流転の海 第1部 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (403ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101307503

感想・レビュー・書評

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  • 敬愛する中瀬ゆかりさんが、ラジオで生きている間に出逢えて、1番と言える作品と聴き、1巻から。宮本さん初読みだが、骨太ながら細やかでもある筆致に惹きつけられる。戦後の焼け野原から事業を立て直し、息子を授かった松坂熊吾。強引で豪腕な男の物語と思いきや、商魂の鋭い目利きや、人への恩義や熱い情も持ち合わせ、薄幸な生い立ちの妻房江との関わりも併せて目が離せない。30年以上前の作品だが色褪せず、熱を感じる。次巻以降がワクワク。

  • ・12/27 読了.まきさんに借りたから読み始めたとはいえ、第九部まである大作とは知らなかった.自伝的長編ということもこの作家の集大成だということも知らなかった.手を付けてしまった以上この作家の父親の半生をじっくり読んでみようと思う.

  • 中盤から、熊吾だけでなく、それぞれの人物のエピソードにぐんぐん引き込まれた。熊吾という人物は、豪傑だが繊細な部分もあり、単なる我侭のように振る舞う時も、実はその裏に多くの思いが隠れていたりと、とても奥が深い。まずは一冊読んでみようと思って、これだけを買ってみたが、次が読みたくて仕方が無い。

  • これまでに読んだ宮本作品の中では一番好きじゃない。

  • うーむ。方言や独特の言い回しが読みにくかった。途中断念

  • リーダーの本棚ローソン社長 竹増貞信氏
    自分の至らなさを教わる
    2017/9/2付日本経済新聞 朝刊
      三菱商事時代に先輩からこんな言葉をもらった。「一人の営業マンとしての実力は認める。でも一生それでいいのか。経営者になりたいなら考えろ」。30歳前後だった。



     自分ではそれなりの仕事をしていた自負はありましたが、一緒に仕事をする2、3人のチームの後輩の仕事ぶりには若干、不満を抱いていました。「自分がやれば、もっと早く仕事をまとめ上げることができる」と。「一人の営業マン」のままなら、それもいいのでしょうが、経験を重ねていくと小さなチームから徐々に大きな組織をまかされます。先輩からはその心構えを問われていたのでした。

     そんなときに書店で手に取ったのがパナソニック創業者、松下幸之助氏の『人を活(い)かす経営』です。冒頭からハッとさせられましたね。

     「お互い人間はあたかもダイヤモンドの原石のごときもの」「それぞれの人がもっているすぐれた素質が生きるような配慮」「お互い人間一人ひとりの喜びにみちた人生」

     幸之助翁の言葉はまさに自分の至らない点を鋭く指摘してくれていたのです。自分の長所と仲間の至らない点を比較していたことに反省しきりです。仲間を育てて成長させることを学びました。すると自然と苛立(いらだ)ちも消え、組織が好転していくのを実感しました。

      組織と自分。どう向き合うか。30代前半に考えていたときに出合ったのが『流転の海』だ。

     戦後の大阪の焼け跡闇市から始まる様々な人間模様を映し出す宮本輝さんのライフワークです。なかでも主人公で松坂熊吾の息子、伸仁の成長していく姿に著者の生き方を重ねて読むのが好きです。熊吾は戦後、実業家として再起を図りますが、周りの人間に翻弄され続けます。そばにいる伸仁は子供として見てはいけない世界の淵にいながら、立派に育っていきます。

     不思議に思っていましたが、読み続けているとこんな言葉が浮かんできました。「性根」です。心がまっすぐでないと、人に感化されてしまいます。その性根とは誰もが本来、持っているものなのか。流転する人生の中で自分の軸、性根をしっかり持っていれば、人生を切り開いていけると確信を持ち、勇気づけられました。

     型破りな熊吾ですが、波瀾(はらん)万丈の人生からにじみ出る名言を生み出します。「自分の自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」。確かにそうだと思います。仕事人生の中で余計なプライドが邪魔をしてうまくいかなかった商談のことを思い出しました。

     「流転の海」の単行本は第8部まで出ていますが、手にしているのは第7部までです。最新作を読みたいのはやまやまですが、いつも文庫が出るのを待って購読します。渇望によってさらに物語の世界へ深く入り込めそうな気持ちになるからです。「まだ文庫本が出ていないかな」と書店に足を運ぶきっかけにもなっています。

