白蝶花

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103038320

感想・レビュー・書評

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  • 戦後70年の節目を迎えた今年の夏は、例年以上にメディアでも戦争が取り上げられていました。
    そのうちいくつかは自分でも読んだり見たりしたけれど、
    あまりの悲惨さに目をそらしてしまったものも多くて、、それではいけないと思い直しての本選定。

    社会的にも女性は地位が低く、
    また、戦争の影響で自由も許されなかった時代に
    愛する人を信じて強くしなやかに生きた女性5人の物語です。

     女中である千恵子は、書生の政吉と恋に落ちる。
     間もなく政吉は出征し、
     千恵子は身ごもっていることに気が付く。
     千恵子は実家に帰ったものの、
     「未婚の女が、明日死ぬかもわからない男の子供を産むなど許さない」と父親に勘当され…。(乙女椿)

    一個人の人生の転換期の背景として戦争があり、
    その理不尽さを身につまされる思いで読みました。
    自分は自由が許される今の時代に生まれ
    本当に恵まれている。

    一番愛した人と一緒におれないなら、死んでしまった方がましだとたぶん自分は思うけれども、
    ここに出てくる5人はそうはしなくて、
    どうにかして愛した人の子供を産み育てよう、
    愛した人の分まで生きようとする。
    とても強い。

    乙女椿の政吉の手紙を読んで嗚咽してしまった。
    戦争の理不尽さと人間の美しさがより悲壮感を産むのです。

  • この作家さんが書く女性は
    皆それぞれ本当に素晴らしいと。

    この本も、
    スピンオフが混じり合ったような
    不思議な書き方で、
    全体を通して読むから
    登場人物の内面や脇役の過去なんかを
    心の隅で感じながらより深く読める。
    話も書き方も好きだし、
    興味深く読める。

    少し恥ずかしくなるシーンがあるのに、
    どうしても誰かに勧めたくなる本。

  • 菊代、雛代。
    泉美。
    女中の千恵子、お嬢様の和代。

    時代や戦争に翻弄されつつも、生き抜く女たち。

    眠れなくなって夜中に読んだ。
    歯を食い縛って声を漏らさないように泣いた。

    ここの女たちと自分が融合したみたいに、強く物語に入り込めた。

    話が繋がっていく、あたし好みの展開に痺れる。

    回想しながら眠りにつこう。
    宮木あや子ちゃんにお礼を言いたい。

  • 途中から前のめりになる程、今年1番夢中になった本。容赦なく時代に翻弄され泣き崩れながら、それでも「生きていく」事で 大正~平成を繋いでいく女性達。今年は二次大戦絡みの話題書を何冊か読んだけれど、どの本でも得られなかったピースの1欠片をやっと掌にした感じです。

  • 廓の遊女の姉妹の話、妾に取られた女性の話、そして戦時中を生きる女性達。いつかすべてが繋がっていき、オンナという性の逞しさとせつなさとが感じられる小説でした。女性の為のR18作品ということで色っぽかったです。

  •  また、どの恋も成就することなく悲しく終わるのかと思ったらそうではなかった。戦争中であったり、売られたりして厳しい状況におかれた女たちなんだけれど、なんとか命をつないでいくとそこに人のつながりができてくるという感じかな。短編集だけれど話と話がつなっがていく、それがおもしろい。
     お嬢様も和江も自分のお嬢様を自覚して、そのうえで女の生き方について考えているところが和江いいやつと思ってしまった。最後に成就できて年老いるまで共に暮らせてよかった。

  • 花宵道中と同じで、短編なのに全部繋がっているというお話。女性って生きていくのに厳しくて辛いですね…と思わずつぶやいてしまった。それでも、好きな人と一緒にいたい、思い出に浸っていたい。
    短編を読み進めていくと、初めのほうの短編に出てきた人物のその後がさりげなく書かれていたりして、なんかドキっとしてしまった。

  • 当然のことだが、身体を重ねれば妊娠する。
    そのことを男のひとはわかっていない。

    性愛の向こうにある快感だけしか
    見えなくなるのかもしれないが…。

    女性にとっては抱かれた後の方が
    遥かに大きな重みをもって、愛情の帰結は迫るものだ。

    女性が拒めないのが悪いというが、圧倒的に女は不利である。
    そして、身体を重ねれば女はなんでも靡くというのも幻想である。

    こころの継ぎ目が合っている相手となら
    女は一度の逢瀬にも命をかけるかもしれない。

    連作の中の政吉が、千恵子のことを母に託すくだりを
    読むと、やっと

    「男性にもやはり、身体をつなぐことの重さを
    わかってくれる時があるのだなあ。」

    とほっとする。

    理想は和江と正文の在りようだが、現実には
    難しいことだろう。

    消費されてゆくだけの「女」という生き物に
    いっそ私自身は憎しみさえ持ってしまう。

    その燃焼はうつくしくドラマティックで
    この本ではそんな女たちの心模様を
    堪能させてくれるけれど。

    そういえば、この本の日本語は、
    とても言葉遣いが端正で、かつて女たちはみな
    こんな嫋々とした日本語を語っていたことや
    私たちがそれを手放してしまった事への愛惜が思われる。

  • おもしろかった(・∀・)‼ 3話めでなるほど!と納得@

  • 恋に生きる女性は強く逞しい、宮木さんの書かれる女性はほんといい女。
    すこしずつ話が繋がってるのも好き。

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著者プロフィール

1976年神奈川県生まれ。2006年『花宵道中』で女による女のためのR-18文学賞の大賞と読者賞をW受賞しデビュー。『白蝶花』『雨の塔』『セレモニー黒真珠』『野良女』『校閲ガール』シリーズ等著書多数。

「2023年 『百合小説コレクション wiz』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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