火車 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (590ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101369181

感想・レビュー・書評

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  •  宮部みゆきの代表作。この作品を読んで、僕は宮部みゆきのファンになった。
     個人的に話の終わり方が素晴らしい。あだち充の作品「クロスゲーム」のような。上下巻とあり、それぞれ600ページくらいあった気がするからわりと長くて手が出しづらいけど、ぜひ読んでほしい。

    おすすめ度 85点。

  •  ものすごく面白くてぐいぐい引き込まれる。主人公が休職中の刑事で、刑事なのに警察権を行使しない。捜索には一般人よりちょと有利なだけだった。

     入れ替わった彼女の影をずっと追う展開で、彼女が見たくて仕方がなかった。もしかして最後まで姿を現さないまま終わったらどうしようと不安だった。欲を言えば、その後の彼女の様子も見たかった。

     彼女の犯罪者でありながらも生真面目で礼節をわきまえようとする側面が悲しい。

     グレーゾーン金利が幅を利かせていた平成になったばかりの時代で、今はシステムが改善されて本当によかった。

  • 読み終わった後の余韻がずっと残ります。現代社会が生み出す歪みを描いた傑作です。

  • 人になり変わってでも生きようとする執念がすごい。回りでも何人かいたが、クレジットカード破産は誰でも起きることと感じた。追いかけるものと追われるもの。ラストの緊迫感はゾクゾクした。

  • 幸せを掴むことに必死だった女性の話でした。

    「自分」のままでは幸せになるどころか、生涯ふつうに生活していくことすらできないというのはどれほど悲しいことなのかな。。

    「自分」を捨て、他人として生きる。
    綿密な情報収集の末、邪魔者は自らの手で排除する。
    それをたった一人で行動に移す彼女の強さは、想像もつきません。

    生きる上で、お金が全てではないけれど、
    お金によって苦しめられ、借金を苦に人生を滅ぼされてしまう人がいるということ。。
    人は皆、様々な事情を抱えて生きているんだと改めて思いました。

  • 借金地獄から逃げるために他人を手に掛け別人になりすまして生きている女を追うサスペンス。時代設定が古いな~って思ったけどそもそも書かれたのがその次代だったと気づいた。サラ金地獄の時代かな。追っても追っても実像がつかめない女、罪を犯してるんだから悪人なんだけど、哀しい人生に同情してしまうし共感し憐れむような気持ちにもっていかれる。最後の最後にその女を見つける、、読者に「やっと会えた、、」という感動を与えるあたりはすごいと思った。本当に会いたかった人に会えた、、という感動すら覚えた

  • 初めて宮部みゆきを読んだけども、とても読みやすくて楽しめた。ラスト一文は、今まで読んだ本の中でも、一二を争うほど秀逸だと思う。

  • 今さらながら、初めて手を出した宮部みゆき。
    スピード感のある小説をネットで探して、引っかかった作品。

    読み始めてすぐに内容に引き込まれ、展開が気になり一気読み、かなり楽しんで読めた。
    最後のシーン、「新城喬子」本人からの告白の部分をもう少し聞きたい気持ちになったが、深みを持たせる意味でココで終わる形が良かったようにも思う。

    東野圭吾と作風が似ているが、より一歩個々の人物、その内面に寄り添うところが特徴だと思う。

    <印象に残った言葉>

    ・たぶん、彼女、自分に負けている仲間を探していたんだと思うな。(P345 大杉郁美)

    ・一生懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、いつか足が生えてくるって信じてるからなんですってさ。今度こそ、今度こそ、ってね。足なんか生えてこなくても、立派に蛇なんだから。だけど、蛇は思ってるの。足があるほうがいい。足があるほうが幸せだって。(P488 宮城富美恵)

  • 3回目の読了。前回読んだのは6‐7年前だがストーリーはだいたい覚えてた。しかし、先がわかっていてもおもしろい。
    主人公である犯人自体は、最後の最後まで登場しないで話が展開していく。少しずつ、ちょっとしたことがきっかけで謎が解けていき、推理がいきずまってはまた進み、最後に犯人にたどりつく。

    昭和の終わりごろが時代背景なので少し古い感じがするが、自分としては同世代なので、かえってそこも共感ポイントとなる。

    個人的には宮部みゆき作品の中のNo.1、現代ミステリーの最高傑作だと思う。

    また、何年後かに読んでみたい。

  • 宮部みゆき『火車』は多重債務問題を背景にしたミステリー小説である。負傷して休職中の刑事が遠縁の男性の頼みで失踪した女性を探す。クレジットやキャッシングなどの多重債務問題が債務者個人の自己責任と切り捨てられる問題ではなく、金儲け社会の犠牲者であることが理解できる。真面目な人ほど多重債務で苦しみがちである。

    『火車』に登場する多重債務問題に取り組む弁護士は実在の弁護士をモデルとしている。その弁護士の発言に「多重債務者が原発の掃除などの作業をする労働者になる。過去を隠しているから、危険な仕事に就かざるを得なくなる」というものがある(201頁)。原子力発電の非人間性への批判的視点が福島第一原発事故以前から存在したことを感じさせる台詞である。

    『火車』には東京の街づくりについても考えさせられる記述がある。東京は機能ばかり便利になったが、人の生活する故郷と呼べなくなったとする。「現在の東京は、人間が根をおろして生きることのできる土地ではなくなってしまっている」。大都会としての機能は「とっ替えのきく備品みたいなものである」(236頁)。

    一方で東京の特徴として都心部でもインテリジェント・ビルと背中合わせに二階建て建築が残っている点を好意的に登場人物に語らせている(379頁)。また、伊勢市を訪問した主人公は、伊勢神宮の街としての風情を守るために鉄筋の建物を壊して木造に建て替えている動きを見る(437頁)。

    『火車』は平成初年の出来事である。その後の東京では国際競争力や都市再生のかけ声によって住民が追い出される街づくりが進められている。しかし、木造住宅や商店街を再開発の名目で破壊するのではなく、住み続けられる街にすることが大切である。人口減少時代の街づくりは高過ぎる高層ビルの減築である。東京の街づくりは考え直す時期に来ている。

    『火車』には多重債務問題の底流には住宅ローンがあったとの指摘がある。マイホームを持ちたくて無理をしてローンを組み、毎日の生活がきつくなるからサラ金で借りるというパターンである(260頁)。物語の中でも住宅ローン破産は重要な意味を持っている。

    日本は格差社会になったと言っても、まだまだ中流意識を持つ人々が多い。住宅ローンを借りられる層は貧困問題を対岸の火事のように思いがちであるが、その浅はかさを気付かせてくれる。『火車』でも「マイホームさえ持てば、幸せになれる」という小市民的願望を「錯覚から生じたものではなかったか」と自問する(413頁)。貧困問題と持ち家偏重の歪みは近いところにある。(林田力)

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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