火車 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369181

感想・レビュー・書評

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  • 朝日新聞の「平成の30冊」に「火車」がランクインしてたので読み返した。
    小6のときに初めて読んで「おもしろいなー、大人の小説だなー」と感じ、ミステリにはまるきっかけになった作品。(当時は半分も意味がわかってなかったと思うけど)

    平成2年を舞台とした本作品、単にミステリーとして完成度が高いだけでなく、確かに「平成」と冠するに相応しいのではないか。

    平成をリアルタイムで生きていると気づけないけど、確かにこの30年で社会の価値観は変わっていることがまざまざと分かる。
    バブルが弾け、昭和が終わった平成2年当時の空気を丁寧に丁寧に書き込んでいる宮部みゆきに脱帽。


    生きている間にどんどん世相は変わっていく。意識的にキャッチアップしないと置いていかれる。
    今、この一瞬の常識が未来永劫続いていくと無意識に感じてしまうが、刻一刻と時代は流れて行く。

    著者自身が意識してたかは分からないけれど、謎解き以外にも得るものが多い作品。

  • 朝日新聞が識者120人のアンケートによって「平成の30冊」を選んだそうな。
    “識者”というのが曲者で、どうしてこう小難しそうなものが並ぶのだろうと思ったが、その中から4位タイに並んだエンタメ系と思しき2冊をTSUTAYAで買い、まずはこの本から読み始める。

    甥から失踪した婚約者探しを頼まれた休職中の刑事・本間。
    調べを進める内に、頼まれて探している「関根彰子」は本当の「関根彰子」ではないことが明らかになり、もはや甥の依頼とは関係なく真偽二人の「関根彰子」を追っていく。
    本間が行く先々で当たる人々が悉く有益な情報をもたらしてくれるのがうまく行き過ぎで、個人情報保護法が行き渡った今ならとてもこうはいかないと思うが、そこらには目をつぶるとして、結構面白く読めた。
    本間が自分でどうしてこの事案を追うのかと自問する場面があるが、その時結論付けたように、登場人物にも読者にも共通してあるのは”好奇心”なんだろうか。色んな人のつながりを手繰り、「新城喬子」に辿り着く。
    そこにあったのは、借金地獄の悲惨。そして、自分の身に降りかかったことを、歪んだ形でしか外に向けて清算出来ない人の哀しさ。
    前半語られる「関根彰子」の生涯も憐れだが、後半明らかになる「新城喬子」の人生の凄惨さも哀れ。
    物語が解きほぐれかけてからも、様々な”何故””どうやって”は残ったまま、最後にはきれいに回収されて見事な収束。
    確かに本間同様に、「新城喬子」がひそかに積み上げてきた話を聞いてみたいと思わせる終景に余韻あり。

    小難しそうなラインアップからエンタメ系を選んだつもりだったが、これも結構社会派だったのだった。

  • すごい!
    読み応え十分!!

    朝から晩までかかったけど1日で一気読み。
    徐々に核心にせまっていくので、おもしろくて読み飽きない。読み終わっての余韻もいい。

  • 宮部みゆきを読むなら?

    との問いに「それは『火車』でしょう!」との答えが返ってきたので読む。

    途中リタイアしたらどうしよう…と思っていたのだが、すすむすすむ。
    まさに、わくわくしっぱなしの一冊であった。

    彰子の後を追いながら、喬子の壮絶な過去が明かされていく。
    この二人の女性の、異なりつつも繋がりのある過去が面白い。

    登場人物が上手く役割を果たしながら、一人の女性の今を暴いていくストーリー。
    途中、もたつく部分もあるのだが、またカラクリが解けていくところはすいすいとページが進んでいく。

    そして小説の結末で、急に時間の流れがゆっくりに……。

    この緩急のつけかたがニクいなあ、と思ってしまった一冊であった。

  • 700ページぐらいある長編ですが、短く区切られてて読みやすく飽きない!そしてさすが大御所作家の宮部みゆきさんです。先が気になって仕方なかった。
    ボケの件と、本筋がなんか絡んでいるのかなと思いつつ…
    分かる、分かるよその締め方。恐らくそれがキレイなんだと思いますが、単純に結末の先を知りたくなりました!想像が膨らんで止まらないです。

  • これまでたくさんのミステリー小説を読んできましたが、この作品は他に類を見ない作品でした!

    自分の中のミステリー小説No.1になりつつあります!

  • 一般には評価の高い作品であるが、自分には良さが分からなかった。ミステリーとしてはむしろ駄作じゃないか?
    ■そもそもこんな依頼(親類なら尚更)現役の刑事に頼めない。興信所に依頼できない理由に説得力無い。
    ■登場人物がやたら多く、場面も各地に飛び過ぎで話に落ち着きがない → 公務ではない休職中の刑事がそこまでやるか? もともとの依頼主の若造が逆ギレしてる場面も不自然。
    ■心理・情景描写が印象的で豊かな表現であるとは思うが、それが脇役(端役)にまで及ぶので文章が長過ぎる。女性に対し「美人である」「美形である」…のような表現が多過ぎ、そんなに必要な一文なのか? 読むのがしんどく成る。
    ■決定的なのは終わり方が酷い。真相が解明された終わり方じゃ無いでしょ?これでは!??

    当時問題になってた消費者金融やカード破産、個人破産などをミステリーで扱ったのが斬新で話題呼んだ作品なのであって、渡辺淳一氏の評「お遊びの小説、心を打つものでない」…その通りと感じた。

  • 最後がこれで終わりって思ってしまいました。
    これから真相が明らかになるのではと思い読み進めていたら終わりで拍子抜けしてしまいました。

  • 親の住宅ローン破産、クレジットカードによる自己破産、ふたりの女性が辿った人生と、その顛末。
    30年前の作品でありながら、違和感無く読めた。
    お金が人生を狂わせる。
    生き抜くための術は他にあったのか、もの悲しい感じが残る作品。
    久々の宮部みゆき作品、期待通りで安心して読めました。

    • ぐっちょんさん
      宮部さんのホント緻密ですよね〜
      宮部さんのホント緻密ですよね〜
      2023/05/08
    • etsu*さん
      サスペンスものは好みじゃない私でも、宮部さんの著書は、安心して読めます♬
      サスペンスものは好みじゃない私でも、宮部さんの著書は、安心して読めます♬
      2023/05/08
  • 読書を始めて間もない頃に読んだ作品。衝撃的でとても印象に残る作品で何回か読み返す作品の1つ。結末の続きが読みたい。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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