火車 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369181

感想・レビュー・書評

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  • 消費者金融から追われる人生がどのようなものなのか、それが自分の責任で無いとしたら...痛ましい人生が目に浮かぶようで辛い内容だった。時代も30年ほど前となっておりその時代を思い出させてくれるような気がした。最終ページにもう少し深みが欲しかった。

    • しまむさん
      積読にあるので読んでみたいと思います!
      積読にあるので読んでみたいと思います!
      2024/02/12
  • 宮部みゆきさんの作品は読ませる力があり、面白かった。ただし、途中まで。

    少し前の作品なので、この頃の問題点は現在は改善されている面があることが分かったりして勉強になる。

    だが、不満が残る点も多かった。

    まず、甥っ子からの依頼で調査をするが、この甥っ子がとても失礼。最後は反省してくれるのかと思いきや、失礼なとこまでで後は出てこない。
    調査の最初の目的からはだいぶズレてしまっている。

    それから、途中までは刑事としての血が騒ぐんだな、とあくまで刑事さんとして読んでいたのに、だんだん「男」の部分が出て来て気持ち悪い感じになってきた。

    そして、結局のところ犯人は早い段階で分かり、犯人がどのような人生を歩み、どうやってターゲットを絞ったのか、どこから情報を得ていたのかに終始してしまい、終わり方もかなり中途半端だった。

    良く言えば余韻の残る終わり方?
    文学としては良いのかもしれないが、ミステリーとしては不完全燃焼以外の何物でもない。

  • 連休中に読了。
    設定への既視感はおそらく戸籍の乗っ取りが「ある男」とそっくりだからだと思われる。

    内容はダダかぶりかと思いきや、自己破産など経済的な要素が絡まっており、苦しい現実とやり直したいという一心から生まれる足掻きが節々から感じられてリアリティが高い印象を受けた。
    消費者金融という名の借金に加え、クレジットカードが猛威を奮っている今日では簡単に破滅へと向かうことができるのだと認識。

    彰子の立場を迷いなく乗っ取ったにも関わらず、アルバムすら捨てることのできなかった犯人の葛藤も表現されていて深い。

  • 容疑者の過去の軌跡を追っかけていくというストーリーが秀逸! それが、数年前~1年前~半年前~1ヶ月前とだんだん近づいて来て、…。
    最後の最後まで、主人公が追いかけている犯人(?)は出てこない。
    だから読者も、犯人が過去に起こしてきた事件や経歴から犯人像を作り上げていくだけで、犯人の現在の姿はまったく未知のまま終わる。
    映像化されたときに、このあたりの問題をどうするんだろう(キャスティングで、誰が犯人役を演じるってわかったら、この話の90%以上は台無し)って思ってたら、最初のスタッフロールに「佐々木希」って出て、台無し。作る人間もこの小説の何が素晴らしいかをまったくわかってないんだなあとがっかりでした。

  • 社会の闇が浮き彫りになるミステリー
    失踪した婚約者が抱える闇、被害者が抱える闇が徐々に解き明かされていく
    主糸を一本づつ解いていくような警察官ならではの地道な探索に付き合うように読者も推理を進めていってしまう
    流れが止まらないミステリー

  • 怪我で休職中の本間刑事は、縁戚の男性から失踪した婚約者を探してほしいと頼まれる。
    休職中なので、身分を隠しながら女性を捜し始める。女性の名前、会社、住宅などわずかな情報を辿って女性の正体が暴かれていく。

    本間刑事の捜査視点、閃きが素晴らしい。実際の刑事さんもこのように緻密な捜査をされているのかなと感服。
    1990年代のクレジットカードに対する認識が現代と違うのも読んでいて面白かった。

    終わり方も想像が掻き立てられるいいラストだったと思う。

  • とても読み応えのある本だった。
    結構分厚いが、無駄な描写はなく、内容が詰まっている。

    中盤の蕎麦屋での弁護士の解説に、筆者のメッセージがすべて代弁されていると思った。
    ・自己破産できるのに!
    ・親の借金を相続する必要はないのに!
    →気が弱く、なんとか返そうとする真面目さを持ち、かつ【無知な】人が借金地獄に陥っている!!!

