- Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103275169
感想・レビュー・書評
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藤圭子の一代記。ずいぶん前に書き終えたまま出版しなかったインタビュー。引退したいと考えていたころの藤圭子が何を考えていたかを丁寧に聞き出している。真のインタビュアーは話し手が意識していない考えも引き出すとあったが、問いによって藤圭子の無意識の領分にかなり踏み込んでいる。それにしても何と潔いことか。
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あとがきに改めて引用されていた宇多田ヒカルのコメントを読んで涙が溢れた。前半はキキとかが出てきてた面白かった頃の村上春樹の小説を読んでるみたいだった。沢木耕太郎の質問はインタビューでありセラピーのようでもあり、改めてこの人の凄さに戦慄。
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引きこまれた。28歳の藤圭子。31歳の沢木耕太郎。
猫、家族、お金、仕事、恋、結婚……。 -
ノンフィクション作家沢木耕太郎の描く藤圭子。30年以上前に執筆された物で全編インタビュー。二人の会話以外書かれていない。これがものすごく臨場感があり、バーのカウンターで話す二人の会話を隣で聞いているかの様。描かれているのはとても純粋な女性。純粋すぎて他人から誤解を受ける事が多かったのではと思う。自決後のマスコミの扱いを見ても、真実はわからないが、それは感じる。
この作品の存在については、沢木耕太郎ノンフィクション8巻『ミッドナイト・エクスプレス』巻末のエッセイ『搭乗口』で触れられている。 -
沢木さんのような剛柔併せ持った類まれな聞き手が、歌手として生きてきた藤圭子さんを手繰り寄せるようにしていくうちに、ありのままの女性・竹山純子さんとの対面を果たした作品といえるだろう。
そして30年前に新たな試みである構成すべてにト書のみのインタビュー形式なので、その場の情景は、火酒(ウォッカトニック)や夜景、インタビュー中に入り込んできたテーブルの上の虫を通じたものであって、二人の語り口や「…」の間のみを通じて歌手藤圭子を伝えていく。
言いたいことはたくさんあるのだけど、ありふれた言葉であるように思うので後ほどの宿題としたい。
藤圭子さんが自らの命を絶った後、娘の宇多田ヒカルさんが「彼女(彼女)はとても長い間、精神の病に苦しめられていました。」という事を沢木さんはショックを受け、その前の瑞々しく輝いている人間・藤圭子さんを知ってもらいたいと、このインタビューを発表したという。その思いは読んでいただければ、誰もが胸を打つものだと実感するものです。
読んでよかった作品の一つ。 -
インタヴューの会話が交互に続くのだけれど、藤圭子の語る部分だけが浮き上がってきて、まるで声が聞こえてくるように感じられた。純粋な人なのだなぁと思った。
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生々しい。。さすがは沢木さん。
痛々しい、でも綺麗だなと思った。
28歳、、私、なに考えてたかな。。 -
2013/10/31-11/2
なんともの悲しい話だろう。
30年以上封印していた「インタビュウ」から藤圭子が蘇る。まるでその場に同席しているかの臨場感、情感が伝わってくる。
編集後記自体もこの作品の一部だ。 -
一人の人間の魅力を本人の口から自然と引き出すのが本当のインタビューであって、聞き手の言わせたいことを言わせるように誘導するのはインタビューでもなんでもない。
インタビューの対象者を尊敬し、尊厳を傷つけないよう大事に大事に扱い、反論すべき時は反論し、引くべきところではスッと引く。
このインタビューのやり取りの会話だけで構成された野心的な本は、そんな本物のインタビューをその傍らで聴けるという、ものすごく贅沢でスリリングな一冊。
「藤圭子の本当」を描いた本が、藤圭子の自殺というショッキングな出来事があったからこそ出版できたというやり切れない思いを感じつつも、世に出たことに感謝をしたいようなこの本。
いつか、この本を読んだ、母と同じように危うさを孕んだ声の持ち主である宇多田ヒカルにインタビューをして欲しい。