流星ひとつ

著者 : 沢木耕太郎

• 新潮社 (2013年10月11日発売)

感想・レビュー・書評

[poemflowerさんの感想 · 2014年5月28日]

若き藤圭子と沢木耕太郎の対話のみで構成されたノンフィクション。

藤圭子さんといえば、あの歌姫宇多田ヒカルの母親で、彼女自身も昔歌手だったらしい…くらいしか知識はなく、その風貌すらもよく知らなかったのに、そして、もう30年も前の対話なのに、まるで、すぐ目の前でお酒飲みながら話している2人の姿が浮かんでくるようだった。

藤圭子の幼少時代、芸能界に入ったいきさつ、そして若くしてその芸能界を去った理由が、彼女の言葉で様々な方面から語られるのだけれど、さすが沢木耕太郎、彼女の言葉をするするとひきあげていって、
彼女の芯みたいなものを、浮き上がらせているのは、脱帽。
沢木耕太郎が何度か'健康な精神´の持ち主だなぁ。あなたは。と言ったように、藤圭子は、確かに気高く健康な精神を持つ女性だったのだと読者に証明する一冊だなぁと思った。

[kohei1813さんの感想 · 2014年5月18日]

宇多田ヒカルの為に出版したという本書だが、まさにそのとおりだと思う。マスコミでは藤圭子は好意的に取り上げられる対象ではなかったが、沢木耕太郎にかかると、なんと輝かしい精神の持ち主だったのだろうかと感心してしまう。本作の中では彼女は瑞々しく生きており、まだ生きているのではないだろうかと疑うほど生命力を感じる。インタビュー後の人生につては分からないが、確かに彼女は頂きに登り詰めたのだ。本当におすすめのノンフィクションで百田尚樹など足下にも及ばない作品だ。

[yosh712さんの感想 · 2014年5月17日]

全てが会話で構成されているのにもかかわらず、そこから不思議と二人の声のトーンや、表情、バーの音が無意識に浮かんでくるから不思議だ。火酒が進むにつれて、二人の気持ちの距離感はぐんぐんと近くなり、真に迫って行く運びは読んでいて本当に興奮した。30年前とは思えない、リズムと、とんがった知性と、ほのかに香る色気に富んだ会話に魅了される。
素晴らしい才能の持ち主が旅立ってしまったことは本当に残念でならない。がしかし、この作品を世に送り出してくれたことに、一読者として感謝の気持ちでいっぱいである。

[martin1018さんの感想 · 2014年5月7日]

おもしろい！

[hopridgeさんの感想 · 2014年4月24日]

#27 28歳の藤圭子とのインタビュー。この人が30年後に自死したなんて…。後記がよかった。

[keikomuさんの感想 · 2014年4月20日]

沢木さん、ありがとうございます。藤圭子さんの素晴らしさを私たちに伝えてくださって。前川清さんとの事もこの本が無ければ、誤解したままでした。

[44bluesさんの感想 · 2014年4月19日]

新幹線での移動中に読んだ。男と女。わかりえないよね。でも、言葉をつかって、少しでも、魂にふれあうことは出来る。それはつかの間の癒しで終わっても、永遠に残る優しさかもしれない。そんなことを思った。

[u39recさんの感想 · 2014年4月11日]

藤圭子さんについて宇多田ヒカルさんの母親という知識しなかない僕でも引き込まれた。藤圭子さんの言葉も沢木耕太郎さんの文章も今尚新鮮。

[coco_natuさんの感想 · 2014年4月7日]

二十八歳時の藤圭子とのインタビューをすべて会話形式で綴った一冊。
自分と他との間をくっきりと遮断している人みたいなイメージがあったけど、これを読んで随分印象が変わった。田舎から出てきた小さな女の子が、何も考えずに生真面目に生きていく姿はほほえましくもあり、せつなくもある。
そんな彼女が精神を病んで苦しみ、あのような最期を遂げたことはなんともやるせないが、宇多田ヒカルちゃんという歌姫の存在が救いだなあと思うのである。

[ayanoさんの感想 · 2014年3月13日]

作りはまるで脚本のようでもあり、パリにおける２人の出会いを始め、沢木氏のやりとりの妙、巧みさにうならされる。そして、藤圭子さんの人気をリアルタイムで知らなかった私にとっても、ここで明かされている生い立ちやその身に起きた様々な事実は十分興味深いものの、それよりなによりも、本当のことしか話したくないと言い切る彼女の純粋さに心を打たれた。

著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。