作品ばかりなのに、向田邦子作品の代表作であろう本作の名前も知らなかったので、思い立って読んだ。

    各作品とも、二十頁にも満たないのに、切れ味鋭く、大人の作品という感じ。

    13作(なのでトランプ)のうち、一番印象が強いのは、『かわうそ』。奥さんの「獺祭ぶり」が怖い。

  • 向田邦子さん(1929-1981)の直木賞受賞作3編『かわうそ』『犬小屋』『花の名前』を含む13編の連作短編集です。受賞作品の選考に関わった阿川弘之、水上勉、山口瞳の三氏が強く推奨されたという、 日常生活のなかでよぎる人間の心の奥の〝一瞬の闇〟が、何気ない仕草やふと出た言葉と絡み合って語られる人生模様の色とりどりは、読む者の心に突き刺さってきます。

  • 大根の月、はたまらない。いつまでも読み継がれる本だろう。

  • 人間というのは絶対に『清廉潔白』ということはないんだなあと思いました。そこがまた人間の良さであり、味であるのかな。

  • 初めて読む向田邦子作品。
    まずタイトルが気に入りました。1つの話が短いのも読みやすい。

    どの話も「人生の夕方」的な薄暗さがあるけど、
    人間の生活のいじらしさが感じられました。
    説明しすぎない文章も独特の余韻が残る。

    この中では断トツで「かわうそ」が好き。
    「写真機のシャッターがおりるように、庭が急に闇になった。」
    という最後の一文がかっこいい。

  • 中年にさしかかった男女の悲喜こもごも。
    人生には永久に続く喜びも、悲しみも、ない。
    あるのはそれらの繰り返しだ。繰り返して、幸せを手に入れたと思っては失って、そうしているうちになんとなく一生を終える。そのことに気づいて、失うとわかった上でつかの間の幸せを心から喜ぶことの尊さ。
    こういう風に年をとっていくんだなと思うと、むなしくもあり、安心でもあり。

  • ある日宅次は、脳卒中で倒れた夫に黙って、妻は自宅の庭にマンションを建てようとしていたことを知る。その昔、自分の手落ちで3歳で娘が亡くなったのを新人看護師のせいにしていたことを知る。嘘のうまい妻の残忍さに対する怒りを感じつつ、その陽気さについ妻を許してしまう夫の複雑な心境をユーモラスに描いた短編作品

  • どんなに優しくほがらかであっても、どんなに「出来た人」と呼ばれるエリートであっても、人は誰でも少なからず暗い部分をもっている。
    女のずるがしこさをぞっと思う反面で、私にも同じような面があるのかもしれないと思ったり思わなかったり。

  • 最近、向田邦子の作品の面白さを紹介するコラムを目にし、学生時代以来の再読。直木賞を受賞した「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」を含む13篇が収められている。そのどれもが人生の半ばにある男や女の目線から語られる一瞬の物語。その一瞬の中に、過去の出来事や思いが走馬灯のように駆け抜けていくスタイルだ。約40年前に書かれた小説だが、人の煮え切らぬ心の中をうまく切り出していて、古さを感じない。向田邦子は執筆当時、すでにテレビドラマの脚本家として売れていて、直木賞をきっかけにどんな活躍をされるのか注目されていた。ところが受賞の翌年、台湾での飛行機事故で急逝、51歳だった。生きていたらどんなに面白い物語を作ってくれたことだろうか。

  • ほぼ30年ぶりに再読、かわうそ、近くにいましたこんな人。あの頃夢中になって読んだなぁ、懐かしい、けど新鮮。

  • 背景の時代は古めですが、それも相まって、お洒落な作品だな、と思いました。
    哀愁漂う大人っぽい作品で、13篇だからタイトルに「トランプ」とあるのがいいなと思いました。

  • 四、五十代の人達が人生を省み、後ろめたいこと・やましいことが明るみになっていく展開に胸がざわざわするような感覚を味わえる


    向田邦子っぽさ、みたいなものが分かった気がする

  • 読むたびに新たな発見があり、味も出てくる短編集です。つまり、さらりと読んでも楽しめるし、どこまでも深読みして、自分なりの解釈もできる。短いセンテンスのなかに、鮮烈な印象を残すものが凝縮されており、読み終わってもストーリーは完結しない。そういう意味ではどの作品も短編小説として完成されている。「チャンネルを回す」とか「ラクダの股引」なんて語が出てきたり、淡い昭和の香りとせつなさを感じました。

  • 『父の詫び状』が大好きで、他の作品も読んでみようと手に取った。人間の愛しさとして捉えたと紹介にあるが、弱さや狡さの描かれっぷりがどうにもリアルで生臭く、とても愛しさとはくくれない。読んでいて辛い方が多かった。自分はまだ精神的な加齢が足りていないのかと少し考えてしまう。
    エッセイでも感じるこの人独特のものの捉え方は興味深い。『男眉』で地蔵に対して主人公が抱く思いは、おそらく作者自らの感覚だろうと思う。擬音もいい。水枕のプカンプカン。

  • 抑えた文章で、日常生活の中に潜む人の情念を描いている。結末でも予想外の展開がある。

  • 向田邦子が大好きだ。等身大の日常から逸脱しない、ありふれた世界の小さな出来事で、人と人の距離をうまく捉えて紡がれた文には本当にしみじみとする。人間の弱さが愛しく切なく感じられる。

    ただ、今の自分には人生経験が足りなさすぎて、行間の埋め方に苦慮すること度々。もっと大人になってから再読したい。というより、時々書棚から取り出して読み、自分の感じ方の変化を楽しみたい本だと思った。

  • 向田氏の短編集。氏の作品はいくつか読んでいるが、本当に心をえぐられるような気持ちになる作品が多い。

    人の心の闇、弱さや汚さなどを日常の一コマを切り取って上手に描く名人芸と思う。人のそういった面も含めて愛おしく思える、そんな気持ちになった。

  • 母が、「思い出トランプ」のドラマ化されたものを見たとかでひどく怖がっていた。前に、途中まで読んでほったらかしにしていた記憶があったのでそんなに怖いようなことがあったかなと急いで電子書籍を買った。
    向田邦子の作品は、これが初めてであるが感想としてはとにかく「どれも巧みに怖い」
    ちっとも幸せになれないし、ほっともしない。
    それが徹底されていることが怖い。
    そして、さすがである。
    まだ他の本も読んでみたい。できれば優しい結末を迎えるような。

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著者プロフィール

向田邦子(むこうだ・くにこ)
1929年、東京生まれ。脚本家、エッセイスト、小説家。実践女子専門学校国語科卒業後、記者を経て脚本の世界へ。代表作に「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」。1980年、「花の名前」などで第83回直木賞受賞。おもな著書に『父の詫び状』『思い出トランプ』『あ・うん』。1981年、飛行機事故で急逝。

「2021年 『向田邦子シナリオ集 昭和の人間ドラマ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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