火車 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369181

感想・レビュー・書評

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  • 韓国でリメイクされたのを観て面白くて、原作も読むことに。細かい設定、結末は映画とは違うものの大筋はあらかた同じで映画、原作と どちらもオリジナリティがあって楽しめた。

    カード、ことにクレジットカードって現金と違ってその場で札や小銭を出すものではないから、実際にはお金を使ってるんだけれど、使ってる意識がないというのは私も経験があって。
    自己破産はないけれど、カードの明細を見て、あっ!こんなに使ってたのか。。。ちょっと使いすぎたなぁ。と後悔した事は、何度かある。しかも、忘れた頃にカードの引き落としはやってくる。
    これが、クレジットカードの怖さかと思う。

    今でこそ自己破産という言葉、債務のご相談は〜なんていう弁護士事務所のCMも頻繁に耳にする。ただ、この物語の中ではそれがまだあまりメジャーじゃないようで、少しびっくりした。

    にしても、新城 喬子とは怖い女だ。彼女、出自が決して良いとは言えないし寧ろ、親のせいで自分の人生が狂ってしまったのは気の毒。気の毒だけれどだからって、そこまでするなんてあまりにもその犠牲になった人間が可哀想ではないだろうか。。。

  • 初めて読んだ宮部みゆきさんの本であった。
    物語の展開のテンポが早く興味を途切れさせないのと、様々な分野の知識をポンポン出してへぇーという気分にさせてくれるところがうまい。世の中の出来事にありそうな話でもあるので身近にも感じ、親近感が持てるのではないだろうか。
    面白くて一気読みしたように思うが、実は細部の内容の記憶が薄い。すみません。。。

  • いまさら ながらの名作

    本間の追跡と喬子の心情を交互に描き、距離が詰まったっと思えば また振り出しに…みたぃな ハラハラ展開になりそうな所 硬派に関根彰子(新城喬子)を1つ 1つ 丁寧に追って行く姿のみで語られて行くのがリアル過ぎでした。

    30年前に書かれた作品なのに 今の世の中の出来事なのか?っと思う程リアリティーのある内容。
    イヤ…むしろ現代のほぅがあり得るのか?っと勘違いしてしまった。

    とにかく 余韻が凄い!

  • 休職中の刑事・本間俊介は遠戚の男性に依頼され、婚約者・関根彰子を捜索することになった。しかし、彼女は不自然なほど徹底的に足取りを消して失踪していた。彼女はなぜそこまでして姿を消したのか。その謎を解く鍵は、カード社会や自己破産者の人生にあった。足取りを追う中で少しずつ明らかになってくる過去と人物像。700ページ近い作品だけど、謎を追う面白さでさらさらと読めてしまうところがすごい。

    ミステリーとしての面白さはもちろん、宮部みゆき先生は人を描くことが上手いなと痛感した。彰子の捜索で様々な人たちの証言を得ていく中で、その言葉がただのヒントではなく、そこに込められた人生のしわまで映し出しているように思えた。人の描き方が丁寧だからこそ、そこから浮かび上がってくる彼女の人物像も深い意味を持つ。証言を集めて人物像を切り出していく描き方は見事だなと。好みを言えばラストシーンの先も読みたかった。ただ、あの終わり方も余韻があってよかったと思う。

    多重債務者の問題は読んでいてぞっとさせられた。作中でも触れられていた通り、周りから見れば債務者のせいにしがちだけど、社会問題として捉える必要があるんだと感じた。特に親の借金で一家離散のケースは、子にとっては責任がないのに人生が狂ってしまう恐ろしいものだよね。

    「─先生、どうしてこんなに借金をつくることになったのか、あたしにもよくわかんないのよね。あたし、ただ、幸せになりたかっただけなんだけど」
    この言葉が胸に残る。幸せになりたい。生きていたら当たり前の思い。でも、そのなり方がわからない。そんな人の弱みにつけ込んで幸せに映る鏡を売る人もいる。この作品は1992年の発表だけど、現在でも自己破産はおよそ年間7万件、債務整理や過払い金請求のCMもよく耳にする。火車はいまだ走り続けているんだと考えさせられた。

  • 本屋で新潮社の棚に行くと必ず目にする、あのずらりと並んだ真紅の背表紙 宮部みゆき 。
    どれもなかなかの分厚さで、気になるものの、ずっと手を出せずにいた。
    この『火車』も700ページの物量もので、読む前は読み切れるか不安でした。
    しかし、いざ読み始めると作者のうまい文章に惹き付けられ、さほど物語に急展開のない序盤でも、長いともクドいとも思わずスラスラ読めた。
    そして、100ページ当たりのあの展開に背筋がゾッとした。そこからは一気に話に呑み込まれて、あまりの凄さと怖さに鳥肌立ちっぱなしでページをめくり続ける自分がいた。

