きことわ

著者 :
  • 新潮社
2.97
  • (59)
  • (198)
  • (420)
  • (208)
  • (70)
本棚登録 : 2412
感想 : 478
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (142ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103284628

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 150ページ弱の短い小説だったのであっという間に読了。2011年に芥川賞を受賞した作品で、若手の美人女流作家だから話題にものぼって記憶にも残っていたけれど、読んだ人の評価はけっこう手厳しかった記憶もあって…

    何かを伝えたい的な力強いエネルギーは感じない小説だった。
    文章はすごく綺麗で、平仮名が多めで、雰囲気としては童話みたいなものも感じて…文章自体は江國香織さん辺りが好きな人ならけっこう好きなんじゃないかな、と思った。
    でもはっきりとしたストーリーがないから、伝わってくるものは少なかった。白昼夢を見ているようなお話、というのが私の感じたこと。

    数年前まで芥川賞の審査員をやってた石原慎太郎氏が、最近の芥川賞受賞作は伝えたい力を感じない的なことを言って審査員を降りてたけれど、それも時代の流れで書き手も変わっていって、団塊の世代より上の人たちみたいなハングリー精神を今の若い人はさほど持ち合わせていないわけで、伝えたいことはない、っていうのもひとつのスタイルになりつつあるのかな、と思う。

  • 母と叔父と一緒に葉山の別荘を度々訪れていた貴子。最初はその別荘の管理人の母に連れられて、そして次第に自らの意志で夏のひとときを貴子と過ごすために永遠子は別荘に向かう。
    別荘でのやりとりも、海辺で過ごす時間も特に印象的ではなく、日常とはそういうものなのだとでもいうように。

    当時15歳の永遠子と8歳の貴子が葉山の別荘地で過ごした夏以来、
    25年ぶりに会い、当時を回想する。特別な事件があるわけでなく、鮮烈な思い出があるわけでもない。別荘を処分することになった貴子に立ち会うために会って、その当時の思い出を2人でなぞる。


    国語の教科書に載っていそうな文章だと思った。
    だとしたら、登場人物の心理は?
    これは何を暗喩している?
    マーク模試に馴らされた世代は、つい正解を探してしまう。
    悪い癖ですね。


    逗子、葉山。
    子どもの頃、GWや夏休みに幾度か訪れた。やたらと国道が渋滞していた。大人になってシーズンオフに訪れた時、海辺は人影もまばらで国道も混んでいないことに驚き、とても不思議な感じがしたことをふいに思い出した。

    久しぶりに会った友人と「あの時・・・。」と話をすり合わせながら話すような、同じものを見ていながら感じ方が違っていたのを確認するような、そんな気持ちをこの本は思い出させる。
    日頃好んで読む本は、登場人物に感情移入して泣いたり笑ったりできるものが多い。けれど、この話は読みながら自分の思い出と向き合っているような気がした。

  • 遠い昔の思い出は時とともに薄まり、ふとしたことから思い起こされたり修正されたりする。いろんな記憶と混じって幾十にも塗り替えられたり重なってしまったり。混同することもある。歳を重ね生きていくうちにそうなる。

    生きること、生きていくことはその繰り返しかな。記憶に残るならまだ良いほうで忘れることのほうが多いのが人間かしら。

    若い芥川賞作家の才能がまぶしい。

  • 難しかった。
    話自体はそんなに難しいわけじゃないから、読み進むけど、理解に時間がかかった。
    YAばっかり読んでいるせいかな?改行が少ない文章を読むのにも苦労した。
    たまには、こういう文学作品も読まなきゃダメね。

    かなりの読書家じゃないと高校生には難しいかな。

  • 夏が来るたびに訪れた別荘で幼い頃を共にすごした永遠子と貴子が、25年ぶりに別荘の解体を機会に再会する。時の移ろいの不思議な感覚や、記憶の作り出す幻影の切なさを独特の文章で書いている。芥川賞受賞作品というのは、私には読みにくいのかもしれない。短くて良いお話なのだけれどそのわり読むのに時間がかかってしまった。戻らない子供時代。いなくなった人。移りゆく景色。月さえも1年で3.8cm地球から遠のいているという。変わらないものなんてないけれど、だからこそ幼い頃を共に過ごした友の温もりが心を暖めるのだろう。

  • 何かをきっかけに、懐かしい人と会ったり連絡をとったり、その人の思い出を思い出したり、思い出があやふやだったり、ぶっちゃけそれだけの話。でも、そんな体験ってあるな~確かに。着眼点はいいと思います。でも読んで良かった、心に残ったという作品ではなかったです。

  • 内容的には貴子(きこ)と永遠子(とわこ)という2人の主人公をベースに、25年の時をかけて想い出の場所で再会するという話なのですが、現実の話なのか?夢の中の話なのか?どっちの話を今しているのか?分からなくなる展開で、今と昔話がスピーディーに入れ替わるところが面白いと思います。
    久しぶりにミステリー作品ではなく、文芸作品的なものを読みましたが、ちょっと眠くなりましたね。
    でも内容的には女性向けの話のような気がしました。
    オチも意外性はありませんでしたね。こういう作品に意外性を求めてはダメなのかもしれませんが・・・

  •  「流跡」とはずいぶん感じが違った。
     
     細かな描写でうまっている。知識も幅広い。それを難しいと思わせず、
    自然に書いている様がすごい。
     こういうのを才能というのだろうか。
     夢中になって読むような作品ではなく、「すごい」というのが第一感想。
     美しい小説。

  • 芥川賞受賞作品。描写が美しく、場面場面の温度が伝わってくる。淡々とした話で、個人的にはあまり好きじゃないジャンル。余韻を楽しむような作品。

  • 新潮にて。
    文章がとても綺麗。
    純文学にふさわしいのかもしれないが好みの観点から言うとあまり好きではなかった。

著者プロフィール

1984年、東京生れ。2009年、「流跡」でデビュー。2010年、同作でドゥマゴ文学賞を最年少受賞。2011年、「きことわ」で芥川賞を受賞。

「2022年 『細野晴臣 夢十夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朝吹真理子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×