- Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102122013
感想・レビュー・書評
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精神を律し、肉体を律し、幸福と安泰を捨て、愛する人を置き去りにしてまで、人はなにを望むか。なにもないように思われる。というより、思われがちだ。でもそうしてみて初めて到達する高みのような、普遍性のようなものが確かにある気がしてならない。はかない人の一生を危険にさらし続け、その喪失を越えて、人類は生きた証を石柱のごとく打ち立てんとしてきた。それが文明だ。そこには厳かな美しさがある。かの著者が何を見てき、何を思ったか、それらがいかに尊厳のあることか、読めば心が震える。
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飛行士だった作者自身を投影したような心情が豊富。ただし、精読が必要。一度読んだだけでは、落とし込めない表現が散りばめられている。
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郵便飛行業の黎明期に、夜間飛行に従事する人々を描いた表題作ほか、著者の処女作『南方郵便機』を収録。
文章が(あるいは訳が?)馥郁とした、静かな高貴に溢れており(しかしそれは男性的な高貴さである)、しかも時として抽象的かつ難解なので、少しずつ少しずつ読んだ。
物語に入り込むというより、まさに文章の合間合間を縫って、バランスを取りながら、飛行機のように自由に、そしてつたなく、自分が何かの固まりになったように(塊ではない)読んだ。
なんという硬質な精神性、そしてなんという人生のナイーブさ。
『夜間飛行』を読んでいて、たまらなくなってしまった。その崇高さに。その脆さに。そしてその澄み渡った夜空のような悲しさに。
これは内側に向かった結晶なのだろうか、それとも外側に向かった結晶なのだろうか?
『夜間飛行』は、どうしてこんなにも遠くの景色が小さく小さくなっていくような、さもそれが当たり前のことのような、悲しさに溢れているのだろうか?
全然上手く感想が書けない。
対して、『南方郵便機』のほうは少々ロマンティックというか、抽象的な情緒が過剰に思われて、あまりその雰囲気に浸れなかった。
文章の意味も、あまりに意味がわからなくなることが多すぎるし、ジュヌヴィエーヴがなぜそこまで主人公達に高められた存在としてあがめられるのかも、あまり納得できなかった。
ただ、ベルニスとジュヌヴィエーヴの二人の短い、あまりに短い逃避行の場面は素晴らしかったと思う。二人の無邪気とも取れるような純粋さ、その純粋さが現実の前では何の役にも立たず、しかもこれからもその純粋さはむしろ障害にしかならないことがわかって、この場面は本当に残酷で、だからこそ美しくて、きらきらと音を立てて輝く星屑のようで、全然暖かい場面でもなんでもないのだけれど、肌理の細かい上等の毛布に包まれたように素晴らしい読み心地だった。
あれ、なんだか『夜間飛行』よりも『南方郵便機』のほうが意味の通る感想になってしまった。
私はむしろ、「『夜間飛行』だけなら☆5つにしたかもしれない」と思っていたのに・・・。
難しい、なぁ。 -
無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら、きっとこの本を選ぶ。
勝つか負けるか、成功するか失敗するかではなくて、行動することが大切なのだ。
「ロビノー君、人生には解決法なんかないのだよ。人生にあるのは、前進中の力だけなんだ。その力を造り出さなければいけない。それさえあれば解決法なんか、ひとりでに見つかるのだ」
いかなる困難に対しても果敢に立ち向かう人間の姿は、実にうつくしい。 -
郵便飛行の開拓期に、飛行場で部下の帰還を待つ航空会社支配人を軸として、死の危険に直面しつつ夜間飛行に挑む操縦士たちの姿を描いた作品。パイロットであった作者自身の実体験に基づいた小説(フィクション)。
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表紙が美しい
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夜間飛行
筆者が生きていた時代、夜間飛行を行うパイロットは死と隣り合わせの職業であった。
その中で運行会社の監督であるリヴィエールは夜間飛行を確実に成功させるため、理不尽な処罰を行い仕事への緊張感をもたせていた。
それは、リヴィエールの「事業の恒久性と個人的幸福は両立せず、相軋轢するものであり、恒久の永続を求める」という言葉からも読み取れる。
当時の夜間飛行が如何に危険なものであったか、その中でパイロットたちは何を考えて飛行機を運転していたか、様々なことが読み取れる本であった。 -
生きることの強さ
静かな強さ