      ローソンの社長になってカバンの中に入れているのが『アインシュタインの言葉』だ。

     真理を追究し続けてきた偉人だけに極めて簡潔で、読めば「そうだよね」と合点がいく珠玉の言葉ばかりです。例えば「同じことを繰り返しておきながら、異なる結果を期待するとは、きっと頭がどうかしているのでしょう」。御意としか言いようがありません。移動中にこの本を取り出して文字を追っていると心が落ち着きますよ。

     管理職として数字を追いかけていた時代と、社長としての仕事の取り組み方は違います。企業理念(「私たちは“みんなと暮らすマチ”を幸せにします。」)を反芻(はんすう)しているとき、この本からこんな言葉を見つけました。「わたしたちが目標にすべきことは、社会の精神的価値を高めることです」

     コンビニが社会の一員として必要とされる存在価値があることを示してくれていたのです。商売を通じて精神的価値を高めることに、加盟店さんと共に取り組んでいく姿勢を再確認しました。

     読書は自分が経験していない世界から自分の至らなさを知り、立ち位置を教えてくれます。

    (聞き手は編集委員 田中陽)

     【私の読書遍歴】

    《座右の書》

    『人を活かす経営』(松下幸之助著、PHP研究所)

    『アインシュタインの言葉』(弓場隆翻訳・編集、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

     

    《その他愛読書など》

    (1)『流転の海』シリーズ(宮本輝著、新潮文庫)
    (2)『蒼穹の昴』(全4巻、浅田次郎著、講談社文庫)。中国清朝末期、たもとを分かった2人による国統一へのドラマに感銘。
    (3)『竜馬がゆく』『坂の上の雲』(ともに全8巻、司馬遼太郎著、文春文庫)。登場人物の行動力、国造りの志に心が揺さぶられる。
    (4)『LIFE SHIFT』(L・グラットン、A・スコット著、池村千秋訳、東洋経済新報社)。長寿化が進む中での働き方、生き方を示す。
    (5)『もっと深く、もっと楽しく』(中部銀次郎著、集英社文庫)。ゴルフの技術書でなく精神書。己を知ることを学ぶ。
    (6)『おしりたんてい』(トロル著、ポプラ社)。子供に読み聞かせている。なんでもオナラで解決してしまうところが痛快。

     たけます・さだのぶ 1969年大阪府生まれ。93年大阪大学経済学部卒、三菱商事入社。米国勤務などを経て、2014年ローソン副社長。16年から現職。

  • 2017 9/10

  • 戦後の再生の物語。

  • 熊吾という主人公に対して序盤はあまり
    ただの乱暴ものでいい印象ではなかったが
    読み進むにつれ房江との出会いや
    運送屋、部下たちとのやり取りから
    熊吾の人間臭いキャラクターが
    興味深くなっていった。
    今どきこんな人そうそうおらん
    そりゃ、惚れるよなぁ。

  •  主人公は愛媛弁丸出しでアクの強い大男・熊吾 
    学歴はないがずば抜けた才覚と持ち前の気風の良さとで事業を拡大し一家をなす
     他の登場人物の話し言葉は 当時のあの辺りの大阪弁そのままで 違和感なくしみ込んで来る この人達は 多分作者が実際に見聞きした人たちで ただ順にポケットから取り出して 勝手に動き回るにまかせている・・・という安心感があって気持ちよくのめり込んた
     熊吾の事業は順調に拡大していたが 最愛の幼い息子が病弱で そのために事業はすべてたたみ 戦前会社のあった梅田の一等地も現金に換え 故郷に帰る 
     朝鮮戦争の気配

    第2集が楽しみ

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著者プロフィール

1947年兵庫生まれ。追手門学院大学文学部卒。「泥の河」で第13回太宰治賞を受賞し、デビュー。「蛍川」で第78回芥川龍之介賞、「優俊」で吉川英治文学賞を、歴代最年少で受賞する。以後「花の降る午後」「草原の椅子」など、数々の作品を執筆する傍ら、芥川賞の選考委員も務める。2000年には紫綬勲章を受章。

「2018年 『螢川』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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