    サラ金地獄と聞くと少し遠い話のような気もしますが、借金となれば随分と身近です。その恐ろしさに警鐘を鳴らしてくれる『火車』はすばらしい良作だと思います。
    喬子のしたことの冷酷さにはもちろんゾッとしたが、それよりも彼女をあれほどの地獄に追い詰めた社会の恐ろしさに怯みます。
    現代の若者だって、奨学金問題や、青春がどうだとかで生き急いでしまうことがよくある。だからか、私は彼女を憎むことができなかったのです。
    最後の最後にだけ犯人が登場する構成の巧さには唸ります。正直あのラストは少し物足りないですが、読者を突き放したのは喬子に対する作者の優しさだと私は思います。だから、どこか暖かい感じがしたのではないでしょうか。

    分厚いからと宮部みゆきさんをを敬遠していましたが、私はこれからどんどん他の作品を読んでみたいと思いました。特に『模倣犯』が気になりますが、またまた凄い物量です。

  • 超有名な作品という事で気になって読みました。ドラマにもなってる作品らしいですが、文章から十分に頭で映像化できる作品でした。自分も一緒になって人物を追いかけている感覚になりました。面白かったです。

  • 宮部みゆきさんの小説を初めて読みました。
    人気小説の上位に常にランクインしている『火車』。1992年の作品です。

    休職中の刑事・本間が親戚の男性から失踪した婚約者の人探しを依頼されるところから物語はスタートします。
    失踪した関根彰子という女性を調べるうちに浮かび上がる別人の関根彰子。するとこの失踪した関根彰子は一体何者なのか? 

    休職中の刑事が主人公、そして本人は足を怪我してリハビリ中という設定のため、派手な追跡劇はありません。
    本物の関根彰子の戸籍を乗っ取り、なりすまして生きていたが、関根彰子ではないということがバレそうになり姿を消した女性。戸籍を乗っ取るため本物の関根彰子は殺されているだろう、という推理のもと、失踪した偽の関根彰子の足取りを掴むための地道な調査が始まります。
    社会派ミステリーであり、カード社会の罠、サラ金の恐ろしさを教えてくれる啓発的な物語でもあります。

    小説を読んでいると、別の物語を思い出すということが多々あります。

    『死体をバラバラにする目的は、倒錯的な趣味があるなどのケースを除けば、ほぼふたつに限られる。ひとつは遺体の身元を判明しにくくするためであり、もうひとつは処分を容易にするためだ。後者の理由があるために、バラバラ殺人犯には、案外女性が多い』

    この部分で、昔、土曜ワイド劇場で見た『白い手 美しい手 呪いの手』というホラーの2時間ドラマを思い出しました。当時、小学生だった私は、復讐のために手首が襲ってくる、というドラマを時々手で目を覆い隠しながらこわごわ見ていたという記憶があります。その中で、電鋸を使い、浴室で死体を解体する場面がありますが、シャワーを流しながらおびただしい血が流れていく映像でした。このシーンで死体を解体する人物は女性でした。

    偽の関根彰子の調査で分かったことは、彼女が親の借金のため、地獄のような凄絶な人生を送ってきたということです。本物の関根彰子を猟奇的な手法で殺したであろう犯人を心底憎めずに同情してしまう。
    偽の関根彰子を登場させず、関係者のセリフや主人公の想像などで人物像が形作られていきます。
    冒頭で偽の関根彰子が、婚約者から自己破産の話を聞いて青ざめた、その本当の理由が後半で明らかになるのです。

    最後のシーンは余韻を残し、良い終わり方だと思いました。読者の想像にゆだねられたのです。

    『俺は、君に会ったら、君の話を聞きたいと思っていたのだった。
    これまで誰も聞いてくれなかった話を。君がひとりで背負ってきた話を。逃げ惑ってきた月日に。隠れ暮らした月日に。君がひそかに積み上げてきた話を』

  • 凄い作品でした、現実的ミステリーがアタシの第一印象でリアル過ぎるぐらいリアルなストーリーが凄い。
    描写も秀逸で尾を引く塩味効いた台詞は神技。
    こんなに引き込まれた作品は久しぶりです。
    これから暫くは宮部みゆき作品オンリーでいきます。

  • 行方不明になった関根彰子の人生を辿る物語。生い立ちや境遇に考えさせられるものがあった。 
    ラストシーンで本人が登場したところで終わるのも余韻を感じられて良かったと思う。

  • 読む前に期待しすぎたのかもしれない。
    いまひとつ、感じるものがなかったな。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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