    この本を通して、クレジットカードの怖さやその仕組みを学ぶことができた。私自身、カードやローンに関わる前に読めてよかった。
    また、推理小説のような一面も楽しめる。
    長くて重いが、先程書いたように無駄な描写はないので、続きを知りたく一気に読んでしまった。

    終わり方はどうも釈然としなくて、保くんはなんと声をかけたのか、本間の知りたかったことの答えは何だったのか、関根彰子はどのように殺害されてどこに遺棄されたのか、新城喬子はどんな罰を受けるのか、などモヤモヤが残った。
    でも、カード問題を作り出した元凶は、管理が甘かった債務者だけではなく、社会的な構造や教育の問題であると強調していた本書だからこそ、筆者の宮部みゆきさんは、新城喬子が刑罰を受けるところまで書いてしまって、読者にあっさりとスッキリ感を味わせるつもりはなかったのではないかと思った。しばらくモヤモヤした読後感を引きずって、考えてほしかったのだろう。

    この本を読んで、生まれに関しては運だと思った。私は幸運な方で、私の通う学校で同級生となる人もだいたい同じような家庭の人だ。日本では境遇が同じ人が固まり、違う背景の人とは接点が薄くなる環境があると思った。私は同級生から、よく「視野を広げて多様な人と関わりたい」という目標を聞くが、幸運なバックグラウンドを持った視点から見た「多様な人」に、そうした借金に借金を重ねた人、夢を夢と割り切れずカードやローンで幻想を手にするのと引き換えに、暴力団からどこまでも付きまとわれ、親戚や友人に足跡を残しては多大な迷惑をかけ、人の死を平然と願うような人々を含んでいるのだろうか。否。
    幸せな境遇で固まっている人には、同じ境遇内での「多様な人」と、自分の力で助けることができ、自分を必要としている「困っている人」の2つしかいないのかもしれない。少なくとも私は、こんなにどこまでも落ちていく、社会的に陰となった、もし私が関われば自分の生活にも危機が及ぶような人が、実は身近に存在しているという実感を持てていなかった。そして、その糸口、地獄の入り口は社会に大きくぱっくり開いており、誰でも落ちる可能性があるということも。
    多様な人(借金に人生を狂わされた人も含めて)と実際に関わってしまうとあまりに大変なこともあるから、こうした話を本で学び、体験できるのは本当にありがたいと思う。

    …そういえば、中間が、警察の黒い手帳を一度も出さないまま事件を解明(情報収集)できてしまったのは驚きだΣ(-᷅_-᷄๑)


    2022/01/22
    【構成】
    1-5 導入
    6-10 伏線
    11-21 展開
    22-27 クライマックス
    28-29 結末

  •  宮部みゆきの代表作。この作品を読んで、僕は宮部みゆきのファンになった。
     個人的に話の終わり方が素晴らしい。あだち充の作品「クロスゲーム」のような。上下巻とあり、それぞれ600ページくらいあった気がするからわりと長くて手が出しづらいけど、ぜひ読んでほしい。

    おすすめ度 85点。

  •  ものすごく面白くてぐいぐい引き込まれる。主人公が休職中の刑事で、刑事なのに警察権を行使しない。捜索には一般人よりちょと有利なだけだった。

     入れ替わった彼女の影をずっと追う展開で、彼女が見たくて仕方がなかった。もしかして最後まで姿を現さないまま終わったらどうしようと不安だった。欲を言えば、その後の彼女の様子も見たかった。

     彼女の犯罪者でありながらも生真面目で礼節をわきまえようとする側面が悲しい。

     グレーゾーン金利が幅を利かせていた平成になったばかりの時代で、今はシステムが改善されて本当によかった。

  • 読み終わった後の余韻がずっと残ります。現代社会が生み出す歪みを描いた傑作です。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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