夜間飛行 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102122013

感想・レビュー・書評

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  • 『ジブリの教科書7 紅の豚』を読了し、宮崎監督が影響を受けたという著者の作品を読んだ。無線機もレーダーも、GPSさえない時代に、飛行機の優位性を揺るぎないものにするために行われた夜間飛行。そこには、当たり前のように死と隣り合わせの危険をはらんでいたが、冒険飛行というロマンを感じさせるのだ。遭難した飛行士の妻の嘆きも、ロマンを追う男には届かないのだろう。処女作「南方郵便機」は、飛行士と地上の女性との相容れない世界観を物語る、悲しい結末だった。

  • 飛行機乗りとしての経験に基づくリアルな記述が溢れる小説です。

    この作品が描かく1920年代の飛行機には、
    レーダーなどの自機の位置を知る機器や安全装置などもなく
    まだ夜間飛行は危険なものとされていました。
    けれども、鉄道や車への優位性を保つためにも、敢えて、その危険に挑戦する人々がいます。

    サン=テグジュペリが、なぜ飛行機に乗り続けたのか・・。
    その答えがわかったような気がします。

  • 日用の糧を得るために職場へ通う、その車中で読むものではなかった。

    「夜間飛行」は、飛行中の機体が行方不明になりつつある夜を舞台に、郵便事業の経営者の心情を描いた作品である。
    主人公は安全性の確立されていない夜の空に若者を送り、長年勤めた技術者を見せしめに解雇し、管理職とその部下を慣れ合わせないためだけに、あえて罰を下させる人物である。主人公は「命を賭して、または賭させてまでする価値のある仕事か」と一応は自問するが、あまり気にせず事業に邁進する。そこに見い出される主人公のポリシーが読んでいて恥ずかしくなるほど自己陶酔的である。

    おそらくサン=テグジュペリはこの作品を通して、「死すべき人間の何を永遠なるものとして遺せるか」を問いたかったのだと思う。問いたかったというより、答えを示して啓蒙したかったのでしょう。
    言いたいことは分かる。「命を賭してやるべきこと」を見つける人は確かにいるし、素晴らしい部分もあるのだと思う。ただし、それは自己決定に限るのであって、誰かが「命を賭けさせてやろう」「永遠の大事業に参画させてやろう」「それがいい生き方だと教えてやろう」とするならば、厚かましい余計なお世話以外の何でもない。死んだら全て忘れ去られるけど、満足のいく、とるにならない人間の円満な生というのも確かにあるし、本来どちらがいいというものでもないと思う。
    「人間の土地」は素晴らしい文学作品だと思ったけど、「夜間飛行」を読んで、サン=テグジュペリのパターナリズムに嫌気がさしてしまった。サン=テグジュペリの何を知っているわけでもないけれど、資本主義や軍国主義が好きそうにも思えない繊細な文を書くのに、そういうものに巻かれるのは厭わないというか、積極的ですらあるというか、人にまで勧めてくるのは何なんでしょうね。そんなことが気になって、通勤電車でイライラしてしまったので星2つ。

  • タイトルがロマンチックかつ星の王子さまの作者の作品ということで購入したもののすごく難解で情景が浮かばなくて読むの苦痛だった。私の読書力が足りなかった。夜空を飛んで荷物を届けるってロマンチック!と思っていたけど実際は死と隣合わせ、夜間飛行はそんな危険な仕事の支配人の話。無慈悲なぐらい厳しいけどそこには確かに部下への愛があった。理想の上司ではないけれど仕事の鬼で本物のリーダーだと思った。もう1作南方郵便機は全然分からなくて感想すら書けない。けど南方郵便機については翻訳者の後書きが物凄く素敵だった。『作者は母岩を貫いて金を取り出す仕事を読者の一人々々に残した。この仕事が精読である。(一部抜粋)』私も読書力を上げていつか必ずこの本から金を取り出したい!

  • 堀口大學翻訳。カバー装画は宮崎駿。郵便飛行業の草創期、夜を征服しようとする人々の物語。義務の甘受の中に存在する人間の幸福、安息。パワハラ文学(笑)

  • NDC(9版) 953.7 : 小説.物語

  • 難解な物語だ。

  • 夜間飛行だけ。
    大きいことをするには犠牲もそれだけあるよねって、それこんな長々やる?
    いまいち飛行士にも感情移入しづらいから感動もない。
    リヴィエールみたいな人物は豊かになりすぎた現代の世の中には台頭しないだろうな。刺さらなかった。
    星の王子さま同様面白味があまり分からなかった。成長してから読み直す。

  • ◼︎あらすじメモ(ネタバレ)
    郵便飛行業の創世記。事業の死活をかけて、男たちは危険と隣り合わせの夜間飛行に従事していた。

    飛行機の操縦士ファビアンはある夜間飛行中、暴風雨に取り囲まれてしまう。会社の全航空路の責任者であるリヴィエールは、各基地の無線でのやり取りなどを通じてファビアンを救おうとするが、天候は一向に回復せず、機の燃料切れの時間が迫ってきていた。
    瞬間、ファビアンの頭上の暴風雨の切れ目から二、三の星が見えた。彼は、そこを上昇してしまってはもう戻ってこれないと分かっていながら、その開かれた井戸を登って行った。彼の機は、そのまま行方不明になった。
    リヴィエールはそれでも、夜間飛行の指示を続けた。明日にでも向けられるであろう、自身への非難を思いながら。

    ◼︎読もうと思ったきっかけ
    海外小説ランキングの中で、なんとなく気になったので。

    ◼︎感想など
    自分が翻訳文に慣れていないからか、ストーリーがあまり掴めなかった。シーンが細切れで、また人称がわからず今誰の話なのかが把握できなかった。
    ファビアンが最後、暴風雨の切れ目を上昇していくシーンは素晴らしかった。カタルシス。
    そのほか、飛行機乗りであった作者が本当に見たであろう飛行機からの景色の描写も読んでて興味深かった。

    併録されている、作者の処女作「南方郵便機」は、ストーリー本当全然掴めませんでした。。
    あとがき曰く、読者に精読を要求するらしい。
    また時間を置いて読んでみたら違った印象があるかも。

  • 第10回(古典ビブリオバトル)

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著者プロフィール

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。1900年6月29日、フランスのリヨン生まれ。
幼少の頃より飛行士に憧れてその職につく。飛行士と兼業して、飛行士の体験をもとに『南方郵便機』、『夜間飛行』などを発表。
第二次世界大戦中、亡命先のニューヨークにて『星の王子さま』を執筆し、1943年に出版。同年軍に復帰し、翌1944年7月31日地中海コルシカ島から偵察飛行に飛び立ったまま、消息を絶つ。
その行方は永らく不明とされていたが、1998年地中海のマルセイユ沖にあるリュウ島近くの海域でサン=テグジュペリのブレスレットが発見される。飛行機の残骸も確認されて2003年に引き上げられ、サン=テグジュペリの搭乗機であると最終確認された。

サン=テグジュペリの作品

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