流星ひとつ

著者 :
  • 新潮社
4.06
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感想 : 114
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103275169

感想・レビュー・書評

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  • 評判がよかったので藤圭子を全くしらずに読んだけれど、藤圭子を全くしらないひとが読んでも面白くない。
    というか、しらないなら読まない方が良い。
    読んでいると彼女の人となりが掴め、さらに生い立ちや繊細な心のうちや、ユーモアセンスなどたくさん知れてしまうから、今年自ら命を絶ったんだという事実が後から悲しくなってきて、辛すぎる。

  • 沢木耕太郎に感服。会話だけでこんなに書けるなんて。

  • 「愛した方がいいか、愛された方がいいか」
    というのは、よく女の子たちが話しているような内容なのだそうだ。

    自分がどちらがいいかよく考えてみると
    「愛された方がいい」
    に落ち着くような気がする。
    昔から、考え方というか僕という人間そのものが女性的なところがあると他人の女性から
    言われたことがあるが、こういうところがその一旦なのかもしれない。

    この本は藤圭子さんが28歳のときに歌手を引退するときのロングインタビューを
    そのまま本にした内容で、現在でも活躍する有名人などが実名で登場する生々しい内容になっている。

    著者の沢木耕太郎さんが長年未発表になっていた作品を本人が亡くなった今年発表に至ったという
    本なので内容も、
    「こんなの出して、本人や名前の出てくる人たちに反感など買わないのだろうか?」
    とも思える作品である。

    藤圭子さんのイメージというと演歌を歌っていたことと無表情で歌っていたこと、
    それに自殺したあとの宇多田ヒカルさんがブログで出したコメントから
    それなりのイメージがしていたものだが、この本を読むと、そんなイメージではないことがわかる。
    少しだけ、そういうのを感じるのはインタビュー中でも出てくる
    「別に」という返事で、これは子供が中高生ぐらいのときに親に返事するような言い方で
    インタビューの返事としてはちょっと大人げない。
    ただ、このインタビューはお酒を飲みながらのインタビューなので少しくだけた感じで、そういう返事もありだったのかもしれない。

    「あたしが男になれたなら、あたしは女を捨てないわ、」

    これは藤圭子のデビュー曲「新宿の女」の歌詞の一節である。
    この一節はよくわからない。
    男になっても自分が女であることを捨てたくない。
    実は男やっぱり女の方が好きなのかな?

    でも、ひとり、誰かが自分の才能を信じてくれているということはとても心強いことなんだよね。彼にとっては、ありがたいことだったんだろうな 224ページ

    これは本当にそう思う。
    誰かが自分を信頼してくれているという状態があれば、やはり心強い。

    「しかし、惚れるだのなんだのっていうのは、筋書きどおり、理屈どおりにはいかないからなあ、実際・・・・・・」「そうなんだよね」「くだらない、駄目な男ほど、女な人にとっては魅力があるものなんだろうし・・・・・・」「そうなんだろうね、たぶん」

    このあたりを読んでいる時、感じたのは、
    自分を第三者的から客観的に見ると駄目な男、くだらない男なんだろうなと・・・
    そうすると、恋愛というか誰かを好きになるということが理屈どおりでないから
    自分を好きになってくれる女性もいるんだろうなと。。。。


    この本の全体の印象は藤圭子の半生をリアルに見て取れて、
    そのときの感情も感じることができる。
    沢木耕太郎さんはこの本を実の娘の宇多田ヒカルさんに読んで欲しいと思って出版したそうである。
    確かに、彼女が持っている母の姿とこの本に映し出されている28歳の純粋な女性の感情とは
    かなりイメージが違うのではないかと思う。

    これを読んで彼女はどのように感じたのだろうか?

  • こんなにまっすぐで賢い人が、周りに迷惑をかけるような病気になってしまったなんて、どんなに苦しかっただろう、、と思うと余計につらくて悲しくなった。
    その後のことを知らずに、リアルタイムでこの本を読んでいたら、歌手止めるなんて!って沢木さん同様に思っただろう。
    引退して幸せだったのかそうでないのか、は誰にもわからないけど、あんなに聡明に娘さんが育ったということは、不幸な人生ではなかったんだろうと、思いたい。
    そして、この飲みながらだんだん深い話していく感じは、そりゃわくわくするよなぁ、と。地の文はあってもよかったかもしれないけど、一晩のインタビューという体裁はすごく好き。

  • 藤圭子インタビュー。何を聞かれても「別に・・」。虚無的な人。貧困生活の中で生きるために歌う。神様に選ばれた天才なのだろう。なんだか切なくて運命論に納得しそうになる。とても哀しい人だったのね。

  • やっと読んだ。とにかくリアル。他人をここまで深く表現出来るものなのかと。沢木耕太郎の表現力の凄さに改めて感服した次第です。

  • 藤圭子インタビュー

  • 藤圭子の歌声が耳の奥に響いている。

    女ですもの 恋をする
    女ですもの 夢に酔う
    女ですもの ただ一人
    女ですもの 生きて行く

    〈女のブルース〉藤圭子が一番惚れていた曲だ。
    沢木耕太郎『流星ひとつ』
    「四杯目の火酒」まで読んだ。僕にしては相当遅いペースだ。
    この四杯目の最後で、沢木耕太郎は藤圭子を追い詰める。阿木燿子が作詞し、宇崎竜童が作曲した〈面影平野〉という曲は、なぜヒットしなかったのか、と。

    「わからないよ」
    「わからないはずはないさ」
    「でも…」
    「曲が悪かったの?」
    「………」
    「そんなはずはない。いい曲だった。阿木さんと宇崎さんの曲の中でも、最もいい曲のひとつだったと、ぼくは思う。そうじゃないとすれば…」
    「………」
    「藤圭子のパワーが落ちたから?」
    「………」
    「何故あんないい歌をヒットさせられなかったんだろう」
    「………」
    「藤圭子は藤圭子でなくなってしまったの?」
    「……そうさ。そうだよ。あたしは……あたしでなくなっちゃった。そうなんだよ」

    ここまでにする。藤圭子は藤圭子のままでいた。だから阿木燿子ではだめだったのだ。
    いい歌であることと、心に響く、女として「ズキンとくる」歌であることとは違う、と。
    藤圭子は、人の心の中に入っていくことがどういうことかがわかっている、真の歌い手なのだ。

  • 今年亡くなった藤圭子の長編インタビュー。藤圭子が28歳で引退する直前にインタビューしたものを今回始めて出版した。宇多田ヒカルという「歌姫」を娘に持ち、自身も「歌姫」と呼ばれた演歌歌手であった彼女が28歳という娘より数歳若い頃のインタビュー作品だ。
    まず驚かされたのが本を開くと、すべての文章がかぎ括弧で藤と沢木、ふたりの会話という形で書かれていることだ。説明文や状況を表現する文章がない。しかしそのインタビューの情景、会話が目の前に浮かんでくる。
    藤圭子というと私にとっては当時、貧困で辛い子ども時代を過ごした過去を背負い、演歌を歌う美しいが暗いイメージの歌手であった。しかし、この作品を読むとそのイメージが少し変わってくる。純粋、けなげ、若さのエネルギー、負けん気の強さ、前向きな考え等、若い女性らしさも十分に持っていたことがわかる。現在の私の年齢で「28歳の藤圭子」をみるととてもかわいい女性、愛おしささえ感じる。
    著者沢木耕太郎は宇多田ヒカルに当時の母親の姿を見せたいという思いもあり、今、この時期に出版を決意したという。娘は28歳の母の姿をどのように受け止めたのだろう。

  • 大阪へ向かう機内で読了(117/100)
    宇多田ヒカル母としての知識しかなかったけど、 大人な男女二人(年下だけど、、)の二人の息づかいが聞こえてくるかの様な臨場感。
    その場にいる様だ、、、。

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

沢木耕太郎の作品

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